11. 会いました!
僕は両手を門に突き、力の限り押す、押す、押す・・・が、ビクともしない。
アスタが、顔を伏せている・・・ヤバイ、どうしようガッカリさせてしまってる!?
クロ・・・力を貸してくれっ!。
[待ってました! 頑張るよ! 主っ!]
形振り構っていられない、お腹に力を入れ全身に魔力を流す。体の奥から力が湧きあがって来る。
「ぐっぅぅぅ!」
ミシッ・・・巨大な門が音を立てる。
ちょっとだが扉が動いた気がしたが、そこから先に進めない。
踏んっている足が、徐々に地面に埋まりだす。
「ここまで来て、出来ませんでしたとは、言えないんだよぉぉっ!」
「・・・セィ。」
アスタの声がした気がする、「もう良い」とか言われたくないっ! 嫌だっ、アスタの為に強くなるって決めたんだっ!
[幼き封印の者よ仕方が無い、少し早いが私も力を貸そう、ここまで育てて貰ったんだ、役に立とう。]
左手から力が流れて来る・・・。
封印か? 左って事は確か、若雷 か?
「若雷っ、力を貸してっ、この門を開けるんだっ!」
魔力の吸収箇所が減ったせいか、魔力の流れが良くなったせいか、チリチリとした感覚が左腕から全身に伝わる。奥歯を噛み締め更に力を込める。
ミシッ、ミシミシッ!・・・門が悲鳴を上げる。
「ちょっ、セイ、待って・・・。」
「こなくそぉぉぉっっ!!!」
バキッ! バキバキッ! と門の開く音とは思えない音を立て、巨大な門は開門された。
「はぁ、はぁ、・・・アスタ、っ開いたよ・・・はぁ、・・・。」
「まさか、本当に押し開けるとはな・・・。」
ほんの悪戯心で開けてみろと言い、必死に門を押すセイを見て、楽しんでいたアスタが、呆れ顔で言う。
「どういう・・・はぁ、はぁ、・・・事?」
「この門、魔法で開けるんだ? しかも、手前に開く門だ。押しても普通開かないぞ?」
ん? 魔法? ・・・引いて開ける?
目の前にある無理矢理逆方向に押し開けられ、両端に設置された装置の様な物から煙を上げている門を改めて見直す。嫌な予感がする・・・。いや、嫌な予感しかしない・・・。
「アスタ・・・非常に聞き難いんだけど・・・。」
腕を組みウンウンと頷くアスタ。
「セイ、お前の思っている通りだ。完全に壊したな! まぁ、知らなかったんだ、気にするなっ。」
笑顔のアスタが、親指をグッと立てる。
「いや、気にするよっ!」
「ほらっ、行くぞっ。」
先頭を歩きながら、チラリとこじ開けられた無残な扉に目をやるアスタ。
人間共との争いから建替えをしていないは、伊達じゃ無い。それだけ強固に造られている筈なんだが・・・、と思いつつ口元を緩ませる。
[主っ! やりましたねっ! まず、門を倒しましたよっ!]
[[クロ、お前が付いておりながら、なんだあの様は・・・、我々の顔に・・・いや、主様に恥を掻かせる気か?]]
俺の中で、クロと若雷が言い争っている。
自分以外の思考というか、声が頭に響くと結構やかましいな・・・。
クロたちは中に居る時、僕の思考をある程度察するという事を忘れていた為、若雷が口を開く。
[[主様、申し訳無い、少しはしゃぎ過ぎた。]]
「いや、ワカ良いんだ。助けてくれてありがとう。ある意味助かった・・・と思う。」
[[ワカですか・・・悪くありませんね。呼称ありがとうございます。まだ、完全に目覚めていない故、後日改めてご挨拶に伺います。]]
「あぁ、楽しみにしてるよ。」
何て言うか、クロと違い堅苦しい言葉遣いをする娘だなと思った。
[ワカばっかりズルイっ! クロも頑張ったのにっ!]
