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 24. 助けられました!

 大きな叫び声が数人の口からこちらに向け投げられ、流石に大勢からの声に振り返ると大きな火の塊がこちらに向かっている。


「全く、何のつもりか知らないが・・・。」


 ため息交じりに指を二本前に出し、直撃する寸前で火球を制止させる。

 チリチリと火球の熱が肌を焼こうと燃焼を続けるが、大した魔力も籠って無い事が指先から伝わって来る、子供の遊びかよ・・・。

 火の塊の周りに魔力による層を張り、酸素供給を遮断して窒息消化させる。

 層を張る方の魔力が低いと打ち破られるが、完全に魔力に差がある為、これが一番被害が少ない。


「それにっ。」


 ご丁寧に二陣目の魔法、風の刃が数発こちらに向かっている。その後ろに人影か・・・。

 下手に相殺する魔法を使うと、大なり小なり爆風が起こるだろう。それに視界を遮られ、風の刃を取り逃がして他に被害が出ても面白くない。

 後ろから来ている人影も何を仕掛けて来るか気になる。まぁ、体術でも引けを取るつもりはないんだけど。


 暴風や竜巻等、消すには厄介とされる部類に入る風魔法だが、意味が分かっていれば何の事は無い。

 例えば今俺を切り刻もうとしている風の刃だが、風を圧縮し刃たらしめている魔力を解いてやれば良いだけだ。


 先程と同じ様に指先を向け、風の刃に沿って腕を上下左右に動かし、魔力だけを飛ばして刃の形を解く。

 少し強めの風が俺を通り抜けていく。

 一般的な魔法なんて、どれだけ威力があろうと、魔力差があれば所詮この程度だ。


 さて、どこのどいつ様が、喧嘩を売って来たのか・・・。

 風の刃の後ろから来る人影に目を凝らす。


 5コ―(5年コース)の5年生レプトと、4年生エルが、普通の生徒では出せないであろう猛スピードで迫って来る。


「えっ? 何で?」


 2人の必死の形相に、困惑する。どうして魔族の2人が・・・。


 次の瞬間、目の前が暗くなり、その場に倒れ込む。

 攻撃の為押し倒されたと思った・・・が、ムギュ、プルンッ。2人の胸に挟まれている。


「「セイ君大丈夫?」」


「・・・先輩、どうして?」


 さっき挨拶を返した時に見た光景では演習場の一番奥に居た二人が、どうしてここに居るのか分からなかった。


「奥から二人でセイ君見てたら、急に攻撃魔法がセイ君に飛んで行ったのが見えたから、つい、走って来ちゃった。まさか、レプト様も来るとは思いませんでしたけど。」


 ニヤニヤとレプト先輩に視線を送りながら話しかけるエル先輩。


「う、うるさいっ、【クンクン】セイ君はアスタ様が目を掛けてらっしゃる、何かあればアスタ様が悲しむであろう。【スーハ―、スーハ―、】決して個人的な、くっ付きたいとか、匂いを嗅ぎたいとかは無いからなっ! しかし、セイ君、魔法を後ろから弾こうと思ったら、急に魔法が消えた様に見えたんだが?」


 普通に話しているだけなんだろうけど、どうして胸をこうも押し当てられるのか、それに、腰をくねらせてる様に感じるんだけど・・・レプト先輩に至っては、完全に顔をくっ付けて、匂いを嗅がれている様な気がしてならない。


「先輩方、とりあえず人前ですし、ここら辺で・・・。」


「あははっ、そうだね、これ以上セイ君の高魔力フェロモン嗅いでたら、うっかり運動着脱ぎたくなるからね。」


 チラチラとレプトを見ながら、エルが体を離す。


「そ、そうだな。いや、決して私は個人的好意ではないからなっ! あくまで同じ・・物としてだからな。見た所怪我は無さそうだし、大丈夫だなっ!」


 いつの間にジャージをはだけたのか分からなかったが、何事も無かったかの様に体操着の上着のチャックを閉めながら、レプト先輩が心配の言葉をかけてくれる。


「大丈夫です。わざわざありがとうございます。」


 深々と2人に向け頭を下げる。気付く奴は気付くだろうが、とりあえず、二人に助けられた体に見えるように振る舞う。


「セイ君、何かあったら4年の寮訪ねて来てね。私の名前出せばすぐに入れてくれると思うから。」


エル先輩は学年でも顔が広いのか、もしくは3コ―(3年コース)のアイツ・・・の様に実力者で通っている事を匂わせる言い方をする。


「セイ君、私の部屋は5年寮の最上階の階段から向かって一番右奥だからな。消灯時間以降にこっそり来たらダメだぞ! 本当にダメだからなっ!」


 レプト先輩は・・・、欲望に正直だなと、苦笑いする。


 レプト先輩と、エル先輩の証言を信じるとすれば、いや疑う余地は無いんだが、手前に居た3コ―(3年コース)の誰かが打って来たに違いないんだけど・・・。


 結構な注目を集めてしまっている、悠長にジロジロと3コ―生徒を見渡し犯人を探して長居しても、レプト先輩とエル先輩に迷惑が掛かるかもしれないと思い、早々にこの場を立ち去ろうと思った。

