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 22. 確認しました!

 ついさっきまで契約の儀によってボロボロだったとは思えない、この元気はどこから来てるんだ・・・。


「私ね、こんなに激しく求められたのも、愛されたのも初めて・・・これから、セイ君のモノ・・として、頑張るねっ。」


 満面の笑みを浮かべるミーナ。まさか、おねだりまでして来るとは思わなかった。


 シャワー室から出て、俺のベッドでゴロゴロとしているが、本当に所有物になった自覚はあるのだろうか・・・。


「はぁぁ~、幸せ~。お布団セイ君の匂いがする~。」


 ミーナの言葉を聞き、姿を消していたクロとワカが、ポンッと姿を表す。


「主っ、こいつ、ちょっと勘違いして無い?」


「主様っ、ちょっとお仕置きが必要かと思われます。」


 ふくれっ面の2柱が腰に手を当て怒ってるぞアピールをしている。


「クロ、ワカ、まぁそう言うな。今日の今日で所有物と言われても、自覚が芽生えるまでまだ時間がかかるだろう。」


 先刻契約の儀で声を封殺し、魔力を遮断する結界を張ったクロとワカの言葉に、おもむろにベッドから降り床に正座する。


「ごめんなさい、ちょっと浮かれてました・・・。」


 申し訳なさそうに俯き、膝の上の拳をグッと握る。


「そう、これだよ主っ、これがあるべき姿でしょ!」


「そうですよ、主様っ! 拾って貰っておいて、流石に私も辛抱できませんっ!」


 まぁ、クロとワカの言いたい事も分からないでもない。もし、アスタが俺の他に誰かを拾って来たとして、拾ってきた奴が横柄な態度を取って居たら・・・、確かに腹が立つと思う・・・。


「クロっ!、ワカっ!」


『はいっ!』


「こっちおいで。」


 テトテトと二人が近寄る。腰を屈め、二人を優しく抱きしめ、両腕に抱きかかえる。


「どうした2人供、ミーナが僕として主に対しての態度が気に入らなかったか? 二人と違ってミーナは俺と同じ位しか生きていないんだ。俺もお前たちに怒られる事あるだろ?」


 二人が首に抱き付き、頬を寄せる。


「俺は二人の事を大事にしてないか?」


 ブンブンと首を振る。


「俺は仲間を大事に出来てるか?」


 抱きつく腕に力が入り、頷く。


「俺の事好きか?」


 頬ずりするように頷く。


「じゃあ、新しい所有物も大事にしないとな?」


 少しの間があり、頷く。


「お風呂は無理だが、今日の夜、一緒にシャワー入るか?」


「クロも洗って欲しい・・・。」


「ワカも洗って欲しいです・・・。」


「よしよし、一緒にシャワー浴びて、一緒に寝ような。」


『はいっ!』


「じゃあ、新入りとも仲良く出来るよな?」


 二人を床に降ろす。


「わ、悪かったね、これからはちゃんと、主の為に生きる覚悟を決めてね。」


「私も、大人げなかったわ、でも覚えておいて、私達は髪の毛の一本まで主様の所有物、主様の為に生き、主様の為に死ぬ存在、そのご褒美に優しくして貰う。何でも簡単に与えられると思ってはダメよ。」


 ミーナが顔を上げ、二人を見つめ頭を下げる。


「ありがとうございます、不束者ですが、ご指導お願いします。」


 クロとワカが、小さな手で、ミーナの頭をポンポンと叩き、俺の中に戻る。


「ごめんねセイ君、ちょっと浮かれちゃってた。」


「二人に認めて貰えるように、頑張れよ。」


「うん! っていうかあの二人は誰なの?」


 そう言えば後で教えると言って、教えていなかった事に気付く。

 俺の魔力の事、封印の事、その封印が顕現してあの二人が出てきた事、一気に色々話しても混乱すると思い、一先ずその辺りを話した。普通に考えれば嘘の様な本当の話だが、頭は柔軟な様で「セイ様は凄いですね~」と言う位で、意外とすんなり受け入れてくれた。


 セイ君がセイ様になっていた事が少し気になったが、ミーナなりの気持ちの表れと取り、敢えて何も言わなかった。


 孤児院という憑き物が取れたミーナが、元気良く部屋に戻って行った。


「あーやべぇ、夜が明ける・・・今日の授業キツイだろうなぁ。」


 結局仮眠も取る事無く、俺はいつもより早めに人気の少ない食堂へ向かい朝食を取り、学校へ向かう。


 学校へ着くと職員室へ直行する。ミーナを所有物とすると決めた以上、主として出来る事は後回しにせず迅速に行っておく。カッコイイ風に言ってみたが、実際金銭に関して疎い為実際どうなるのか気になっていただけだ。


「キョウコ先生居ますか?」


「はいは~い! ここに居ますよ~って、セイ君? 早いわね。どうしたの?」


 足早に先生の元に歩み寄ると、机に手を突き顔を近付ける。


「先生っ! 折り入って相談がありますっ!」


 いつになく真剣な感じに、キョウコ先生が気圧される。


「う、うん、わかった、わかったから。」


 いつもの生徒指導室に入り、まず気になっていたクエスト報酬について聞くと、金額が金額なだけに少し時間が掛かったが、そろそろ入金されるとの事だった。


 次に、ここ学院の入学金をキョウコ先生の給料で払うとすると、大体何カ月分になるか聞いた。「ひぃ~ん」と給料がバレるのを嫌がっていたが、もう解読クエストしないぞと強気に出て聞き出した。実際俺のメイン収入源の一つになるであろう物なので、「じゃあ、しなくて良い。」と言われないか内心ヒヤヒヤだったが、涙目になりながら渋々教えて貰った話では、入学金はキョウコ先生の給料約2か月分程度らしい。


