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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第3章 警告と覚醒

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4話 所長の不気味な笑みと完全に孤立した研究所

 ただ、ここからが今までの私とは違った。今までだったら、そう言われたらきっとすぐに、その場を後にしていたと思う。でも今回は、『そうですか』と、引き下がらずに、食い下がったんだ。いや、正確に言うと心の中で、うんうんと力強く、頷いていたっていうか。


 まず、私は自分の口から、しっかりと今の気持ちを伝えようと、意気込んで所長に会いにきたでしょう? それについては、途中まではちゃんとできていたと思う。うん、途中まではね。……たぶん?


 いやね、途中から、宮本さんの迫力に圧倒されちゃって。所長の突き放す言葉以降は、宮本さんと所長の話に、入れなくなっちゃったんだよ。まったく、情けないったら。


 そして今も宮本さんは、今にも所長に掴みかかるんじゃないか、というくらいの勢いで、所長と話をしているよ。


「いいかげん、動かないなんておかしいでしょう! 行方不明者がこれだけ出ているのに、私たちをこんな危険な場所に置いておくなんて。何が、『我々には研究員を守る責任がある』よ。守るどころか、危険に晒しているじゃない」


「全て警察に任せていると、何度も言ったはずだ。そして警察も、今は動くなと言っている。それに、おそらくもうそろそろ、本格的な捜索隊が組まれ、ここへやって来るはずだ。その時に、山田研究員と川島研究員を知っている我々が、ここに残っていなくてどうする」


「話なら街に戻ってからすれば良いのよ。それで無線でも何でも使って、ここに来た捜索隊に知らせればいいんだから。それに捜索の方だって、それこそ私たちはプロじゃないんだから、任せるしかないでしょう。そうなれば、私たちがここに残る理由なんて、どこにもないわ」


「何度も言うが、我々はここから動かん」


「私も何度も言うけど、私たちじゃ、逆に邪魔になるわよ! ここは一旦街へ戻って、この事件が解決するまで、そして研究員たちの心が落ち着くまで、家でゆっくりすべきだわ!!」


「……研究はこのまま続ける。話は以上だ」


「所長!! 話はまだ終わっていないわよ!!」


「これ以上無駄口を叩くならば、今は自分たちのしたいようにさせているが、皆の時間を全て管理し、強制的に研究をさせるぞ。お前たち2人だけではない、全員だ!」

 

 そう、所長が言った途端、今まで見たことがないほど、私たちを威嚇してきたというか、圧をかけてきたというか。

 部屋の空気が一瞬で凍り付き、あまりにも異様な所長の様子に、私は今度こそ、後ろへ1歩下がってしまって。宮本さんも、その圧を感じたんだろう。話すのをやめてしまい……。


 そのまま、私たちは部屋を追い出されることになってしまったんだ。


「所長も警察も、どうしてここまで動かないの、おかしいわよ!!」


 と、激しい苛立ちを所長にぶつけながら、部屋を出る宮本さん。それに続く私。


 そうして何ともいえない気持ちのまま、廊下を歩き始めたんだ。


「はぁ、ここまで話が通じないなんて。どう考えてもおかしいでしょう!」


「どうして、そんなに帰したくないんでしょうね」


 研究しろ、研究しろと、毎回そればかり言ってくるけれど。今は、半分の研究員たちが、研究を放棄している状況。


 もちろん私みたいに、何かをしていないと落ち着かないからと、とりあえず研究を続けている人はいるよ。でも、前みたいに集中して、しっかり研究しているんじゃなく、無理やりやっているような状態だからね。それで、何か良いものを作り上げられるとは思えない。


 まぁ、所長や課長たちみたいな考えの人たちもいて、今回の出来事なんて関係ないとばかりに、普通に研究している人たちもいるけど、それでもね。


 だからこそ一旦街へ戻って、みんなしっかりと休養をとり、元の生活を送れるようになってから、ここで研究を続けたい人は戻ってくれば良いし。戻りたくなければ、別の場所で研究をすれば良いと思うんだ。


 こればかりは、それぞれの考え方だから、戻る人が少なくて、今より人数が減っちゃうかもしれないけど。でも、あとでまた、他の研究員を募集すればいいんだし。そこは会社が、考えることだからね。


 そして、ここに戻らなかった人たちは、新たな場所で、研究に励めば良い。


 確かにこの研究施設は、他よりも研究設備が揃っていて、私もそれが気に入っていたけれど。なにも絶対に、ここでしか研究ができないというわけじゃない。本気で研究をしたいと思っているのなら、どこでだって研究はできるんだから。


「あいつの頭の中は、一体どうなってるのかしら! あー、頭にくる!! 瞳さん! おばちゃんはいなくなってしまったけれど、それに、まだまだ心配ごとだらけで不安だけど。お腹が空いたら余計それが強くなってしまうわ! ここは食堂へ行って、他の料理人さんたちのデザートを、たくさん食べさせてもらいましょう!! やけ食いよ!! さぁ、行くわよ!!」


