貴君らの人生に御座います。
章と申します。
銀の弾丸、第3話です。
本作を読んで下さっている方、ありがとうございます。
処女作『銀の弾丸』
楽しんで頂けたら幸いです。
洋館の中は埃っぽく、あちこちに蜘蛛の巣が張っている。おまけに元からなのかこの雷雨の所為か、電気が通っていない。見えないわけではないが、視界良好とも言い難い。
全く、とんだ災難だ。
「うっわ、何だよここ! きったねー。」
外から屋敷を見た時点で予想する事は出来なかったのか?
「ホント最悪っすね。やっぱ別の所探したいっす。」
そう言って本上がドアノブに手をかける。本当、自由人だよな。
「ホンマに……本上の行動は普通の人はようやらん事ばっかやなあ。」
「全くだ。そもそもここに入るよう促したのは本上だっただろう。なのに真っ先に出ようとするなんて。」
「せやったな。けどまあ、普通やあらへんっちゅうんがおれが本上とつるんどる理由でもあるんやけどな。」
「…………初耳だ。そうだったのか。」
「せや。だって見とっておもろいやん? 」
そういうものだろうか。まあ、飽きないという意味では面白いのかもしれないが、本上のそれは少し……いや、かなり傍迷惑だ。
「そんな事より、本上、ドア開けるだけなんにえらい時間掛かってんなあ。」
ん、それもそうだな。俺もそれは少し気になっていた為、皆川の言葉でドアへと視線を送る。そして、目に飛び込んで来た光景によって俺の頭上に疑問符が踊った。
「なあ、あいつら何やってん? 」
全く持って同感だ。
俺たちが見たのは、本上と神山が共同してドアを開ける様子。トラブルでもあったのか? 取り敢えず高みの見物、という訳にもいかないようなので、皆川と共に2人の元へ向かう。
「神山、何かあったのか? 」
「あ、深海くん。それが、何故だか分からないのですが、ドアが開かなくなってしまって。壊れたという訳ではなさそうなんですけど。」
「なんやそれ、冗談きついわあ。ここから出られへんとかホンマに勘弁やで。」
「冗談だったら本当に良かったですよ。ですが本上くんと2人がかりでもびくともしないんです。」
なんだ、それは。
外側から鍵をかけられたのだろうか。全くそんな気配は感じなかったが。それに、いくら鍵かかけられたとしても2人がかりでびくともしないなんて事があるだろうか。
「だったら幹貫に蹴らせればいい。アイツの馬鹿力はお前も知っているだろう。普段は何でもかんでも壊すだけの迷惑なヤツだ。こういう非常事態位役に立って貰わないと割に合わない。幹貫はドア位なら金具ごと簡単に吹っ飛ばすぞ。」
……昔、アイツに自室のドアを蹴破られた俺が言うんだ。間違いない。
「それが、さっきやってみたんですけど、逆に幹貫くんの方が負傷を……。」
「そーそー‼︎ マジで痛かったんだぜ? もーあのドア意味分かんねー。」
お前の馬鹿力も十分意味が分からないが。
にしてもあの幹貫がドアを蹴ったくらいで負傷だと? そんなにあのドアが丈夫だというのか。いかにも崩れかけですと言わんばかりの館のドアだぞ?
これは、アレだな。
「今日は地球最後の日だったか?」
隕石が落ちるってやつ。なんて…………
「いいえ、本日で終了するのは地球などではなく、貴君らの人生に御座います。」
第3話閲覧ありがとうございます。
次話もよろしくお願い致します。
章
やっと展開が変わって来ました。
森探検隊の話にならずに済みそうです。