10. 向いました!
その日から、日中の戦闘訓練に、クロが参加するようになった。
戦闘が得意と言うだけあって、レティとの訓練から使えるようになった体の細胞に魔力を流して、身体能力を爆発的に上げる戦い方にも、難なくついて来る。
クロが言うには、まだ残りの7柱に魔力を供給してるから、ついて行けてるだけですと言ってくれるが、やっぱり強くなった様な気がしていただけに、どことなく悔しかった。
クロが僕の元へ顕現してから、座学では魔法の勉強をしているが、あまり実技での魔法の勉強をしなくなった。
アスタは魔法の根本は既に教えてるから、上位だろうが下位だろうが、詠唱を用いる様な普通の魔法なら、今は練習の必要すら無いと言う。
僕的には消化不良だが、アスタがそう言うのなら仕方ないと、知識を詰め込む為、書庫で本を読み漁り、クロと近接戦闘による肉体強化に精を出した。
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あっと言う間に、時間は過ぎ、とうとう明日は魔王と会う日だ。
アスタは構えなくて良いと言うが、やっぱり緊張する。
魔族側に付いているとはいえ、何が魔王の癇に障るか分からない。僕がどうこうされるだけなら良いけど、下手をすればアスタの評価が下がってしまうんじゃないだろうか? 最悪アスタが罰でも受けたらどうしよう・・・。
考えても仕方のない事だが、どうしても考えずには居られない・・・。
隣で寝息を立てる、クロの頬を突きながら睡魔に襲われるのを待っていた。
ギィィッ――――
部屋のドアが開く音がする。
「セイ、起きてるか?」
「うん、アスタ・・・どうしたの?」
「お前の事だから、色々と考え過ぎているのではないかと思ってな。」
「別に考え過ぎては、無いよ・・・。」
「なら良いが、・・・今日は一緒に寝ようか。」
そう言うと、アスタが、ベッドに潜り込んで来る。
僕とクロの間に入り、とても満足な表情を浮かべる。
「しかし、クロは寝る時、いつも裸だな。」
「最初は着てるんだけどね、途中で脱いじゃうんだ。寝相は良いんだけど、面白いでしょ?」
アスタに腕枕をする、アスタはこちらに背を向け、クロで遊んでいる。
アスタの背中に体を付け、胸元に手を伸ばす。
「こら、セイ、クロが寝て・・・んっ。」
クロを起こさない様に声を押し殺し、お互い快楽に身を委ねていった。
「セイ、ちょっと激しかったぞ。最後は声を出さない様にするのが大変だったんだからな。」
「ごめんね、アスタにいっぱい気持ち良くなって欲しくて。」
アスタがこちら向き僕の頭を撫でる。
「大丈夫だ、セイ、愛してるよ。」
アスタの言う愛してるは家族としてなのか、異性としてなのか分からないが、今は都合の良い方に取り目を閉じ眠りに落ちた。
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「じゃあ、行って来るから。」
アスタ城の前でクロに向け手を振ると、笑顔で振り返すクロ。
しかし、歩き出すとぴったりとついて来る・・・。
振り返るとクロがニコニコと微笑む。
「ん~、クロ? どうして後ろに居るのかな?」
小首を傾げ、キョトンとするクロ。
「クロはお留守番なんだよ?」
「・・・、えぇ~!?」
なんだよ、その今聞きましたみたいなリアクション、何度も言ったじゃないか・・・。
僕達のやり取りを見かねたアスタが、横から口を挟む。
「クロ、今回は我慢してくれないか? 連れて行きたいのはやまやまだが、一応名前だけとは言え、魔王城だからな、招待されてない者を連れて行けないんだ。」
アスタに無理と言われ、最後の希望を断たれ俯くクロ。
何かを思いついた様で、急に顔を上げ口を開く。
「・・・!? 姿が見えなければ良いんですよね? 主っ!」
そう言うと、クロの体が光る球状になり、スゥ~っと僕のお腹に入って行く。
「なんだ、クロ、こんな事も出来るのか!?」
アスタが目を輝やかせる。
本当に子供がお腹に入った様な気分で、テンションが上がっているアスタとは反対に、とても複雑な気分になった。
[主ぃ、そんな複雑な気分にならないで下さいよぉ、でも、これなら一緒に行っても大丈夫じゃないですか?]
