枯れ専がばれました 2
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アントネッラ伯爵は、ステファーニ公爵家から手紙が届いたと聞き歓喜した。
いそいそと手紙を持って書斎に向かい、ペーパーナイフで丁寧に封を切る。イアナがきっと送金について書いているはずだ。
ほくほく顔で便箋を取り出そうとしたアントネッラ伯爵は、封筒の裏の差出人の名前がイアナではなくフェルナンド・ステファーニ公爵ということに気がついて首を傾げた。
(もしかしてイアナが公爵に援助の相談をしてくれたのか? 可愛げのない娘だと思っていたが、なんだ、可愛いところもあるじゃないか)
しかし、上機嫌で便箋を開いたアントネッラ伯爵は凍り付いた。
援助どころか請求書が同封されており、ジョルジアナがステファーニ公爵家の名前を出して王都の店に注文の連絡を入れまくっている事実が判明したからだ。
アントネッラ伯爵も夫人もジョルジアナも夏の間領地に戻っていたが、ジョルジアナだけは田舎はつまらないと言って先週に王都のタウンハウスに戻った。また既婚者と不倫されては堪ったものではないので執事を目付け役に付けておいたのに、なんで勝手に買い物に行かせたのか。
そう思っていると、執事の代わりに料理人が新たな手紙を持ってくる。
何だろうと思って開けると執事からで、内容を確認したアントネッラ伯爵は頭を抱えた。
ジョルジアナが屋敷に商人や仕立屋を呼び寄せて買い物をしているという報告書だった。王都からここまでそれなりに距離があるため手紙の到着が遅れたのだろう。
そして執事は、アントネッラ伯爵家の名前でツケ払いにしても商人たちが応じないのを知っているので、ジョルジアナの買い物は成立しないと思っていたに違いない。
(なんてことをしでかしてくれたんだ!)
フェルナンドの手紙には、ジョルジアナがいくらステファーニ公爵家の名前を出して買い物をしても、公爵家は一切の支払いに応じない、届いた請求書はすべてそちらに回し、ジョルジアナが買い物をした店にもアントネッラ伯爵家に請求するように通達を出す、とあった。
アントネッラ伯爵は蒼白になり、急いでタウンハウスの執事にジョルジアナの買い物を止めるように手紙を書いた。合わせてジョルジアナにもステファーニ公爵家の名前を出して買い物をするなと手紙を書く。
それからフェルナンドが同封してきた請求書の額面を見て、アントネッラ伯爵は白目を剥きかけ、ジョルジアナの手紙に、買ったものを返品しろと追記した。
「まったく、なんでこんなことを……!」
きっと、フェルナンドはジョルジアナの請求書が手元に届いて激怒したのだ。これではイアナが何を言おうと、フェルナンドの怒りが解けるまではアントネッラ伯爵家に援助してもらえない。それどころか、イアナの小遣いも止められたのかもしれない。だってイアナから送金がないのだから!
アントネッラ伯爵は新たな便箋を取り出し、イアナに向けて何としてもフェルナンドの機嫌を取り、早く我が家に援助してもらうように説得しろと書いた。
(手紙を送るのだってタダではないんだぞ!)
ジョルジアナを甘やかしすぎた。
アントネッラ伯爵はそのことを今までにないほど後悔したが、もはや彼にはどうしようもできなかった。
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