再会
王に就任し、城で政務を行っているはずのクラウス殿下の姿をみて、ランバートは驚きを隠せなかった。
「なぜ、貴方がここに?」
「決まってるじゃないですか。貴方とリーディアを迎えに来たんですよ。」
記憶の姿よりもかなり成長していたが、親しい人間にだけ見せる拗ねた顔は昔のままだった。
「全く。初めからこちらの味方になっていてさえくれれば普通に迎えに来れたのに。旧王国の悪政の中、一人奮闘されていたのでしょう。仲の深い貴族を隣国へと送り、自分は一人、旧王国側に残って。おかげで革命も、新王国の立ち上げもスムーズにいきましたがね。貴方がいない以外は。」
クラウス殿下は簡単に言ったが、それでも慣れない土地で苦労をしてきたことはうかがえる。以前のような甘さは彼の様子からは抜けていた。
「なんとか最後の混乱の中、犠牲になる民が増えぬようにと。増税に領民を巻き込まない為、私財を売り、雇えなくなった者たちのために他家に頭を下げ、必死に領地を守った。そんなあなたをどうして処刑などできましょう。」
「・・・だが、私は旧王国の侯爵・・・。」
理解が追い付かず、上手く言葉が出せなかった。
彼に自分達を罰する気がないということだけはわかったが。
クラウス殿下はなおも言い募った。
「旧王国で富をむさぼっていた者たちはとっくに処罰いたしましたよ。罪によっては処刑もしましたが、それでも全員処刑などにはしていません。私がここへ来たのは、あなたを新王国の宰相に迎えるためです。この格好をしていたのはほんの少しの意趣返しです。」
「私を宰相に?いや、そんなことをしては、新王国貴族から反発が・・・。」
「新王国の重役は皆あなたに借りがある、もしくはあなたと縁の深い貴族ばかりだ。その者達があなたを望んだ。あなたを処刑などしてはまた革命が起きるでしょう。せっかく落ち着き始めた国をまた混乱させる気ですか。おとなしく王都にきて私を手伝ってください。」
「・・・少し、頭を整理させてください。」
矢継ぎ早に現状を突き付けられ、ランバートは膝の力が抜けた。
ゆっくりとソファに沈み込む。
混乱するランバートを落ち着けるためかクラウス殿下は思い出話を始めた。
「それにしても懐かしいですね。内装は寂しくなりましたが暖かい雰囲気は昔のままだ。その落書きも、残していてくれたんですね。」
クラウス殿下の視線の先には、目を凝らさなければ見えないくらい小さくひっそりとした文字が書かれた壁があった。クラウス殿下が隣国に立つ直前に密かに書いたものだ。応接間に来る客人からは見えない位置。掃除をするものやここを使う事の多いランバートは気づいていたが、あえて残していた。
―いつか必ず、再びここに Kー
「貴方の想いが込められた言葉を消すなんてできなかった。この誓いの言葉が一人隣国に渡った貴方にとっての糧になればとずっと願っていた。」
そして、誓った言葉通りにクラウス殿下は戻ってきた。
「おかげさまで無事に大きくなって帰ってきましたよ。こんな再会の仕方は想定外でしたけどね。」
クラウス殿下の言葉に苦笑いが漏れる。随分根に持っているらしい。
少し空気が緩んだところで、扉が開いた。




