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廃墟に咲く永遠の蕾  作者: ありぽん
第3章 警告と覚醒

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3話 逃げてばかりはいられない! 初めての直談判へ

 あまりの出来事に、課長にも所長にも、誰にも知らせずに部屋に逃げ込んだ私。それからベッドに潜り込み、どれだけ震えていたことか。

 そうして、ようやく少し落ち着きを取り戻し、他のことにも気を回せるようになったのは、事件が起きてから数時間後のことだった。


 この頃になると、淡い光が窓から差し込んできて、その光でさらに落ち着くことができ。私はやっと、課長のところへ行かなくちゃ、と思えるようになったんだ。


 だけど、落ち着いたとはいえ、それでも立ち上がるには、まだ時間がかかってしまい。重い腰を上げられたのは、さらに数十分後。それから私は、フラフラと立ち上がり、重い足取りで課長に伝えに行ったよ。


 ただ、話をしに行ったのは良いけれど、正確に、全てのことを話すことはできなかった。あんな現実離れした出来事。私は確かに見たけれど、でも現実じゃないと思いたい部分もあって。


 見た私がこうなんだよ? それなのに、その現場を見ていない人たちが、信じてくれるとは思えないでしょう?


 だから私は、神谷のおばちゃんには本当に申し訳なかったんだけど、


「昨夜、物音がして外を見てみたら、神谷さんが外に出ていくのが見えたんです。それで、声をかけたんですが、そのままどこかへ歩いて行ってしまって。それで今朝、気になって食堂に行ってみたら神谷さんはいなくて。部屋にも行ってみたんですが、返事がなかったんです……」


 そう報告したんだ。


 こうして私の報告により、課長と他の責任者が、神谷のおばちゃんの部屋や、研究所内と研究所周りを確認。どこにもおばちゃんの姿が見えないということで、おばちゃんも失踪したということになり、警察へ通報し指示を仰ぐことになったの。


 それからというもの、研究所の空気は一変した。


 神谷のおばちゃんの失踪がみんなに伝わると、研究所内には最悪な雰囲気が漂い、今までよりも、みんなの会話が激減。


 また、所長や課長には研究を続けるように言われていたけれど、それをやめる人たちが続出して。みんな、用がある時以外は、部屋からほとんど出なくなってしまって。研究所内は、不気味なほどに静まり返ってしまったんだ。


 そして、私はといえば、真実を誰にも打ち明けられず、何ともいえない気持ちのまま、過ごすことしかできなくて。


 研究をしていれば、少しは気がまぎれるかと思ったけれど、それだってそう簡単にいくわけもなく。そのうち、これまでの研究時間の半分さえ、まともに研究できなくなってしまって、午後、休みを取ることが多くなってしまったの。


 ただ、そんな最悪な雰囲気の中でも、数日経つと、今度は別の変化が起き始めたんだ。


 最初の山田さんたちの事件が起きた時から、所長に帰らせてくれと、直談判していた人たちはいたけれど。それは、突然の異常事態から、とりあえず離れたいと思う気持ちが大きく、何でもいいから早く帰らせてくれと訴えている感じだったし。私も、その様子をただ眺めているだけで……。


 でも今度は、今の自分たちの状況をしっかり考え、これからどうするべきか、どう動くべきか。研究所をただ出たいというだけじゃなく、そういった今後の身の振り方を、所長と話し合う人たちが現れ始め。中には、毎日数時間、所長と話す人たちも出始めたんだ。


 すると、今まで所長を怖がって近づかなかった人たちが、そんな人たちの姿を見て勇気づけられ。その人たちもついに、所長に話をしに行くようになったの。


 そして、そんなみんなの姿を見た私は……。


 私もこれまで、やっぱり所長が苦手で、自分からは話をしにいかず。それに、どうせ私じゃどうにもならないと思い、そういった大変なことは、他の人に任せてしまっていて、少しも自分から動くことはなかった。だけど……。


 それは、ただ逃げていただけ。みんなのように、私もしっかり直談判するべきだ。みんなにばかり任せるなんて、そんな人任せなことをしちゃダメ。


 ここはしっかりと所長と話し合い、それでみんなで街へ戻って、いろいろと問題を解決してから、改めて出直した方がいい。このままじゃ、もう研究なんて進められない。お兄ちゃんと私の夢を叶えるためにも、しっかりしないと!


 と、みんなの必死な姿を見て、今までの弱い自分を見つめ直し、心を奮い立たせ。かなり遅くなってしまったけれど、私も直談判しに行くことを決めたんだ。


 そうと決めたらすぐにでもと、研究室を飛び出した私。勢いに任せていたから、誰かと一緒に行くなんて考えもしないで、そのまま廊下を進んでいいく。


 するとすぐに、宮本さんが私を追いかけてきたんだ。その様子に、何かあった? もしかして、また誰かいなくなった!? と思い、慌ててどうかしましたかって聞いたよ。


 そうしたら、宮本さんは呆れた顔をして、溜め息を吐きながら、


「なんかすごい剣幕で、勢いよく歩いて行くんですもの。今は状況が状況でしょう、私の方があなたに何かあったんじゃないかと、心配で追いかけてきたのよ」


 と言ってきて。どうも宮本さん、自分の研究室を出たところで、私が歩いているのを見かけ。いつもと違う私の様子に、心配して急いで追ってきてくれたみたい。それなのに、どうかしましたかって、私が聞くっていうね。


 恥ずかしく思いながら、すみませんと言い、誤解を解かないとと。私が今から、何をしに行くつもりなのかを、すぐに話したんだ。すると、


「あなたって、いつもはおとなしいけど、時々突っ走るわよね。もう、心配で仕方ないわよ。ほら、一緒に行きましょう」


 と言ってくれたの。


 私は宮本さんの申し出にお礼を言い、こうして私たちは2人で所長室に向かうことになったんだ。


 そうしてすぐに、所長室に着いた私たち。


「あら、外には誰もいないのね」


「そうですね、最近は必ず誰かいたのに、珍しいですね」


 そう、所長と話す人たちが増えて、この頃は必ず誰かが所長室の外で、話す順番を待っていたんだけど。今は所長室の前に誰もいなかったの。それに、


「面会中のドアプレートもないわ」


「本当ですね」


 誰かが所長と話している時は、所長室のドアに、『面会中』のドアプレートがかかっているんだけど、それもなかったんだ。


「本当、珍しいこともあるものね。ま、待たなくて良かったじゃない。さぁ! 所長と話をするわよ!!」

 

「あ、宮本さん!」


 意気込んできたものの、いざ所長と話をするとなったら少し緊張して、深呼吸でもしてからと思っていた私。でも、その前に宮本さんが、ドアをノックしてしまい、声をかけてしまったんだ。


「誰だ?」


「宮本です! ……ほら、瞳さん」


「あ、は、はい。高橋です!」


 慌てて返事をする私。


「お話があります。いま、よろしいでしょうか!」


「……大体の話の内容は分かるが。良いだろう、入れ」


「ありがとうございます! さぁ、入りましょう!!」


「は、はい!」


 宮本さんがドアを開けている間に、急いで深呼吸をする私。そして、しつれいしますと言いながら、所長室に入った宮本さんに続いて、私も所長室に入ったんだ。


「しつれいします」


 と、ドアを閉めて前を向き、所長を見た瞬間だった。所長からとても嫌な気配がして、私は一瞬だけど、後ろに下がりそうになってしまったの。こう、なんとも言い表せない、そこにいるだけで息が詰まるような、本当に嫌な気配がしてね。


 ただこの時は、今までの所長たちの対応で、かなり頭に来ていたからね。いつも以上に、所長に対して嫌悪感があって、そう感じたのかな? と思ったし。宮本さんが、部屋に入ってから数秒も置かないで所長と話しはじめたから、私もそれに続いたんだ。


 そうして私の、初めての直談判に対する所長の答えは……。あいかわらずの、『今は動けない。話は終わりだ』だった。

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