8話 あなたはだぁれ?
前回よりもかなり短いです。
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「心寧、一段と美しく可憐になったね。流石俺の妹だ。前の柔らかくてほわほわした心寧も大好きだけど、儚げで月の女神の様に麗しい心寧も大好きだよ。髪も伸びたね、凄く似合ってるよ」
何食わぬ顔で何時ものようにとろけるように甘い声でその人は私の手を握って見つめてきます。
通常運転ですね、わかります。いや、いつもよりも酷いかもしれません。
「気持ち悪いです……お兄ちゃん」
私が半目で見ると、お兄ちゃんは「なに?!」と言って目を剥いた。
「心寧! 具合が悪いのか? 気付かないでごめんよ。そうだよな、今までの悪辣な生活環境に加えて移転の魔法を使用したからな。体に負荷が掛かっていてもおかしくない。直ぐ横になって……」
「いや、違いますからね。変な解釈しないでください。しばきますよ」
私の手を握っている手を片方の手でつねるも、お兄ちゃんの笑みは崩れません。
「相変わらず心寧はアクティブだねぇ。そんな所も素敵だよ」
何故でしょう、負けた気がするのは。そんな事よりも聞くべき言葉があります!
私がそれを口にしようとした時でした。ノックの音がしたかと思うと、とても優しげな声が聞こえました。
「失礼しますよ」
その姿を見て、はっとしました。
「シーザーさん!」
「先ほどぶりだね、ローゼンブルク嬢」
何か忘れていたと思ってはいましたが思い出しました。私はシーザーさんとあの塔から脱出したのでしたっけ。
でも……あれ?
「ローゼンブルク嬢……?」
「そうだよ。貴女はローゼンブルク公爵の御息女、ローゼンブルク公爵令嬢でしょう?」
「え……?」
それってつまりあれですよね、ここに居る美形中年ことローゼンブルクさんの娘ってことですよね……?
「私ローゼンブルクさんの娘じゃないですよ?」
すぐそばで「パパって呼んで欲しいなぁ」という声が聞こえましたが、「今は黙っていてください、ローゼンブルク公爵」とシーザーさんに注意されています。
そしてお兄ちゃんは苦笑して言いました。
「心寧も俺も間違いなくここに居るローゼンブルク公爵の子どもだよ」
「でも私たちがた所には父さんいますよ!」
「そうだけど、そうじゃないんだ。彼、順次さんは俺たちの本当の父親じゃない」
私は信じられず、顔を青ざめさせて目を見開き、「嘘……」と呟くことしか出ませんでした。
そんな私に、お兄ちゃんは「心寧が気になる所からゆっくり整理しながら説明しようか」と、落ち着かせるような優しい声で言いました。
はい、まさかの兄桃矢の登場でした。
そしてシーザーとパパンが空気だ……。二重の意味でのサブタイトルでした。
ここまでお読みいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします。