7話 眠り姫の目覚め
普段通り短いです。
急展開? かもしれません
微睡なのか、私は余りの寝言地の良さに思わず枕にすり寄りました。
凄く柔らかくて気持ち良いです。塔での私の布団と枕はこんなに寝心地が良い物だったでしょうか。
元の世界の布団と枕よりふかふかです。なんて至福な時なんでしょう。
そしてゆっくりと瞼を開き、目に移った見慣れない天井、と言うよりも天蓋に首を傾げました。
「……どこ?」
私は一体何をしていたんでしたっけ。目覚めたばかりの頭はなかなか働きません。
きょろきょろと辺りを見渡すも、全く見覚えのない豪奢な部屋です。少なくとも、ここが私を幽閉していた塔の中ではないのはわかりますが。
あの王子たちが私をこんな綺麗な部屋に入れるとは思えません。まるで物語のお姫様が使っていそうな内装を、私なんかに用意をするわけがないのですから。
ベッドもごろごろ転がったり、あと2、3人寝たりすることができそうなほど広いです。これをキングベッドと呼ぶのでしょうか。
身に着けているパジャマ、というよりベビードールもするりとして触り心地が良く、すぐにシルクだと分かります。レースとフリルもふんだんに使われていて、庶民じゃとてもじゃないですが、消耗品と言っても良いこの一品を着る機会なんてないに等しいでしょう。
うん、やっぱりあの王子たちのはずがありませんね。
それにしても、何か大事なことを忘れているような……。
すると突然、バンっと音を立てて重そうな扉が開きました。
何事かと視線を向けると、そこには綺麗なプラチナブロンドの髪を振り乱し、スカイブルーの瞳を涙一杯で潤ませ、鼻水をすすっている残念な美形中年がいました。
ん? どこかで見たことがある気がします。そんなことがあるはずないのに、どこか懐かしさすら感じます。
「コロネ!」
不意に美形中年が私の名を叫ぶと、感極まったように頬を赤く染めて駆け出したかと思うと私に抱きしめてきました。
「いやぁあああぁあああ‼」
突然の事態に思わず悲鳴を上げて殴ってしまいました。いや、誰だって見も知らない中年に抱き付かれたらそうなるでしょう!
「ふごっ!」
私の拳を鳩尾に決められたその人は、お腹を押さえてその場に蹲ったと思うと肩を震わせました。
もしかしてやり過ぎたのだろうかと思って声を掛けようとし時、顔を上げたその人の顔を見た私は思わず身を引いてしまいました。
何故ならその人は頬を恍惚と赤く染めながら笑っていたのです。
はっきり言って気持ち悪いです。
「あぁ、コロネ! ずびっ、君はお母さんに似てパワフル且つ美人だね! お母さんに瓜二つだ!こんなに大きくなって! あぁなんて素晴らしいのだろう‼」
興奮が収まらないのかずっと瞳を輝かせ涙をこぼしていますが、鼻水を垂らしていて美形が台無しです。
私の名前を知っているようですし、お母さんがどうのこうの言っています。一体この人は何者なのでしょうか。
警戒しながら見つめてしまいます。
「貴方は、誰なんですか……?」
するとその人は私の言葉を聞くと優しく笑んだ後口を開きます。
「私はシスベリアス王国ローゼンブルク公爵領領主、オズワルト・ファス・ローゼンブルク。コロネのパパだよ」
突然の言葉に思わずフリーズしてしまいました。この人は今、なんて言ったんでしょうか。
パパ……? パパってことは父親? いやいやいや、元の世界にお父さんいたよ!
混乱していると、私を落ち着かせるような静かな、そして懐かしい声が聞こえました。
「父上、突然そんなことを言っては心寧が混乱しちゃうでしょ」
いるわけない存在が目に映り、私は目を見開きました。パパと名乗ったローゼンブルクさん以上の混乱を招いているのを知ってか知らずか、その人は私を視界に入れて一段と笑みを深めました。
まさかの新キャラ登場でした。
果たして彼らは何者なのか、それはお楽しみという事で。想像できているひとはわかるかもしれませんが。
ここまでお読みいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします。