閑話1 とある日常の異変
初閑話になります。
今回は別視点かつ短いです。
その日、俺は胸騒ぎを感じていた。
違和感自体は小さいながらも前からあったが、今日は特に強い。
「それより心寧を起こさないと」
俺の妹、心寧とてつもなく可愛い。7歳も歳が離れている所為か、小さい頃は親を取られて嫉妬するどころか妹の誕生が嬉しくて常に可愛がっていた。
どこかが可愛いかというと、まずはあのぷるぷるでマシュマロみたいに柔らかい真っ白肌だな!
怒ったり恥ずかしがったりするとき、頬が薔薇色に染まるのだが、とてつもなく可愛い。食べちゃいたいくらいだ。
次にあのストロベリーブロンドの髪! 母の血を強く継いでいる心寧の髪色と髪質は、凄くふわふわで艶々している上にサラサラとしていて、シャンプーのCMに出ているような女優なんかよりもきれいだ。
ターコイズグリーンの瞳も宝石よりも輝いていてとても綺麗だ。どの宝石も心寧の瞳にかなう事はないだろ。
そして性格もまた可愛くていい子なんだ! いつも甘えて、「お兄ちゃん、ポテチのコンソメ買ってきてくださいー」とか「この乙ゲー買ってほしいです」とか「お兄ちゃーん……ただ呼んだだけです」とか言ってくるんだぞ!
最高に、いや、最強に可愛いだろう!
可愛いと連呼すると、「お兄ちゃんうるさいです」とか「引きます」とか言われるけどきっと照れ隠しだと思うんだ。
心寧について語るといつも、「桃矢、お前気は確かか」とか「このシスコンが」とか同僚に言われるけど知ったことではない。
心寧が可愛いのが悪い。
心寧について浸りながら心寧の部屋にいく。
ノックするも返事はないが、いつもの事だ。
「心寧、朝だぞー。起きろー。それともお兄ちゃんが目覚めのキッスをしないと目がさ、め、ぶっ」
目が覚めないのかと言い切る前に、心寧が投げた枕が顔面に当たった。
「お兄ちゃん、気持ち悪いです」
キモいよりも直接的で胸にとげが刺さるけど気にしない! これも心寧の愛だからね!
「今日の朝ごはんは心寧の好きなシナモンロールとベーコンスクランブルエッグだぞー」
「シナモンロール!」
大好物のシナモンロールの名前が出た瞬間起き上がり階段を下りて居間に向かっていった。
「またそこも可愛いなぁ、心寧は」
可愛すぎて笑みが零れてしまう。
この可愛い妹を、俺はありとあらゆることから守らなくてはならない。否、絶対に守るんだ。亡き母と己に誓った。決して心寧が傷ついたり悲しんだりしないように。
けれど得も言われぬ不安を感じた。先の居間に向かう心寧の後ろ姿に。どこか遠くに行ってしまうような感覚に。
その考えに首を振って霧散させる。
「気のせい、だよな」
しかし、それが気のせいでなく、そして誓いを守ることができなかったことを、その日俺は仕事から帰ってすぐ、知ることになる。
主人公の兄、桃矢のシスコンぶりとウザさが発揮されたお話でした。
お読みいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
少し多忙なため7話ですが、予定を変更して明日更新したいと思います。(20150831)