25. 演じてみました!
翌朝、朝食を取る為、食堂へ向かう途中で後ろから呼び止められた。
「セイ君、おはよう。」
振りかえるといつもは会わないレプト先輩が立っていた。
「レプト先輩おはようございます。それにしても、酷く疲れてる様ですが大丈夫ですか?」
徹夜でもしたのだろうか、全体的に昨日の元気さが感じられない上に、目の下にクマまで出来ている。
「あぁ、大丈夫だ。なんて事は無い。」
一先ず食堂へ向おうとレプト先輩と並んで歩き出した途端、レプト先輩がつまづく。
俺は咄嗟に手を出し、先輩の体を支える。
「本当に大丈夫ですか? 足元がおぼつかない様ですが・・・。」
「あぁ、すまないな。」
支えている俺の手を取り、自分のたわわに実った膨らみに一瞬押し付ける。
あまりにも無駄の無い自然な動きに、警戒する事さえ出来なかったが、間違い無く今掌に柔らかさが伝わった。
今やっぱり触ったよな? 確かめる様に自分の手を眺める。
「どうした? セイ君? 手に何か付いているのか?」
「え? あっ、いや・・・。」
今触らせましたよね? なんて聞く事は出来ないがレプト先輩の顔を見ると心なしか、さっきより顔色が良くなっている様な気がする。
「「レプト様おはようございます。」」
「あぁ、おはよう。」
食堂へ向かう5コ―(5年コース)の女生徒に声を掛けられる。
「レプト先輩、様って呼ばれてるんですね、何て言うか凄いですね。」
様なんてなかなか呼ばれる物じゃないじゃない、素直に賛嘆の言葉を漏らした。
「そりゃ、この学校じゃ正統派高嶺の花ですからね~。」
後ろから両肩を掴まれ、頬が触れるか触れないかの距離にエル先輩が顔を出す。
エル先輩の柔らかさが背中に二つ押し当てられ、柑橘系の爽やかな香りが鼻孔をくすぐる。
「エル先輩、おはようございます。」
「うんうん、おはよおはよ。」
「エル先輩、それで、正統派高嶺の花って何なんですか?」
肩を掴んでいた手をおんぶの様に前に垂らし、体を俺に預け更に密着する。
「それはね~・・・。」
エル先輩の首根っこをレプト先輩が掴み引き剥がす。
「こら、エル、他の生徒の目もあるんだ、それ位にしておけ。そういう羨ま・・・んんっ、そういう事は分からない様にやるか人目の付かない所でやるんだ。」
あー、絶対さっきのおっぱい触らせたの絶対ワザとだなと確信した瞬間だった。
「レプト様は欲望が体中からにじみ出る癖に、そう言う対外的な所は堅いフリをしますよね~。まぁ、私みたいに冗談混じりじゃ無くて、レプト様はガチだからそうやって節制しないといけないんですけどね。」
引き剥がされたエル先輩が、ヤレヤレといったポーズをとる。
「ん? ガチ? 節制?」
一体何の事だと俺は小首を傾げ先輩たち眺める。
「あー、そうそう、何で正統派高嶺の花かって事だったね。3コ―(3年コース)に難攻不落のビッチがいるだろ? レプト様はあれの比較対象としてそう言われるようになったんだよ。品行方正で美人、スタイルも良い。5コ―(5年コース)の中では学生会長だしね~。最初にレプト様って言いだしたのは私なんだけどね。」
エル先輩がペロッと舌を出す。
「へ~、レプト先輩は凄い先輩なんですね。」
先輩で魔族にそういう人が要ると、何て言うか魔族側の俺としてもとても気分が良い。レプト先輩に微笑みかける。
どうした事か、微笑みかけたレプト先輩がプルプルと体を震わせ、急に俺の手を掴むと歩き出す。
「あ~、でも~、レプト様の本性は・・・、あらら、行っちゃった。きっとあの目のクマも、昨日夜通しセイ君を待ってたんだろうなぁ。私だってセイ君狙ってるんだけどな。」
手を握られ、グングン進むレプト先輩に半ば強引に引っ張られて、人気の少ない建物の影に連れて行かれる。
「せ、先輩、どうしたんですか?」
入学して食堂には毎日通っているが、こんな場所があるとは思わなかった。わざわざ探さなければこんな場所見つけられないだろうから、当然と言えば当然なんだが・・・。
「あっ、あぁ、すまない、やっぱり調子が悪くて、どうしてもセイ君に助けて貰いたくてな。」
レプト先輩が俯き、力無く言葉を発する。
急に手を引かれた事に気を取られていたが、良くなったと思っていた顔色が朝よりも一段と悪くなっている事に気付いた。
「えっ!? 大丈夫ですか? 顔色かなり悪いですよ、あまり使った事無いですけど回復魔法掛けましょうか? 魔力なら・・・。」
――――――ギュッ
レプト先輩に急に抱きつかれた。
「せ、先輩?」
「ちょっとだけ補給させてくれ。」
その言葉を聞き、何の補給か分からないがこれで少しでも先輩が良くなるのならと思い、抱きつく先輩の腰にそっと手を回す。
少しの間を置いて、レプト先輩の口から思いもよらない言葉が発せられた。
「はぁ~っ、生き返るぅ~、昨日おねぇちゃんずっと待ってたんだぞ・・・。」
「え? えっ? おねぇちゃん?」