 最後に一番気になっていたクエスト報酬という物が、どの程度の金銭になるのか聞いてみた。


「大体で構わないから、キョウコ先生の月給換算で教えて貰えると助かるんですけど。」


「ここの給料悪くは無い筈だけど、なんでかしら、もう先生の心はボロボロよ・・・。」


 Aクラスのクエストは割と解読する量が少なかった為、先生の月給で3ヶ月分、Sクラスの解読が・・・3年分つまり、36ヶ月分の報酬が出たらしい。

 ただ、今は正規のギルドメンバーでは無い事から、色々ピンハネを喰らったらしく、ギルドに所属しておけばもっと貰えたらしい。


 しかし、功績としてはかなりのモノだったらしく、単純にピンハネするだけでは流石に可哀そうと言う話になり、その代わり教員としての箔が付く称号という形で授与し、学校での月の給料のアップがされた様だ。


「よくそんな内々の事情分かりましたね?」


「まぁ、これでも元Sクラスだからね~。」


「へぇ~、そうなんですか。」


 もっと驚いたり感動してくれると思っていたのか、キョウコ先生がモヤッとした表彰を浮かべる。

 そんな顔をされてもギルド自体にあまり興味が無い上に、Sクラスと言う物の凄さなんて知らないのだから仕方ない。


「つまり、39カ月分・・・俺の取り分は19カ月分か・・・。」


「それにしても急にどうしたの? 報酬には興味無さそうだったけど。」


 話すべきか黙っておくべきか迷ったが、とりあえずミーナを所有物として買った事は伏せ、事実として、孤児院と院長のやり方を告げた。


「ひどい話ね・・・。」


「その孤児院とか院長とか、ギルドに頼んで潰せないのか? 非人道的とかで。」


 キョウコ先生は少し考え、口を開く。


「結論から言うと難しいわね。確かにやり方は酷いけど、まず孤児院内で目に余る虐待を行っていない、衣食住、最低限の生活は確保されている。体を売ってと言っても合法、非合法に関わらず、風俗店に売り飛ばした訳じゃない。勉強しながら働く事もやろうと思えば出来ない訳じゃない。以上の事により、ギルドもしくは、行政は無暗に調査は出来ない。いや、動かないと思うわ。」


「なんだよそれっ! 証言があるのにダメなのかよ!」


 ギルドギルドと皆が入りたがっている物はこんなものなのかと、腹が立ちつい口調が強くなってしまう。


「確かに、ギルドは市民の味方であり、モンスター討伐以外にも色々とクエストを請け負うわ。でも、何でも出来るって言う訳じゃないの、色々と規律や、変わらない風習なんかもあるの・・・。」


 言葉尻が弱々しくなるのを聞いて、先生にも思う所があるのだと察し、それ以上その事については言わなかった。言った所で、ただの八当たりになる。


「とりあえず、報酬が入り次第その孤児院にミーナの入学金と利息分送って貰えないですか? そして、ミーナにこれ以上関わらないでくれと伝えてください。 それでこれ以上何か言って来るような事があれば・・・。」


「わかったわ、とりあえず送金はしますし、ミーナさんの事に関してはそれっぽく言っておきます。でも、セイ君の稼いだお金とは言え、それなりに大きなお金を動かすからアスタちゃんには報告するよ?」


 送金方法や金銭の受け取りについては、キョウコ先生に任せた方が間違いないだろう。俺が前に出て変にイチャモン付けられても面白くない。それにアスタへの報告はしておかなくてはならない事だろう・・・。

 そもそも、キョウコ先生の協力が無ければこの金も俺は手に入れる事が出来なかった訳だから、素直にこの提案には了承する。


「・・・分かりました。それなりに考えての行動です。向こう・・・側に不利益いや、・・・アスタの顔に泥を塗る様な事はしていないと思っていますから問題ありません。」


「全くどんな教育をしたらその年で、そんなに大人びた思考になるのか、アスタちゃんに聞いてみなくちゃね。」


「後、先生。目ぼしいクエストがあれば、どんどん回して下さい。今まで金銭に関して疎かった。興味のある物だけしかやらなかったツケだと思い知りました。報酬は折半で先生にも迷惑にならない様に、キッチリ仕上げるからお願いします。」


「セイ君・・・、確かにお金は大事よ? でも、お金は人を狂わせる事を覚えておいてね。本当に生活するだけなら、さほど大金は要らないのよ。」


 キョウコ先生が、俺が金に執着しない様に、溺れ無い様に言っているのは良く分かるが、どうしても必要な時に金が無いのは困る。改めて自分の甘さが分かったから、金銭に関してはしっかり稼げる時に稼いでおきたい。


「・・・分かってる。それでも、使い方ですよね?」


仕方ないというため息がキョウコ先生の口から洩れる。


「分かったわ、クエストに関しても協力します。確かに解読で助かる人や新たな発見があるのだけど、何だかとても悪い事してる様で心が痛いわ。」


「ありがとう・・・先生。」


 それだけ言うと、生徒指導室を後にした・・・。

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