第10話
グレイヴが繋がれたのは、かつてカイが繋がれた場所と同じ、地下牢の最奥に位置する独房だった。
騎士の剣や鎧は剥奪され、鎧下の厚手の服には縄がきつく巻き付いている。
彼は壁へと背中を預けると、ゆっくりと息を吐き出していた。
わずかに動かした足に伴うように、鎖が小さな声を立てた。
足首に纏うそれは、処刑台へと上るカイが最後に佩かされていたのと同じ足枷。
視線の先、拘束用の短い鎖ではなく長い鎖を伴う鉄輪は、グレイヴへと、迫る未来を予言していた。
そして夜半過ぎ、彼の予見を肯定するように、宰相の私兵が彼の元を訪れていた。
格子の嵌った扉越しに、夜の風より冷たい言葉が独房の中を貫いていく。
「騎士グレイヴ。貴公への判決だ。
貴公は『反逆者カイ』と結託し、王国の秩序を乱そうとした反逆罪により、処刑される」
その声は事務的で、感情の欠片もない。
「――そうか」
乾いた喉でグレイヴは呟く。
「裁判すら、与えられることはないのだな」
カイのときには、形式ばかりとはいえ、一応の裁判は行われた。
しかし、先程伝えられた『判決』は一方的で、そこにあるのはただ、公正も秩序も、何もかもが踏みにじられた轍だった。
「貴公の罪状は、すでにカイの認諾により確定している。よって裁判は不要。
証拠は明白であり、貴様の行動は、閣下の収集された証により、もはや否定のしようはない」
全てが整然と、迅速に進められていた。
彼が集めた証拠は、全て宰相ではなく、自身の罪へと塗り替えられ、自分もまたこの手で生を奪った盟友と、同じ場所へと送られるのだ。
「執行は明朝だ。最期の夜を楽しむがいい」
私兵の告げる言葉を最後に、固い足音が立ち去っていく。
独房には再び、暗い静寂が立ちこめていた。
グレイヴは息を強く吐いた。
「――カイ」
夜の闇へと溶けるように、一度だけ彼の声が漏れた。
その友は、命が消える最期の淵まで、何も語らないまま、穏やかな笑みを浮かべて逝った。
――俺は、お前の望む正義になれたか?
その声には、亡き友への謝罪、理解、そして最期の報告が込められていた。




