13話 神話と影
今回少し長いです。
今回は主人公は登場しません
一つの光が、虚無の世界に現れた。
その光は創生と創造、そして破壊の力を持つ、ケレアーティオ神であった。
ケレアーティオ神は己の力を集めて世界を構築し、現在の五大伸である天空の神カイルーマ、大地の神テーラ、海の神セーラ、命の女神ビータ、幸福の女神ベアティトゥドを創造した。
天空の神カイルーマは天高く空を創り、世界を覆った。大地の神テーラは何処までも続く大地を創り、海の神セーラは競う様に海を広めて大地を削った。命の女神ビータは神々に似せて人などのありとあらゆる生命を創り、幸福の女神ベアティトゥドはそれを祝福し、神々に似せられた人には知恵と魔力が授けられた。
神々は力を合わせて、火の精霊、水の精霊、土の精霊、木の精霊、風の精霊を誕生させた。これによって火が生まれ、水が生まれ、大地が豊かになり植物が芽生え、風が生まれた。そして人は魔力を行使することができるようになり、様々な魔術が生まれた。
いつしか人は争い戦争が起き、多くの血が流れた。その血によって闇の魔神アルファルドが誕生した。
闇の魔神アルファルドは闇の眷属や魔人、闇の精霊を使役し多くの命奪い、世界が滅ぼうとしていた。
神々は世界を救うため、闇の眷属や魔人、闇の精霊に対する神のみが使えた浄化の力を使える光の精霊を誕生させ、闇の魔神と戦う事の出来る人間にその力を借り行使する能力を授けたのであった。
人々は争いをやめ、敵対していたものは手を取り合い、協力して闇の魔神アルファルドを封印したのである。
しかし、闇の魔神が残した闇の残痕の爪痕は大きく、世界を穢した。それを癒すため、ケレアーティオ神は神子を創った。神子の力によって世界は浄化され、豊かになり、人々は平穏を手に入れたのである。
<ケレアーティオ神教聖書-第一章世界の誕生と神子より>
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ヤンはかれこれ十数年ウィンドゥノット王国の騎士団に所属しているが、三十路間近だというのにいまだに下っ端兵士であった。
ある夜、ヤンは下町の酒場で職場に対する愚痴を友人に零しながら浴びるように酒を飲み明かしたばかりで、暗がりの裏道を通るその足はどこか頼りなく、ふらふらとしていた。
「うぃ、なんだってよー、あんな塔なんか見張ってなきゃなんねーんだぁ? おれぁーよう、もっとでっけー仕事がしたんだよぉ」
呂律が回らないヤンの不機嫌な大きな独り言は辺りに響いた。幸い辺りには人が居ないため、誰も彼の大きな声をとがめるものはいない。
「それによー幽閉してるってやつがいねーんだよぉ、いつのまにかよー。どーすればいいんだぁー? おれはぁ。バレたら首飛ぶじゃねーか!」
酔っぱらっている所為か、その表情には不安は一切浮かんでいなかった。
「でもなんとかなるかー? 王子たち誰も報告になんて見る気も聞く気もんーようだし、ここ四年ずっと様子も見にこねーしよー、隠せばなんとなるぁー? というかなれよー」
そう喋りながら歩いていると、ふと目の前にマントを着て、深くフードをかぶった男がいることにヤンは気付いた。
ヤンは気にする風にもなくその男の横を通り過ぎようとした時だった。
ヤンは身動きが取れなくなっていた。
「なっ、なんだぁ? 体が動かねぇ!」
焦るヤンをよそにその男は剣先をヤンの首に突き付けながら静かに言葉を紡いだ。
「その幽閉をされていたという者は何者だ」
「しっ、知らねぇっ」
その言葉に、男は更に剣先は僅かに動かされ、ヤンの首筋は血がにじむ。ヤンの表情は死への恐怖の色が現れる。
「ほっ、本当に知らないんだ! ただ、塔から出すなとしか言われていない! 幽閉している奴の顔も見たことがないんだ! ……そうだ、声は女だった! 年若い女だ! それ以外は本当にしらないんだ!」
生きるためにヤンは必死に知りえることは無我夢中で話した。
これ以上聞いても無駄だと悟った男は剣を仕舞うと闇に紛れて姿を消した。
未だ背中が粟立つヤンは力尽きたようにその場に座り込んだ。
すっかり酔いがさめたヤンは、ただ茫然とするしかなかった。
「いったい、なんだったんだ?」
闇その者のようなあの男はただ恐ろしく、死さえ覚悟させられた。もう二度と会うことが無いようにと願うばかりだった。
その所為かヤンの頭の中には、塔に幽閉されていた人物が一体に何者なのか思考することなど到底浮かぶことはなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
お久しぶりです。実は昨日幼稚園の運動会で、とっても疲れました。子ども達かわいかったですけどね。バルーンやダンスをする姿に萌えました。
それにしても、物語はなんかあやしくなってきました。
でも結構この正体と対面するのはずっと先になると思われます。予定を変更し、新たなキャラは次かその次になりそうです。
ブックマークしてくださった方ありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。