「は、はい!!」


 食材は、もちろん街から運んでくるし、時々運ばれてくる。だけど、なにせ場所が場所だからね。研究所の敷地内には大きな食糧庫があって、たくさん食材は用意されているし。2年は普通に暮らせるくらいの、備蓄食もちゃんと用意してあるから、食事の心配はないんだ。


 ずんずん進む宮本さんのあとを、私は慌てて追いかける。ただ……。


 私は少しの間だけ立ち止まり、振り返って所長室を見つめたあと、すぐに前を向いて、また歩き始めた。

 

 実は、話し合いの内容以外で、宮本さんにはまだ言っていない、ある気になることを、私はさっき目撃したんだ。


 所長の冷たい態度や、人を寄せ付けない雰囲気は、初めて会った時からで。今はそれが、より強くなった感じだけど。


 所長室を出る時、ドアが閉まるのを確認しようと、私はほんの少しの間だけ後ろを向き、所長の方を見ていてね。それで所長も、あの雰囲気のまま、じっとこちらを見ていて。嫌だなと、ちょっと思っていたの。


 でもそれは、ドアが閉まる直前の一瞬の出来事。所長が『ニヤリ』と笑みを浮かべたんだ。


 それは、背筋が凍るほど不気味な笑みだった。ただ、その不気味さをかき消すくらい、普段の所長からは想像もできないくらい、本当に、本当に嬉しそうな、笑みでもあって。


 これだけの事件が起きているのに、そしてみんなが大変な状態の時に、今あんな笑みをする? どう考えてもおかしい。いや、すでにもう、おかしなことばかりだけど、今までの中で1番おかしい気がする。


 ただ、そのことをどうにも上手く説明できる気がしなくて、宮本さんに話すことができず。所長のその時の様子は、食堂に着いて、デザートを食べている間も、その後の自由時間も、私の頭からは離れることはなかったんだ。


 私の見間違い? もしかして、私に時々起きる、見間違いや思い違い、忘れごとなんかの不可解な出来事、そして違和感と同じ? ここにきて新たな出来事として、所長のことが増えてしまったとか?


 いやいや、もう、本当、そういうのやめてほしい。それに、あの背筋が凍るほど不気味な笑みが、見間違いなはずがない。


 こうして、この日を境に、どうにもあの所長の笑みが気になった私は、あの笑みの理由を知ろうと。所長が近くにいる時は、少しの変化も見逃さないように、そして悟られないように、こっそりと所長を観察するようになったんだ。


 そんな、数日後のこと。ついにこの日、待ちに待ったある知らせが警察からもたらされた。ようやく、山田さんと川島さんの捜索が、本格的に開始されることが決まったと、連絡が入ったんだよ。


 その知らせに、私や研究員、それに他の人たちの間に、少しだけ安堵の空気が流れた。本当に久しぶりの良い知らせだったからね。それに、もしかしたらこれからは、良い出来事が続くんじゃないか、とも思ったし。


 でも……、現実はそんな甘くなかった。この前の悪天候のせいで、前回よりも多くの木々が倒れ、川が氾濫してしまったようで。前回の警察の時と同じように、捜索隊もすぐには、ここへ来られないと言われてしまったんだ。


 まったく。これじゃあ、私やみんなが、いくら街に戻りたいと所長に直談判したところで、迎えのバスも来られないじゃない。だから早く、迎えを頼んでおけば良かったのにと、またイラついたよ。


 挙句、最悪なことに、警察との連絡から数時間後、なんと研究所内の電話も無線も、一切使えなくなってしまったんだ。


 そこで私は、機械関係担当の斉藤さんの手伝いとして、研究所の周囲を回って点検することになったの。


 もちろん、最初は断ったよ。研究のこと以外はからきしの私。そんな私が、手伝えるわけないと分かっていたからね。


 だけど、他の研究員たちは、部屋に閉じこもってしまっているか、研究や他のことをしていても、それ以外のことはしたくないという雰囲気を出していて。どうにも、話しかけづらかったみたい。


 それで、時々話をしていた私に、お願いしたいと言われてね。それならと、斉藤さんの手伝いをすることにしたの。


 そして原因を調べた結果。どうやらあの悪天候のせいで、どこかで電話線が物理的に切断されてしまったのでは、という結論に至ったんだ。無線の方も、激しい雨と落雷の影響で、中継設備に不具合が出ているのだろうって。


「俺1人じゃ、直すのは無理だ」


 と言い、力なく首を振った斉藤さん。最悪なことが、まるで誰かが仕組んだんじゃ? という感じに、次々と重なる。


 しかも、私の抱える問題は、これだけじゃなくなっていたんだ。

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