ガバッと引き剥がされ、真剣な表情の先輩から力の籠った言葉が掛けられる。
「もう一回っ。」
「え?」
「もう一回言って。」
「え? え?」
察する能力は低くないと思っていたのだが、展開が急過ぎて何を言っていいのか分からず、アタフタしていると先輩が答えをくれた。
「レプトおねぇちゃんだっ!!」
「・・・レプトオネェチャン?」
俺は困惑しつつも声を絞り出す。
「もっと甘えるようにっ!」
「れ、レプトおねぇ・・・ちゃん・・・。」
「~~~~っ!?」
レプト先輩が口を一文字にして、顔を真っ赤にする。
俺より少し背の高いレプト先輩が屈み、頬を付けまた力強く抱きついて来る。
「【クンクン】やっぱり弟パワーしゅご~い、【スーハ―スーハ―】どんどん力が漲って来る。」
香水は付けないし、変な体臭は持ち合わせていないつもりだが、鼻を付け、匂いを全て吸い付くす様に息を吸い込む。
「せ、先輩? 俺に姉は・・・。」
匂いを嗅ぐ動作が一瞬止まり、先輩の抱き締める腕に少し力が籠る。
「・・・おねぇちゃん。」
「え?」
「今日から私がおねぇちゃんっ! だから、おねぇちゃんって呼んでっ!」
レプト先輩の意図は全く掴めないが、俺の姉になってくれると言ってるのは分かる。
「・・・おねぇちゃん。」
レプト先輩の頬ずりが止まらなくなってしまった。
「それからっ!」
ま、まだ何かあるんですか・・・。
「私と二人っきりの時は、僕って言う事っ! そして甘える事っ!」
えぇ・・・、アスタに言われ、俺って言う様に務めてやっと板についてきた所なのに、今更僕とか凄く恥ずかしいんだけど・・・しかも甘えるって・・・。
「セイ君がとーっても強いのは魔族の中でも有名だけど、困った事があったらレプトおねぇちゃんが絶対助けてあげるからね。」
一通り言い切ると、先輩の腕の力が弱まり少し離れる。
さっき見た顔色の悪く今にも倒れそうな先輩はどこへやら、寧ろキラキラと輝いている様に見えた。
「セイ君、ちょっとおねぇちゃん後ろ向くけど、お尻とか触っちゃ駄目だからねっ!」
あー、もう、何て言って良いか分からないが、きっとこれは触れって事なんだろうな・・・。
さっき、昨日ずっと待ってたって言ってたし・・・。
先輩のお尻に手を伸ばし、掌でそっとお尻に触れる・・・柔らかい。
先輩がクルッと振り返ると、左手を腰に、右手の人差し指を俺に向ける。
「こっ、こらぁ、セイ君っ。学校でおねぇちゃんにこんな事したらダメでしょっ!」
何て言うか、安い芝居をさせられている様で、いや、実際やってるんだが、三文芝居過ぎてこっちがかなり恥ずかしいんだけど・・・。
一方、普段凛としている先輩は、目の前でキャッキャとはしゃいでいるから、まぁいっかと思う。
何となく分かって来た。エル先輩が言ってたガチってこういう事か。
実際俺に姉は居ない、アスタの城でそれに当たりそうな魔族は居たが、本当の所姉と言う物がどういうものか分からない。
折角先輩が姉になると言っているんだ、ここは先輩の設定に付き合ってみるか。
まさかお題しか与えられないリリンの授業が、こんな所で役に立つとは思わなかった。
「セイ君っ、聞いてる?」
「おねぇちゃん・・・、僕、もっとレプトおねぇちゃんの知りたいな・・・。」
両手を腰に当て、怒ってるぞポーズを取っていた先輩が、雷にでも撃たれた様にビクッ震え、膝から崩れ落ち、地面に両手を突く。
「・・・お、思っていた以上の破壊力ね。生で言われるとこんなにも衝撃的なの・・・。」
フラフラと立ち上がる先輩に近付き、そっとスカートの中に手を忍び込ませ、手触りの良い布地の隙間からお尻を撫でる。
「おねぇちゃんスベスベだね。」
また先輩の体がビクッと脈打つ。
「こ、こらっ、セイ君調子のっちゃダメっ。」
先輩の大きな胸に顔を埋め、トドメの一言を発する。
「おねーちゃん、・・・大好きっ!」
キュゥゥっとお尻全体に力が入るのが分かった。
はぁはぁ、と先輩の息使いが荒くなっていく。
「おねぇちゃん大丈夫?」
「セイ君、セイ君、セイ君っ。」
俺が言い終わる前に、キスと言うより衝突と言った方が良い勢いで先輩の唇が俺の唇にぶつかる。
ガッツクというのはこういう事だと言わんばかりに、唇を吸い舌を絡めて来る。
トロンとした顔で、だらしなく魔族特有の長い舌を出す先輩がとても可愛い。
「おねぇちゃん、とっても可愛いよ。」
顔を紅潮させ、しがみ付く様に抱きつく先輩。体がピクピクと小刻みに震えている。
「セ、セイちゃん、・・・これ以上はおねぇちゃんも止まれなくなるから、・・・お家に帰ってからねっ! ねっ!」
お家って、ここ学院なんだけどな・・・。目をキラキラと輝かせる先輩が可愛らしかったので、俺も頷く。
「いっぱいしてね、レプトおねーちゃんっ。」
精一杯の笑顔で言葉を返すと、再びギュッと抱きしめられ、その場でクルクルと先輩が回り出す。
本当に幸せそうな顔だったので、少しの間止めなかった。




