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作者: 冬稀


其処にはいつも何も無かった。

嬉しい時も悲しい時も、そこは無のままだった。

怖くて、酷く怖くて...僕は其処から目を逸らしてはいつも背を向ける。


反対側には沢山あった。

愛する人、愛する家族、大切なペット、大事な友達、無くしたくない宝物...

数える事の出来ない事それらで埋め尽くされていた。

だけど僕はまたそれらから目を逸らす。

大事そうに抱えてもいつか消えてしまうと知る。

背に感じる闇の様に、いつか全てが染まっていく。


愛犬がこの世を去った時、彼は感じた。

手の中にあると思っていた光は自分を照らしすものでしかないのだと。

それは1つ、また1つと徐々に力を無くしていく。

自分を照らし、証明していくものは時間と共に消えてゆく。


そうしていつか光を無くし何も見えなくなるのだと思った。

するとまた背の闇が強く己を主張し、怖くなった。

蹲っては目を閉じ、唇を噛み締める。


消えてゆくのを見るのが怖くて何も見えないように自ら闇に片足を突っ込んだのだとは露ほども知らず。


どこからか声が聞こえた。

耳を塞いでいなかったと今更ながらに思い出せば鮮明に聞こえてくる。


声は問いかける。


"僕の光はどこにいるの?"


ふと気付いて顔を上げれば、明るいその場所で誰かが僕を呼んでいた。


"お兄ちゃん...どこにいったの"


手を伸ばせば一際大きな光が優しく僕を包み込んだ。

そして呟く。

暖かい光だと。


僕も誰かを照らすひとつの光だと、彼は気が付いた。

そうして全ての光がなくなったの時、光るのは自分自身だと気づく。

暗い暗い闇の中、光は強く見えるだろう。


嬉しい時は笑顔の欠片を

悲しい時は涙の粒を

闇の中に置いておこう。

いつか光を必要とする誰かを包んであげられるように。


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