⓪ an opportunity
扉はピンク色のペンキを反射しててらてらと輝いていた。
「は、入りますか」
「……うん」
部屋もまた照明でピンク色に染まっていた。
おそるおそる足を踏み入れると、まず視界に飛び込んできたのは巨大な丸型のベッド。
枕側にはいくつかのスイッチがあり、あれを押すと照明が切り替わったり、ベッドが回転したりするのだろう。
やばい、生唾が止まらない。
「え、ええと。じゃあ」
「さ、さっさと終わらせましょっ!」
ぎこちない雰囲気を変えるように、少女は青年より先に部屋の奥へと進んで、ベッドの上に飛び込んでいった。
しかし仰向けに体勢を変えた瞬間。
「わっ、な、何よこの天井!」
少女はそう叫んで、枕で顔を覆う。
見上げると、ベッドの上で恥じらうように身をよじる自分の姿が天井に映っていた。
「か、鏡張りなんて一体世の中の男女たちはどうしてこんなところであんなこと―――――もーっ、炎の魔法で地球ごと浄化してやろうかしらっ!」
「おいおい、お前が魔女になってどうするよ……」
「だって……」
「やっぱりお前の家でやるか?」
青年は先ほど一度引っ込めた提案をもう一度伝えた。
しかしその少女はかぶりを振って拒絶する。
「そ、それは無理ッ! だってさっき旅から帰ってきたばかりだから散らかってるし……」
「そんなの気にするかよ」
「私が気にするのッ!」
「……じゃあこの部屋でいいのか?」
念を押すように訊ねる。
すると少女は顔を隠したまま、こくりと頷いた。
「……分かった。じゃあ始めようか」
こんな所にいつまでもいたら、さすがの俺も理性が吹っ飛びそうだ。
妹のイイも帰りを待ってることだし。
……さっさと終わらせないとな。
脱いだ上着をソファに投げ、ベッドに片足を上げる。
ギッ、とベッドの中のバネが軋む音。
「ちょ、ちょっと待って」
「……何だよ」
「その前にシャ、シャワーを」
「問題ない」
「で、でもっ! 私、ホント一時間前に帰ってきたばかりだから汗とか」
青年から逃げるようにしてベッドから離れる少女。
しかし、浴室のドアに手が掛かる前に、青年の手が少女の肩を掴んで引き戻した。
「きゃっ! な、何すんのよ。こ、この変態ッ!」
「うるせえ。余計な時間を掛けたくないんだ。じっとしてろ」
「何よっ! もしかして、あんた私に変なことする気じゃないでしょーねっ!」
「やるかよ、んなこと!」
口論はすぐにもみ合いへと発展していった。
やがてベッドに倒れ込み、少女の上に青年が覆いかぶさる形になる。
「もう、何すんのよ……え?」
「あ……」
鼻先が触れあう距離でお互いの視線が交差する中。
少女は自分の右の胸部が圧迫されていることに気付いた。
自分の真上にいる青年の手によって。
「わ、悪いっ!」
慌てて手をのける青年。
しかし少女は無反応のまま、自分の胸を手で覆い。
そして一言――――
「――――滅殺」