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 23. 考えました!

 キョウコ先生と分かれた後、モヤモヤが収まらない。


 悔しい、いや、歯がゆいのだろうか。

 色々な物に縛られて動いて欲しい機関が機能せず、本当に困っている人を救えない体制が・・・。


 いや、これも違う、そんなカッコイイものじゃ無い・・・。


 自分が気まぐれで助けてやりたいと思った者を助けれない、気に入らない者を潰したいと思っても、潰す手段も力も足りていない、そして今その孤児院に残っている孤児をどうするかも考えていない自分の浅はかさ、そう、ただ自分の我儘が通らない事に苛立ちを覚えているだけだ。


 小さいな・・・俺。

 ふと立ち止まり、改めてそんな風に思った。


[なら、力を付ければ良いじゃないですか、主っ!]


[[そうですよ、私達は主様の行く道なら、王道だろうが覇道だろうが、共に歩む覚悟は出来ております。]]


 ありがとうな、・・・二人とも。


 〈なかなか、面白そうなお話してるね、ご主人。〉


 ん? 新しい声が聞こえる。魔力が発せられる場所は・・・股間・・・。

 封印があるのは知っているが、股間から力というと、何か違う物を連想させる。


 〈初めましてだね、ご主人。あと、あまり股間は誇張しないでね、私も一応女ですし。〉


 あぁ、はじめまして、えーっと、股間からって事は拆雷さくいかずち だな。サクと呼んで良いか?


 〈サクですね、分かりました。ご主人から付けて頂けるのですから、その名を呼んでくれるのであれば、それが私のベストです。それで、どうやって世界征服するかの話ですけど・・・。〉


 いや、そんな話してないぞ?


 〈え? だって、王道とか覇道って。〉


[サクそれ、早とちりだよ? 力を付けて主の好きな様にやれば良いって、話してたんだよ?]


[[全く、サクはすぐに世界征服とか言いますね。主様のやりたい事について行くのが私達八雷神。主様あっての私達ですよ?]]


 〈なんだぁ、黄泉軍よもついくさ を率いてこの世界に闇をもたらす方なのかと思ったんですけど・・・。まぁいいです、八雷神全てを体に宿したご主人が、どんな道を歩むか楽しみにしてます。立ちはだかる者は私が全て引き裂いてあげるからね。〉


 それだけ言うと、サクはまた沈黙する。


 って言うか何がトリ―ガ―で開封したんだ? 今の流れだとサクの勘違いで開封した様にも思えるけど・・・。

 それにしても世界征服とか、物騒な娘が出てきたなぁ。


[アスタ様の事になると、学院ごと吹き飛ばすレベルでキレる主も、大概物騒だけどねっ。]


 ぐぅの音も出ないとはこの事だな・・・。


 モヤモヤした気分だったがサクの登場と、世界征服発言のインパクトが強過ぎて少し冷静になれた自分が居る。

 これからの事はこれから考えるとして、とりあえずミーナに送金の手筈は整った事を伝えておいてやらないとな。ミーナから入学金の件どうなりましたか? なんて言い難いだろうから、こっちから報告した方がいいだろう。


 教室に入り、ミーナを探すがまだ来ていない様だ。


 もうすぐ授業が始まる、この時間にまだ教室に来ていないのが少し心配だったので、ワカをミーナの元へ走らせてみると、青の契約でボロボロになった上に、朝方まで頑張った疲れからダウンしていた様だ。

 ワカがしもべとしての最低限の体力が足りないと、説教してきたと言っていたが、流石に人間が耐えれるギリギリの魔法を掛けたのだから、普通に考えれば、朝方まで頑張れたのが不思議な位だ。


 俺がミーナの体調を知っていると、色々と他の生徒が変に詮索してきそうなので、仕方なくこっそりと先生にミーナの体調不良を伝え、病欠にしてもらった。


 いつもの様に授業中は特にやる事が無い。

 ボンヤリとしてる内に俺はクロの言った力を付けるについて考えていた。

 実際力を付けるとはどういう事をすればいい、財力? 武力? 権力?


 まず財力、財力というにはおこがましいが、この学校でキョウコ先生名義で金は多少稼ぐ事が出来るだろう。特に欲しいものがあると言う事も無いが、今回の様に何に金が掛かるか分からないし、金で解決した方が良い事もあるだろうな。


 じゃあ、武力は? 俺個人のか? それとも組織としてか? 定義は良く分からないがこのクラスにも友達? っぽいのは居る。だが、それを組織としての力と考えて良いのか? 一緒に死線を越えられるか? 黄泉の軍勢と言うまだ正体が分からない物も入るのか? 


