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銀の弾丸  作者:
8/22

ゼッタイゼツメーだなぁ!

章と申します。


銀の弾丸、第8話です。

本作を読んで下さっている方、ありがとうございます。


処女作『銀の弾丸』

楽しんで頂けたら幸いです。

「マジで⁉︎ 神頼みかー、ゼッタイゼツメーだなぁ! 」


 吸血鬼に追われながら神に祈るのか。これはいよいよ現実味がなくなって来た。


「しかし、もう知られてしまったわけですから、今更悩んでも何も変わりません。それより早く本上くんを見つけて帰らないと。」


 本上か……アイツの様に皆あだ名を使っていれば相手に命を握られる事もなかったのだろうか。

 とはいえ、やはりあのネームセンスはどうかと思うが。


「まあ、番号の様なものは見つからなかったし、一旦金庫は諦めて別の部屋を探索するか。」


 そう切り出すと、3人に何を言い出すんだと言わんばかりの表情で凝視された。

 あれ、俺何かおかしな事を言っただろうか。


 そんな声に出さない俺の疑問に答えたのは幹貫だった。


「おい、深海、ドア! ド・ア‼︎ 何の為に開けたんだよ⁉︎ 」


 ついさっきまでドアだったのであろう木片を指差して叫ぶ。

 もはや見る影もないその(元)ドアに俺は心の中でそっと手を合わせる。………………合掌。

 している場合じゃない。そうだった。俺とした事がすっかり忘れていたが、このドアの先の部屋を調べなければ。そうと決まればすぐに行こう。


 俺は自分の中で話を終わらせた。そして幹貫の発言の一切を無視し、木片をまたぐために普段よりも少し大きく足を踏み出した。後ろから堪える様な笑い声が微かに聞こえた様な気がしたが、幻聴という事にしておこう。



 ただでさえ電気が付かず薄暗い館の中だが、この隠し部屋は窓がないため月の光すら入らず、目が慣れるのに相当な時間を要した。辛うじて周囲を確認できる様になるまで待った後、決して広くはないその部屋の中を効率を考えながら4人で探っていく。


 しかし、何とも生活感のない殺風景な部屋だ。それとも隠し部屋というのはこういうものなのだろうか。生憎俺の家には隠し部屋なんてものは存在しない為、何とも言えないのだけど。


 この部屋にあるのは机、椅子、本棚、そして仮設ベッド。何故隠し部屋にする必要があったのか分からない程に普通過ぎる部屋だった。そんな部屋の中の机を皆川が、本棚を神山と幹貫が調べていた。


 俺?俺は壁を調べていた。流石に無いとは思うが、ここから更に別の部屋もしくは外へと繋がったドアがある可能性もゼロとはいえない。しかしそんな期待を嘲笑うかの様に、とうとう何も無いまま部屋を一周し終えそうというときに……見つけた。

 この一ヶ所だけ明らかに壁の材質が違っている。屈めば人1人くらい簡単に通れそうな大きさだ。どこかにドアノブがないか慎重に周囲を調べていく。外に出られるかもしれないという期待から、体温はどんどん上昇していくのが分かった。


 結果から言おう。残念ながらドアではなかった。頭から一気に冷水を浴びせられた気分だ。いや、そんな経験はした事ないが。

 ここの材質が違っているのは、どうやら1度壊れた箇所を修理するのに違う材質を用いた、それだけの理由の様だ。落胆する気分を無理矢理押し上げながら、ふと疑問に思った点を掘り下げる。狭い部屋、物も少ない。こんな部屋で何をすればこんなに大きな穴が開くというのか。まあ、特別な理由など無いのかもしれない。単に老朽化した可能性だって十分にある。


 ……木で補強されているのならまた幹貫に壊させたが、生憎と使われているのはコンクリート。流石に無理だな。なら、この穴にはもう用はない。


 どこか引っかかる気持ちの悪い感覚を、頭を振る事でどうにか切り替える。


 と、不意に聞こえた声。


「こ、これは! 」


 ……神山だな。何か見つかったのか?


「んー? どーしたんだよ優、なんかあったかー? 」

「これです。どうやら日記のようですよ。」


 そう言って神山は皆川に日記を手渡した。皆川はそれを受け取って、ページをパラパラと捲っていく。


「……子供の字ぃやな。この部屋は隠し部屋っちゅうより秘密基地感覚やったんやろか。」


 どれどれ。俺も皆川の手に渡ったそれを見る。皆川は俺より背が高い。それに加えて壁の下の方に空いた穴を見る為しゃがんでいた俺は、顔を上げたとき、その本を見上げる様な体制になる。

 だから見えた。裏表紙の隅に記された文字の羅列が。


Yu K.


「ユウ……。」

「ん、何や深海。急に…………ユウやって⁉︎ 」


 弾かれた様な素早さで皆川が日記帳を裏返した。みるみるうちにその目が見開かれ、手から本が滑り落ちる。


「ということは、この日記帳はKさんの息子さんのものなのでしょうか。」

「ほーん……てことは、Kって苗字なんだなー。」


 神山達の会話を聞きつつ、本を拾って日記を拝見させて貰う。


「…………なあ皆川。お前、Kの日記、Kの息子が吸血鬼にされたって書いてあったの、いつか覚えていたりするか? 」

「おん、よー覚えとるで。12月4日やろ? それがどうしたん。」


 俺はユウの日記の初日部分を指差して見せた。

 その日記を探る様に見た皆川の目がある一点で停止した。


「ユウの日記が始まったんは、その、翌日になっとるなあ……。」


 全員の表情に驚愕が見て取れる。俺は一つ咳払いをした後、静かに口を開いた。


「ここは、隠し部屋でも秘密基地でもない。恐らくは………………幽閉場所だ。」

第8話閲覧ありがとうございます。

次話もよろしくお願い致します。



作品は作者に似るとよく言われますが、

だとすれば深海の記憶力の悪さは自分の所為でしょうね。

最近物忘れが酷くて困っています。もう自分も歳でしょうか。

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