第2話
夕闇の色を映す空の下、王城へと入った二人に、周囲は驚愕と動揺に満ちた視線を送った。
騎士グレイヴ、剣士カイ。
共にこの国の双璧をなしていた二人。
しかし今の彼らの姿は、とらわれの囚人とその連行者を思わせていた。
グレイヴは入城の際、引綱のように見えていたであろう、カイに巻き付けていた鎖は外した。それでも彼の枷は両手を繋いで残されている。
それは対外的に責務の遂行を伝えるためのものであり、加えてカイは、その斜め後ろに立つグレイヴに、その肩を抱えられる形で歩かされていた。
いや、そのように見えていた。
実際、グレイヴの掌に込められた思いは制圧ではない。
しかしその思いは誰にも伝わることなく、『英雄』カイの『堕ちた』姿は周囲を震撼させるばかりだった。
やがて彼らは城内の中心となる建造物へと進入する。
待ち構えるように立っていたのは、青いサーコートも鮮やかな、宰相の私兵たちだった。
「ご苦労でした。騎士グレイヴ」
口火を切ったのは宰相の私兵の一人だった。
「しかし、足枷が見当たりませんが」
私兵はわざとらしく首をかしげる。
カイの肩に乗る、グレイヴの右手に力が入る。
同時に、腰袋に入る枷から鎖の音が響いてくる。
『反逆者』の捕縛、そのために与えられたもう一つの枷。
しかしグレイヴは否定するように、片手で強く袋を押さえる。
「カイは抵抗しなかった。拘束は手枷だけで十分だ」
「騎士グレイヴ。それはあなたとカイが懇意だったからこそ言えることです。今のカイは繋がれていない狼も同じ。もし今この狼が暴れ出したら、誰がその四肢を、押さえられるというのですか」
反論は通用しない。
グレイヴは言葉に詰まる。
「足枷をつけさせなさい。騎士グレイヴ。これは宰相閣下のご命令です」
グレイヴはカイの肩から手を離した。
そして、あまりにも愚鈍な動きで、腰の袋へと手を伸ばす。
両手に乗る鉄の重みが質量以上に重く感じる。
肩越しに振り返ったカイがわずかに頷く。
もはや、目を合わすこともできなかった。
グレイヴはカイの足元にしゃがみ、彼の使い込まれた軍靴の上から枷を嵌める。
一つ、また一つ。
鉄の輪が閉じる重々しい音にも、カイは身じろぎ一つしない。
やがて、立ち上がるグレイヴに合わせるように、カイの肩は両側から、私兵によって掴まれていた。
彼の背中が大きく揺れ、足の鎖が軋みをあげる。
言葉すら届けられない感情の中、引き立てられていくカイの後ろ姿を、グレイヴはただ、見送ることしかできなかった。