 権力は? 魔族の中では多少目を掛けて貰っているとはいえ、特に何の実績も無い俺みたいなガキが手に出来る権力なんてたかが知れてる。人間社会で言うと更に権力という言葉は薄れる。


 自問自答した結果、全てにおいて自分が欲している基準を遥かに下回っている事に気付いた。ハッキリ言ってどこから手を着けたものかと項垂れる。


「・・・セイっ・・・おいっ、セイっ!」


 席の後ろの男子から、ペンで背中を突かれる。

 ん? ふと、顔を上げるとキョウコ先生が、教科書を片手に立っている。


「セイく~ん? 授業中にボーっとしちゃってどうしたのかな~?」


「あっ、いえ。」


「じゃあ、先生の質問の答えを黒板に宜しくね。」


 後ろの男子生徒から声がする。


「セイっ、魔術公式を答えるんだよっ。」


 クラスメイトの助舟を受け、俺はスッと席を立つと、黒板へ向かうと腕組みする。

 黒板には空気中に元素と言う物があり、魔法への変換過程で魔力と反応するという初歩の魔術説明が書かれている。


「うーん、何の魔術公式が要るのか聞いて無かった・・・。」


 元素・・・魔術・・・魔力。腕を組み考える事一分程度、手をポンと叩きチョークを走らせる。


 空気中に含まれており、魔術に使用できる元素の種類とパーセンテージを書き出し、これを前提に行使出来る最大魔法と最小魔法、その公式、公式中の相違点、魔力使用量の変化を黒板いっぱいに書き出した。

 途中から教室がざわつき出すが、内容自体は間違っては無いはず、書くのに少し時間が掛かる為、私語が始まっているのだろうと思い、構わず最後まで書き切る。


 ふぅ、とチョークを置きパンッパンッと手を払う、振り返ると何故か全員ポカーンとしていた。

 先生に至っては、黒板を見ながら必死に俺のノートに書き留めている。


 この状況にどうしたものかと、キョウコ先生の方に視線を向ける。


「セイ君、その内容間違ってはないわよ。でもそれ、卒業後にギルドの研究室もしくは、王都の研究所が出す様なレポートよ? 私が聞いたのは初級魔法の基礎、火を出す為の公式よ。」


 それを聞き黒板を消そうとすると、先生が叫ぶ。


「ちょっと待ってー! まだ書き終わって無いっ。それ今年の教員レポートに入れ込むから!!」


 教師としてのプライドは無いのかと思ったが、黒板一面を消すのは結構な労力だ。消さなくて良いのならまぁ良いかと、黒板の隅に火を出す為の魔法を文字にした公式を13文字書き、先生が書き終えるのを待ち、席に戻る。


「セイ君、授業中はちゃんと聞いて下さいね。」


 上機嫌な先生がニコニコと注意をし、授業を進める。

 そういえば教本を見た時に絶望したのを思い出した。確かに言われてみれば現時点でさっきの様な事を書いたとしても意味が分からないだろうな。少しだけ考えが至らなかった様だと反省した。


 休み時間に「ズゲーな」と数人のクラスメイトに言われるが、それを疎ましく見る視線にも気付いていたので、あまり騒いで欲しく無かった。


 今日の授業が終わり、キョウコ先生が明日から屋外で実際に魔法を使う授業が始まるという連絡を告げる。連絡事項も伝え終わり、教室を出て職員室に向かおうとする先生を呼び止める。


「キョウコ先生、今日の公式の事ですけど、実際あんな公式知っていても実戦に使える訳じゃないですよ? まぁ、新しい魔法の研究だったり戦術を考えるのには多少役立つかも知れないですけど。どうしてあんなのが必要なんですか?」


「実戦で役に立たない事は分かってるわ、それにセイ君の言う様に待ち伏せの殲滅作戦とかなら、地の利を生かす為にまだ利用価値はあるかもね。」


「じゃあ、尚更どうして。」


 俺の言葉に被せる様にキョウコ先生が口を開く。


「そこが魔術学の難儀なところでね、実技と座学は全く別なのよ~。実技で出来る事、それを公式に当て嵌め、資料集めて証明文として書き起こす。これが大変なのよ。私、実戦向きなのよね・・・。」


 最後にいつのも台詞を入れて話を〆る。


「とりあえず助かったわ、またお願いね。S級解読師が見習い魔術師みたいな論文提出する訳にはいかないからっ。後、ミーナさんに明日から運動着が要る事を教えておいてね~。」


「えっ、あっ、女子の階には・・・。」


 女子の階にはそうそう簡単に行けないと伝えようと思ったが、魔術学と言う物に一瞬気を取られている間に、先生が行ってしまった。まぁ、クロかワカに行って貰うかと思い寮に帰る事にした。

 クラスの中には、魔術の研究会や、体力を上げる為運動をしている者もいるが、俺は特に興味を引かれなかった為、今の所授業が終わると用事が無ければ寮に直帰している。


 寮に戻る途中、明日から屋外の授業で使われるであろう演習場で3コー(3年コース)の3年生と、5コ―(5年コース)の4・5年生の合同魔術授業が行われていた。


「学年が上がると、こうやって合同でやるのか。流石に人数が多いな・・・。」


 こちらに気付いた3コ―(3年コース)のナキアを初めとした、5コ―(5年コース)の魔族の先輩も笑顔で手を振って来る。

 先輩男性陣の視線が痛かったが、無視するのも悪いので周りを確認し、自分に向けて手を振っている事を確かめると、控えめに挨拶を返しさっさと寮に戻ろうと思いそそくさとその場を離れる。


『危なーいっ!』


 演習場から大きな声がこちらに向け、投げ掛けられた。

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