「心の声聞えてるのかよ!? どうしよっか? アスタ。」
「ん? 何がだ?」
クロの質問に対して全く反応を示さないアスタ。もしかして、僕の中に入ったら外に、声は聞こえないのか・・・。
[そうですね、外部に向けて発声する器官がないですから。]
「アスタ、クロがこの状態なら、一緒に行って良いかって言ってるんだけど。」
「なんだ、中に入ってしまうと、クロの声が聞こえるのはセイだけか・・・。つまらないな・・・。まぁ、その状態なら、気付く奴もほとんど居ないだろうからな、仕方ない許可しよう。」
自分だけクロの声が聞こえない事が残念なのだろう、ガックリと肩を落とし、大きく羽を広げ僕を抱える。
「ねぇ、アスタ、前も聞いたけど、魔王さんってどんな感じなの?」
「ん~、そうだな、無駄に羽が多くて、無駄に顔の良い、ちょ~っとだけ、強い奴だ。」
何て言うか、全く想像が付かない。アスタの話だけを聞くと、随分無駄の塊に聞えるんだけど・・・。
想像が付かない為、緊張をほぐすには値しなかった。
[主っ! しっかりして下さい! いざとなればぶっ飛ばせば良いんですよっ!]
「無茶言うなよ・・・。」
急に僕が独り言を発した事にアスタが反応する。
「ん? クロが何か言ってるのか?」
「あっ、あぁうん、緊張しなくてもいざとなったら、ぶっ飛ばせば良いとか言ってる・・・。」
「ぷっ、あはははっ、面白いなそれ、セイが、今の調子で成長すれば、数年後にはいけるかもなっ!」
「アスタまで何言ってるんだよ、まったく・・・。」
「まぁ、これが、冗談でも無いんだよなぁ・・・」
最後にボソッと呟いたアスタの言葉は、風に消え、誰の耳にも届く事は無かった。
少しの間クロの言葉を伝えつつ、雑談に花を咲かせた。
「ほら、見えて来たぞ!」
山の山頂付近に巨大な城があるのが、視界に入る。
「何て言うか・・・、禍々しいね。」
「まぁ、人間と争っていた時から、建替えて無いからな、見た目は重要だろ?」
畏怖の対象としての建築物か・・・。
それとも、他に害が及ばない様に、的として目立つようにした建築物なのか・・・。
「よーし、そろそろ降りるぞ。」
「ん? アスタ、もうちょっと距離あるよ?」
「あぁ、それも戦争中の名残だ。投石とか、しょうも無い攻撃を打ち落とす魔法が張られてるからな、躱せない事も無いけど、もしセイに当たったら嫌だからな。」
森のど真ん中に降り立つ。
キョロキョロと辺りを見回すと、アスタが手を振り払う様に、左右に振る。
次の瞬間ミシミシと音を立て木が不自然に避け、城までの道が開ける。
「凄い・・・。」
「流石にここは結界を張ってるからな、これをやらずに迷ってしまうと、結界自体を破壊しないとほぼ抜ける事が出来ないからな、さっ、行こう。」
魔王城へ向けアスタに続き、走り出す。
それなりに、スピードを上げ走ったお蔭で、苦になる様な時間は掛からず、見上げる程の巨大な門に辿り着く。
「セイ、開けてくれるか?」
「うーん、えっと、これを?」
「そうだ、これを開けれない者は、中に入る資格がない。」
ニコニコしながらアスタが驚愕の言葉を発する。