「そうだな、クロもありがとうな。」
「どうした? セイ? さっきからブツブツ言って。」
「アスタ、さっきの門の一件で封印がもう一柱、半分解けたみたいだよ。完全に解けたら挨拶に来るって。」
アスタの顔に花が咲く。
「セイ、本当か? それは、早く愛でてやらないとなっ!」
アスって結構子煩悩なんだなぁと、ウキウキするアスタを見る。いつの間にか僕も笑みが零れる。
城の中を歩いていて思った事だが、意外と言うか、思ったほど魔族が居ない。魔王城と言うからには、厳つい顔をした魔族が厳重に警備しているのかと思っていた。
城の最上階に着き、物々しいと言うか、禍々しい扉が眼前に聳える。
アスタに言われる前にこれだけは言っておかないと!
「もう、開けないよっ!」
「まぁ、そう言うな。だが、ここは私が開けよう。」
アスタが、コロコロと笑いながら、扉に手を添え、少し離れる。
程なくして、音を立て扉がひとりでに開く。
扉が開き、視界に飛び込んで来た光景に僕は言葉を失った。
赤い絨毯に豪華なシャンデリア、煌びやかな装飾品、何て言うか想像と違う。
眩しい位のキラキラとした部屋に目を丸くした。
「ようこそ、魔王城へ。」
部屋の奥から、男性の声が僕達に向けられた。
声の主は、堂々たる玉座・・・ではなく、隅の事務机に向い、一番奥に座っている銀髪の男性から発せられていた。
その事務机の手前にある長机に知っている顔も含め、数人が机に向かっている。
「ルシ・・・折角セイを連れて来たんだ、もう少し魔王らしく出来なかったのか?」
アスタがため息を吐く。
「仕方が無いだろっ! 魔族領も色々と大変なの知ってるだろ? お前だって、ここの勤務は嫌だって、自城勤務してるから、至急の案件はこっちで対処しないとならないんだぞ?」
「はいはい、分かった、分かった。私が悪かったよ。」
イメージと違う魔王とアスタのやり取りをポカンと聞いていると、長机に向い座っているレティがニコニコとこちらに手を振っているのに気付き、軽く会釈する。
「さて、来てそうそう城の門を破壊し、仕事を増やしてくれた訳だが・・・。」
ビクッとし体が硬直しそうになるが、無理矢理体を前に倒し、勇気を振り絞り声を出す。
「す、スミマセンでしたっ! 知らなかったとは言え、大変な事をしてしまいましたっ!」
少しの沈黙が流れた後、魔王が口を開く。
「なんだ、良い子じゃないか。」
「へ?」
刑罰とか言われるのかと思っていた為、魔王の意外な言葉に変な声が出る。
「アスタが入れ込んでいるから、もっと甘やかされてるのかと思ったぞ。自分の非を認め謝る、簡単なようで、なかなか難しいからな・・・。その気持ち忘れない様にな。扉の件は、出世払いにしておくよ。」
ニコニコと微笑んでいる魔王を見て、本当にこれが書物で読んだ魔王なのかと、困惑する。
魔王はアスタに向き直り、改めて口を開く。
「っていうかアスタ、迎撃魔法を掻い潜って窓から来ず、珍しく正門から来たと思ったら、門を壊して入って来るとか、もう少し普通に来れないのか?」
「いや~、私もまさか壊れるとは思ってもみなくてな、あの正門が。」
「まぁ、確かにな。私も警報が鳴って、何の警報か忘れていた位だからな。全く大した子だな。」
「そうだろ? そうだろ? 自慢のセイだからなっ!」
「分かった、分かった、その話は長くなるからいい。」
長机に座る面々も苦笑いしている。
頬を膨らませるアスタを横目に、魔王が話しを続ける。
「時にセイ君、魔族についてどう思う?」




