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アルベルト侯爵の忠誠  作者: @皐月


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8/8

もう一つの再会

「決心を固めていただいてありがとうございます。いつ頃から王都に出てこられますか?こちらとしては既に席は用意しておりますので、早ければ早いほどありがたいのですけど。」


クラウス殿下は父に承諾をもらえたことがよっぽど嬉しいのか、ぐいぐいと登場を迫ってくる。


「早いに越したことはないと理解はしております。しかし、この領地をおいそれと放り出すわけにはいきません。まだ領地内も安定しているとは言えませんし、この屋敷にリーディアを一人残すのも・・・。」

「お父様、領政についてはクラウス殿下がきっと素晴らしい方を派遣してくださるはずです。そして私も大丈夫です。私も一度絶えた身。修道院にでも身を寄せてつつましく暮らしていこうと思います。」

「リーディア・・・。いや、修道院など。」


せっかく覚悟を決めた父の邪魔はしたくない。それにクラウス殿下の新王国の元ならば、修道院生活もきっと良いものになるだろうとリーディアは思った。

そうして前向きに修道院生活を描くリーディアを見て、鎧の騎士が動揺を見せた。

一方で、クラウス殿下が少し楽しそうに声を上げた。


「リーディア、ランバート侯爵。それに関しては、私からよい提案がございます。新しい領主の問題も、リーディア様の身の振り方も一度に解決できる素晴らしい案だと思うのですが。」


クラウス殿下は、鎧の騎士に目配せをした。

「お前はいつまでそれを被っているつもりだ?」

「いえ、なんというかタイミングを逃してしまって。」


そう言いながら騎士が鎧の兜をとる。

現れたのは短く切った茶色い髪をもつ精悍な顔立ちの青年だった。


「・・・エド?」


最後に見た時よりも一回り程大きくなっており、また少し声も太くなっていたためわからなかったが、顔をみればはっきりとわかった。クラウス殿下とともに隣国に渡った幼馴染エドワードだと。


「彼ならば適任だと思いますがいかがでしょうか。隣国で私について剣だけでなく政治についても学んでおります。」


クラウス殿下はそう提案しながらも、どこか寂しさを滲ませた目でリーディアをちらりと見やった。

エドワードは一歩前に出ると、リーディアに向かって深々と頭を下げた。

「リーディア様。修道院などに行かず、私との結婚を考えてくださいませんか。」


エドワードの突然の申し出に、リーディアは驚きに目を見開いた。脳裏にエドワードとの思い出が浮かぶ。


母を亡くした自分を必死に慰めてくれる姿。一緒にクラウスと自分を守ると言ってくれた姿。そして、隣国に立つ前にじっと自分を見て必ず帰ると言ってくれた姿。


「エド・・・。」


リーディアが答えに窮していると、クラウス殿下は、わざとらしく大きくため息をついた。

「ああ、全く。急すぎるだろう。いきなりプロポーズの前にいうことがあるんじゃないのか?」

「それもそうでした。リーディア様。」

その言葉を受けて、エドワードはリーディアの前に跪いた。


「幼いころから、貴方を守るのは自分だとずっと思ってきました。身分差があることは理解していても、どうしても・・・どうしても諦めきれなった。だから、隣国で貴方の隣に立つために必要なことを学んでまいりました。元は平民ですが、クラウス殿下が今回の革命の功労として、爵位を約束してくださってます。それでもしがない男爵ですが・・・。」


そうして昔の初恋の相手に手を取られ、リーディアは自分の顔が熱くなるのを感じた。

「で、でも私は旧王国の侯爵令嬢・・・。」


身分差が逆転してしまったようなものだ。革命の立役者である彼に自分は釣り合わないと視線を落とすリーディアの手を、逃すまいとエドワードがギュッと握る。


「隣国でも、こちらに戻ってきてからもずっと貴方を思っていました。昔の思い出を引きずっているだけなのではと同僚の騎士達に言われ自問自答したこともありましたが、答えは変わりませんでした。私は貴方を愛しております。貴方に振られたら、それこそ自分が牧師にでもなろうかと思うくらいに。どうか、この哀れな男のたった一つの願いを叶えてくれませんか。」

「でも、新王国の貴族の方達になんといわれるか。私が理由で貴方が貶められたりすることがあったら・・・。」

「ランバート侯爵が宰相になれば、貴族達は何も言いませんよ。もとより、ランバート侯爵が没落する事など新王国貴族も、領民達も誰も望んでおりません。」

「で、でも、あなたは新王国の役人になるのではないの?」

「今回の革命での働きが認められ、1つだけ願いを叶えていただけることになりました。私が望むのは、あなたとこの領地を守る事だけ。」

エドワードは跪いたまま、真剣な眼差しでリーディアを見上げる。

リーディアの瞳からは自然と涙が流れていた。

「・・・わ、私は言ってもいいのかしら。私もあなたを愛していると。」

「ええ、ぜひ。その言葉だけが私の望みです。」

「エドワード、愛してるわ。ずっと、ずっと愛してたの。」

リーディアは迷うことなく、エドワードの手を取った。二人の顔に、これまでの苦難を乗り越えた清々しい笑みが広がる。


「これで一件落着ですかね。ランバート侯爵。」

「・・・・・・そうですね。」


領地問題はすんなり解決したが、娘の結婚まで決まってしまった事態に、父は複雑そうな様子を見せた。

クラウス殿下も二人の姿を優しい眼差しで見つめていたが、一瞬寂しそうな表情を浮かべたことに、誰も気づいていなかった。


ー姉様は、この領地で幸せそうに笑っているのが似合うからー


自分の想いは飲み込み、笑顔を作る。

そして、使用人に囲まれる二人にすっと近づき、わざと明るくリーディアに囁いた。


「泣かされたら言ってね。すぐに攫いに行くから。」


ニヤリと笑ったクラウス殿下の言葉に、エドワードは顔を真っ青にして慌てて手を振った。

「殿下!それは冗談でもやめてください!生涯、リーディア様を泣かせたりなどしません!」

「ふふ。わかってるよ、エドワード。君の忠誠心は知っている。でも、約束だよ、姉様。」

クラウス殿下は、冗談めかして懐かしい呼び名でリーディアを呼んだ。

「ありがとう。・・・クラウス。」


その想いをくみ取り、リーディアもまだお互い幼かった頃の呼び名で返す。


ランバート侯爵は、娘と幼馴染、そして王子の三者のやり取りを複雑な思いで見つめていたが、最後にクラウス殿下が送ったその真摯な祝福に、深く安堵した。娘が、幼馴染であるエドワードと共に、この領地と未来を守っていく。それが、彼女にとって最も幸せな道だと確信したからだ。

これで本編は完結です。

クラウス視点の隣国でのエピソードなども番外として書ければなと思います。



~おまけ~

没にしたエピソード


そう言いながら騎士が鎧の兜をとる。

現れたのは短く切った茶色い髪をもつ精悍な顔立ちの青年だった。


「・・・エド?」

「エドワード!?なんであんたさっさと姿を見せないの!無駄に心配してしまったじゃない!!リーディア様にも無駄な心労をおかけして!」

「か、母さん。ごめん。」

「ロ、ローザ、ちょっと落ち着いて。今、すごく大事なところだから。」


エドワードの母は侍女長ローザです。

シリアス感がなくなったので止めました。


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