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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第2章 閉ざされた研究所と崩壊し始める日常

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2話 日常に潜む小さな違和感の数々

 食堂で起きている、不思議な出来事の数々。それは場所を変え、他の場所でも同じように起きていて。その中でも多く不思議なことが起きているのが、自分の部屋だと思う。


 最初はあれ? と思った程度だったんだけど、洗濯した覚えのない洗濯物が干されていたり、逆に洗濯したことは覚えているのに、いつ取り込んだのか覚えていなかったり。あとは、いつの間にか、洗濯物が綺麗に畳まれて、テーブルの上に置いてあるとか。


 他にも、洗った覚えのないコップが、やっぱり綺麗に洗われて並べられている。いつでも飲めるようにと、ミニキッチンに置きっぱなしの頭痛薬。それが、時々飲んでいるにも関わらず、減っているように見えない。なんて、そういった、不思議な体験を、たくさんしているの。


 まあ、薬に関しては、瓶には元々、半分以上錠剤が入っていて。時々と言っても、まだ3日くらいしか飲んでいないからね。ただ単に、減っているように見えなかっただけかもしれないけど……。


 そして他の不思議な出来事は、研究室でも起きている。


 この前、私たちの班の研究員の1人が、どうしてそうなったのか分からないけれど、かなりの勢いで腕を切ってしまって。私と他の研究員の2人で、その怪我をした研究員を、急いで医務室へ連れて行ってね。


 それで研究室に戻ると、班のみんなは、飛び散った血や、壊れた器具を片付けていたから、私たちも片付けをすることにして。私は、まだ誰も手を付けていない場所を、綺麗にしようと思い、掃除道具を取りに行ったんだ。


 だけど戻ってくると、血はすっかり拭かれ、割れた道具も片付けられていて。それで驚いて、近くにいた研究員に片付けたか聞いたら、自分じゃない、誰かがやったんだろう。それよりこっちを手伝ってくれ、と言われてしまって……。


 掃除道具を取りに、現場を離れたのはほんの数十秒。それなのに、どうやったらそんな短い間に片付けられるの? 何? 私の見間違いだった? と考えさせられる出来事が起こったし。


 別の日には、大量の書類が、デスクの上に山積みにされていたのに、気づいたら片付けられていた。機械や器具が、全部綺麗に拭かれて元の場所に戻されていた。といった、不思議な出来事が、何度かあったんだ。


 あと、食堂や部屋、研究関係以外では、これは1度だけだけど、大浴場でも不思議なことがあってね。


 大浴場の掃除は、基本、人が少ない時間帯、朝方にすることになっていて。掃除の日は少し早起きして大浴場へ向かい、班の中で1番最初に大浴場に着いた人が、中に人がいないかを確認するんだ。


 それで、不思議なことがあった日は、私が最初に大浴場へ行ったから、中を確かめようと、私は浴室に入ったんだけど……。


 あ、ちなみに大浴場を使う時は、誰が入っているか分かるように、ドアに札をかけるという決まりがあって。その時は『空き』の札がかかっていたから、普通に中に入ったよ。男性が入っている時はもちろん、思いっきり入ったりしないからね?


 そうして、浴室に入った私はというと、浴室のおかしな光景に、少しの間驚いて止まってしまい、そのあと、慌てることになったんだ。


 どんな様子だったかというと。かなりの人数が使っていて、しかも朝も誰かが入ったかもしれないのに。

 床も壁も洗い場も、タライも風呂椅子も、まったく使っていないみたいに、カラカラに乾いていて。湯船も、お湯が1滴も残らずに抜かれ、やっぱりカラカラに乾いていたんだよ。


 この状況に驚いて、しばらく呆然としていた私。でも、少しすると、他のことを少しだけだけど、考えられる余裕が出てきて。それで、私が考えたことといえば……。


 もしかしたら私が、集合時間を間違えて聞いてしまい、班のみんなが、もう掃除を終わらせて、帰っちゃったのかも!? ということで。それで、驚きはどこへやら、今度は慌てることになってね。


 だけどその時、外から声がしたから急いで外に出てみれば、班のみんながちょうど集まってきたところで。それですぐに中の様子を伝えたら、まだ誰も掃除はしていないと言われてしまい。


 そこで慌てて、また浴室を確認しに行くと。今度は、少し前まで使われていたんじゃないかと思うくらい、ほとんどの物が濡れたままで。湯船にも、たっぷりとお湯が張られていたんだ。


 何が起こったのか分からず、また驚いていたら。何を寝ぼけてるんだよ、いつも通りの浴室じゃないかと、みんなに大笑いされたし……。


 と、まぁ、笑われたことは、今は置いておいて。こんな風に、私の身の回りでは、不思議な出来事がいろいろと起きているの。


 それでね、その違和感というか、不思議な出来事の内容が、大問題かと言われると、そうでもないんだけど。ただちょっと、さすがに数が多すぎるなと思って。つい先日、私は課長に今の状態を相談しに行ったんだ。


 そして私の話を聞いた課長は、私に検査をするように言ってきて。だから、研究所の専属医、研究所に常駐してくれている目黒先生に、研究所でできる限りの検査をしてもらい、その結果は……。特に異常なしという結果だったよ。


 こうして、この結果を受け、私は一応、このまま研究所で過ごしながら、様子を見ることが決まり。だけど、もしこれ以上症状が酷くなるようなら、街へ戻るということも決まったんだ。


 お兄ちゃんと私の願いを叶えるために、この素晴らしい研究所へ来て。そして、生活にも研究にも、ようやく慣れてきたところだったから、残れることになって、本当に良かったと思う。


 だけどその反面、どうしてこんなことになっちゃったんだろう、とその原因についても考えて……。


 記憶の方は、素晴らしい研究所での研究は、今までの研究生活よりも、覚えることや考えることが多く。そういった情報量が一気に増えたことで、無意識に脳が情報を整理しちゃった?とか。

 1ヶ月も、この閉ざされた環境にいれば、少しは物忘れをしたり、変な想像をしちゃうことくらい、誰にでもあるよね? とか、そんなことをかんがえたよ。


 でも、いくら考えても答えが出ることはなく。結局、何も分からないまま、検査以降もそれまで通りの生活を送っているって感じなんだ。そして……。


 ブーブーブー。


 今日も、仕事の終わりを知らせるブザーが鳴る。少し前から班のみんなは、片付けを始めていたから、ブザーが鳴ると同時に研究室から出て行くよ。


「う~ん、疲れた。やっぱり、疲れが原因なのかな?」


 私は、首から下げたお守りをそっと握りしめる。


 お兄ちゃんと私の夢を叶えるために頑張らなくちゃ。だけど、疲れのせいでそれができなくなるかもしれないなんて。ここから帰らされるかもしれないなんて……。それだけは、何としても避けたい。


「よし! 今日はもう何も考えず、頭も体も休めよう。まずはお風呂に入ってゆっくりしようかな。それから美味しいご飯を食べて、まったり過ごして、たっぷり寝る。うん、それが良いよね!!」


 私がそう独り言を言っていると、


「瞳、何をブツブツ言っているのよ。行きましょう!」


「はい!!」


 私以外の、最後に研究室を出ようとしていた研究員に声をかけられ、大きな声で返事を返す。そして、明日からの研究を、他のことに気を取られず、しっかりできたらいいなと思いながら。私は小さく伸びをして、研究室をあとにしたんだ。

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