 寮の方向へ向き直る時、チラッと視界の端に映ったナキアの口元が、緩んでいる様に見えた。


 そう言えばエル先輩はレプト先輩の事、レプト様って呼んでたな。魔族の地位で言えばレプト先輩の方が上なんだろうか? そこら辺についてはアスタに聞いて来なかったもんなぁ・・・。


 寮に戻りミーナの元へクロを向かわせ、とりあえず先生からの言付けを伝達だけしておく。

 流石に体中が痛いらしく、食事もろくに取っていないとの事だった。

 もう少し肉を付けろと言った手前、放っておく訳にもいかず夕食を取りに食堂へ行った際、無理を言って食べ易そうな物を作って貰い届けておいた。


「しかし、誰が魔法を撃ったんだろうな・・・。」


 嫉妬で打ったならまぁ良いんだが、他の理由だと面倒臭い事になりそうだしな、レプト先輩とエル先輩の事があり、焦って帰って来たしまったが、もう少し離れた場所からでも様子を見ていれば良かったかな?


 部屋でコーヒーを啜りながら今日の事を思い返す。


「でも主っ、あの程度の魔力で攻撃って攻撃に入りますかねぇ。」


「主様ならば、直撃を喰らっていても、無傷だったと思いますよ。」


「あんな、しょうもない攻撃をご主人にするなんて、分を弁えて欲しいね。」


 3柱が俺のベットで、ゴロゴロしながら話しかけて来る。

 この前、(しもべ)がどうのこうの言ってたのは、一体何だったんだ・・・。


「そうだよな、何の意図があって攻撃したのかがハッキリしない。まぁ、何かあればまた仕掛けて来るとは思うけどな・・・。」


 っていうか、サク普通に出て来たけど、薄紫色の髪って、かなり派手だな・・・。


「どうしたの? ご主人、もしかして、早く私を抱きたいとか? 私は美味しいよぉ~、伊達に陰部の封印して無いからねっ。」


「サクっ、今日は、私とワカが先役だからねっ!」


 クロがすかさず割って入る。


「うん、良いよ良いよ、私は明日ゆっくりして貰うから、良いでしょ? ご主人。」


「え? あっ、あぁ。」


「珍しいわね、サクがこんなに簡単に引き下がるなんて、何か企んでるのか?」


 いぶかしげな表情で、ワカがサクを見る。


「今から変更は無しだよ? ヒント1、学校。ヒント2、明日は今日に無い物がある。ヒント3、体操着。」


「「・・・!? 明日から、運動の授業が・・・ある。」」


「ふっふ~ん、そういうこと、先に何度か肌を重ねてるクロとワカでも、運動で汗いっぱいかいたご主人の味や匂いは、知らないでしょ?」


 硬直するクロとワカに、したり顔で返事を返すサク。


 外見だけを見ていると、まさかこんな内容の話に、華を咲かせてるとか思わないよな・・・。

 明日は寮に帰ったら速攻でシャワー浴びよう・・・。


 まるで今までも出て来ていたかのように現れたので、疑問に思わなかったけど改めて考えると疑問に思う事があり、サクに尋ねてみる。


「サクは別に緊急で早めに封印を解いた訳じゃ無いよな? どうしてクロやワカとサイズが一緒なんだ?」


 サクがこちらを向いて小首を傾げる。


「ん? 別に元の姿も出来ますよ?」


 体が発光し、ググッと大きくなり、スレンダーな大人の女性になる。

 その場でクルッと一回りすると、ポーズを決めてみせる。

 スラッとした体形に整った顔立ち。眼鏡とか似合いそうだなと思った。


「ご主人がこの姿が良いって言うなら、これでも良いんだけど、ほら、ご主人の周りは綺麗な大人の女性多かったでしょ? だから、小さい方が需要があるかなって思って。それに、小さいサイズとしている・・・・方が、ご主人も征服感があって大事にして貰えるかと思って。」


 サクが小さい姿に戻り、ニッコリと微笑む。

 さっきのクロとワカのやり取りと言い、とても計算高いと言う事が分かった。


「サク、でもそれってバラしたらダメなんじゃ?」


 ワカが横からツッコミを入れるが、チッチッチと人差し指を横に振る。


「ワカ、あんたともあろうものが、分かって無いね。ここは学校だよ? ご主人と年の近い年上は居ても、大人の女はあのキョウコって奴くらいよ。ご主人の好みがこの先、大人の女性に移ったとして、あのキョウコと毎日ヤルのは難しい。今、大人の女に成れると見せておけば、わざわざキョウコに行かず、傍に居る私達3柱を沢山可愛がって貰えるって事よっ!」


「おぉー!」と、クロとワカから拍手が起こる。


 見てて飽きないが、そんな事を考えていたのかと思うと、計算高いを通り越して呆れるな。

 まぁ、微笑ましくも見えるから、全く嫌ではないんだけど。


「まぁ、主様の香りを明日嗅げないのは残念ですけど、今日を心待ちにしていたのも事実。もう、我慢も限界に近いですし、そろそろシャワーに・・・。」


 ワカがモジモジとすり寄って来る。


「主ぃ、昨日あんなに色々見せられて、今日一日我慢したんだよ? 私も早く嫌いに洗って欲しいよぉ。」


クロとワカに引っ張られシャワーに向い、約束通り二人を綺麗に洗ってあげた。


サクが覗いていたが、敢えて気付かないふりをしておく。

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