願うしかあらへんわ。
章と申します。
銀の弾丸、第7話です。
本作を読んで下さっている方、ありがとうございます。
処女作『銀の弾丸』
楽しんで頂けたら幸いです。
俺の促しに対し、神山は1度ゆっくりと瞬き口を開いた。
「こちらには膨大な量の本や資料が並べられていました。ですが、今の僕たちに役立ちそうなものはこれくらいでしょうか。」
そう言って神山は、持っていた2冊の本を少し前に掲げ、その後その内の1冊を差し出した。その本の表紙には、『吸血鬼の弱点について』と印刷されていた。本に年季が入っている様で、その文字はインクが少し掠れていた。また一部に赤黒い染みができている所為でより一層文字が見難い。だが、内容を理解する分には問題なさそうだ。
「な、ドンピシャやろ? 」
「ヤベー、ここ本めっちゃあんのに‼︎ 透真が見つけたのか⁉︎ 」
「いや、これ見つけたんはおれやなくて神山や。ホンマ流石としか言いようがあらへんなあ。」
全くだ。視野が普通の奴よりも広いのだろうか? しかし、物がすぐに見つけられるというのは羨ましい限りだな。何か無くした時なんか便利そうだ。
「それで、この本の内容ですが。……ちょっと待って下さい。えっと、何ページでしたっけ。」
「ははっ、頼むで神山ー。ま、ええわ。ここはおれが説明するわ。
えっとな、吸血鬼の弱点ってゆうても個体によって効果とかはバラバラらしいねん。例えば、弱点として有名なんが日光とか十字架やな。けど、本の内容を信じるんやったら、日光に弱いんはレベルの低い奴だけ。強い吸血鬼なんかは平気らしいんや。あと、十字架。たまーにやけど、弱るどころか好むやつもおるそうやねん。」
「その、個体のレベルは何で決まるんだ? 」
「主に吸血鬼として存在した時間やな。人間が吸血鬼になったケースとかやと、人間の時の身体能力とか、自分を吸血鬼にした吸血鬼の強さも関わってくるみたいやけど。」
な、成る程。数々の新事実を前に戸惑いながらも耳を傾ける。
皆川の話をまとめると大体こんな感じか。
吸血鬼弱点
・十字架(怯ませるのみ、好む者もいる為注意)
・日光(主に弱い個体に有効)
・聖水(力のある個体に対しては不可)
・銀(銃弾やナイフなど)
・鏡(姿が映らない)
・流水(渡ることが出来ない)
・炎(灰と化す)
吸血鬼の弱点については大まかにだが理解した。だが、それよりも……
「み、皆川くん、もしかしてここにある本の内容を覚えたんですか⁉︎ 」
「全部やあらへんけどな。読んだモンだけや。まあ、記憶力はちょっと人より長けてる自信あんねん。」
自信があるだって? それで済む話じゃないだろう。この本1冊だけでもざっと3桁を超える頁があるのに、それをこの短時間で覚えたなんて。自信どころかもはや誇っていいだろう。
「そんでな、もう1冊見て欲しいんがこれなんやけどな? 」
そう言いながら神山が抱えていたもう1冊の本をヒョイと取り上げ、とある頁を開き俺に差し出した。
「『吸血鬼の成す害について』か。」
俺は暫くの間、黙ってその頁に目を落とした。
『吸血鬼は相手の血や精気を吸い取ることでその相手を死に至らしめる。
しかし、殺戮の方法はそれだけではないとされている。対象と視線を合わせる、対象の名を呼ぶ等でも可能であるようだ。だが、視線や言霊によって対象を殺すのには、出来る個体と出来ない個体があるようである。見分ける方法は現在不明だ。
また、その呪いが即効か遅効かは、吸血鬼及び対象によって個体差がある。』
ざっと読み終えて目を閉じ、反芻する。
物事を覚えるのが俺は苦手だ。それでもなるべく記憶に残るように、一つ一つ整理をしながら繰り返す。
「なあ、皆川。もしここに記されている事が本当だとしたら、吸血鬼の監視下にあるこの館で散々名前を呼び合っていた俺たちを、奴らは簡単に殺せてしまうんじゃないのか。」
その問いに対し、皆川は自嘲気味に小さく笑って言った。
「そら、あれやな。敵さんの中にそのタイプの吸血鬼がおらん事を願うしかあらへんわ。」
第7話閲覧ありがとうございます。
次話もよろしくお願い致します。
章
吸血鬼について調べていたら、パソコンの検索履歴が吸血鬼関連だらけになってしまいました。少々気味が悪いですね。