魔法少女、爆誕 そして…
ザ・説明会
「…なにこれ?」
なにか変な声が頭の中に流れた、と真理が知覚したとき、すでに変身は完了していた。
首の中ほどまでだった髪は、腰に届くほどに長く。
背中には白く、短い一対の翼が生え。
そして、かなり平坦な胸はそのままであった。
「な、なに?この姿」
真理は生まれてこのかた、たとえかなりの巨漢に絡まれたとしても物怖じなどしたことがない性格であり魔法少女となることを簡単に受け入れたのも、その性格からくるものであった。
しかし、今のこの状況はたとえ真理であっても困惑せずにはいられなかった。
姿が変わるのはまだいい、変身もののお約束であるし、自分もそれぐらいは想定していた、むしろどんな姿になるのか楽しみだったくらいだ。
だがーこの、体の内側…まるで魂から直接力が湧き上がってくるようなこの感覚はなんだ?
「あ、あたし…どうなったの?」
自分の内から湧き上がってくる力に、思わず恐怖してしまいながらもルュストになんとかそう尋ねる。
「魔法少女となったのよ、しかも…類を見ないぐらいに強力な、ね」
ーその後、なんとか落ち着いた真理に、ルュストが「まずいことになったわ」と話しかける。
「まずい、ことにー?」
「そう、あなたの持っていた魔力の量、それが少しこちらの想定をオーバーしていたの」
「え、じゃあもしかして『力が…勝手に…』みたいな感じに暴走しちゃうの!?あたし」
「ううん、それを補うためのシステムがあって、『パンドラシステム』というのだけど…これがなかなかに厄介なものでね、たとえどんな人間であっても魔法少女になることができるかわりに、ある代償を払わなくちゃいけないの」
代償、という言葉に真理は反応する。
「まさか、大切な人を失くしてしまうとかー」
「ううん、そうじゃない、私たちは無差別にいろんな世界の人を魔法少女にしていっているんだけど、未知の敵の侵略に悩まされている世界もあれば、そうじゃない世界、そう、あなたが今住んでいる世界のように宇宙的に見れば平和な世界もある、でも、このシステムはそんな世界に無理やり『敵』を生み出してしまうものなの」
「あ、だから…」
「そう、開けたら絶望の出てくる、でも開けた者の力に応じて出てくるモノの強さが違うパンドラの箱、そして箱の中にあるのは魔法少女という名の希望、それが『パンドラシステム』の実態よ、でも、普通は『開けた』魔法少女がすぐ倒せる、例えるならチュートリアル級のやつらばかりなのだけど…」
「けど?」
「あなたの力を教えてあげる、あなたは『パンドラシステム』の全てを吸い取り、魔法少女となった規格外よ、もはやあなたは魔法少女としては無敵、いくらでも強くなれる、まさにシステムを超えた存在…でも、その分敵も規格外ばかりとなっているわ、最低でも、この世界の日本を一晩で"消滅"させることができるようなやつらが666体、存在しているわ、もっとも、一度に出てくることはないから安心していいわよ」
「…そうなったのって、もしかしてあたしのせい?」
「…ええ、でもみんな消えてしまうのが嫌なら戦いなさい、災厄と、あなたたちの天敵と、やつらの名前は『マッド・モンスター』あなたたちの心の奥底で形作られた、絶望の化身達よ」
ちなみに男でも魔法少女になります。絶対です。