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お祭りデート 4

お気に入り登録、評価などありがとうございます!


本日2回目の投稿です!

 そのあと追加でいくつかの料理を屋台で買って食べ、夜が更けるまで祭りを楽しんだ後、イアナとフェルナンドはそのまま町の宿に一泊することになった。


 騎士団が詰め所にしていた宿の最上階。

 一番広くて豪華な部屋の窓からは、まだにぎわっている祭りの様子が見渡せる。


「明け方近くまでこの調子だから、今日はうるさいと思うぞ」

「大丈夫です、わたし、うるさくても寝られるタイプなので」


 フェルナンドと並んで窓の外を見下ろし、顔を見合わせて笑い合う。

 広場では酔っぱらった男女が踊っている姿もあった。貴族の社交ダンスのようなものではなく、フォークダンスのようなダンスだ。誰かが笛を披露すると、また誰かが太鼓を持ち出して、そのリズムに合わせて踊っているようだ。


「わたし、貴族の社交パーティーよりこういうお祭りの方が好きです」

「私も同感だ。パーティーは肩が凝るからな」

「旦那様は先王陛下の弟君ですし公爵ですから、挨拶に来る人だけで大行列ができそうですね」

「そんな感じだな。だけど君も公爵夫人になったのだから、もし私とパーティーに出席することがあれば同じ目に遭うぞ」

「なんてこと!」


 そのことを想定していなかったイアナが目を丸くすると、フェルナンドが喉を鳴らして笑う。


「まあ、私の外見問題があるから、パーティーに出席する日が来るかどうかはまだわからないけどね」


 フェルナンドの外見問題をどうするかについては、今、エラルドが必死に研究を続けていた。

 若返りの薬の中和剤でも、老化の薬でもなく、別の方法で都合よく外見を誤魔化せないかといろいろ試しているらしい。公爵家を継ぎたくないエラルドは、何が何でも父親を長生きさせたいようだ。イアナもフェルナンドには長生きしてほしいからもちろん止めない。


「エラルドが頑張っているから、案外何とかなるかもしれませんね」

「息子を自慢するようで気恥ずかしいが、あれは魔術に関しては天才だからな。魔術塔の主になる話も出ていたが、主になれば余計な仕事が増えるから嫌だと、魔術塔に名前だけ所属して、好き勝手しているが」


 魔術塔の主とは、要するに長のことである。大臣と同じような役職だ。

 魔術塔は、魔術師の中でも特に実力のある人たちが所属している。魔術の研究所のようなところである。他にも、魔術師団などもあるが、こちらは研究というよりは実務で、騎士団と組んで災害対策や防衛などに当たることが多い。

 エラルドは研究者気質なので魔術塔に所属することを選んだが、塔内に部屋をもらっているにもかかわらず、結婚してからは公爵邸に確保した研究室で研究を行っているという。


「おかしな研究もしているが、役に立つものも多いんだ。あれのおかげで我が家は魔術具が充実しているし……確かに、君が言う通り案外何とかしてしまうかもしれないな」


 フェルナンドが「誰に似たんだか」と肩をすくめた。お父さんの顔をしている彼が何だか微笑ましい。イアナも前世で息子がやんちゃをするたびに「誰に似たのかしら?」と思ったものだ。


「魔術具と言えば、公爵邸は夏だというのにとても快適ですよね」

「もともと各部屋に空調の魔術具はつけていたのだが、エラルドが改良したからな。室温設定ができるようになっているらしい」

「え? すごいじゃないですか!」


 室温設定ができるなんて、まんま前世のエアコンだ。イアナの知る空調の魔術具は、部屋を涼しくしたり温めたりすることはできても、室温設定まではできなかった。前世のエアコンの機能と比べれば実に使いにくい代物だったが、エラルドの改良によってエアコンに限りなく近づいたというわけだ。天才か!


「ルクレツィオが生まれた時に必死に改良していたんだ。部屋が涼しくなりすぎて息子が風邪を引いたら困るとかなんとか言って」


 その時のことを思い出したのか、フェルナンドが相好を崩す。結婚前までは、結婚や子供に興味のなかったエラルドが必死になっていたのが面白かったそうだ。


「エラルドは素敵なお父さんですね」


 カーラにいまだに「ぱぱ、やっ」と言われて抱っこさせてもらえなくてしょんぼりしているエラルドの顔を思い出して、イアナはぷっと噴き出した。エラルドは間違いなく子煩悩だ。

 笑っていると、フェルナンドがイアナの肩をさりげなく引き寄せる。

 頭頂部にキスが落ちてきて、イアナが顔を上げると今度は額に唇が触れた。


「君が息子たちと仲良くしてくれてとても嬉しいよ」

「わたしも、旦那様の家族がわたしと仲良くしてくれて嬉しいです」

「君も家族だろう?」

「そうですね」


 くすくすと笑いながら唇が重なる。


 窓の外は変わらずにぎやかだが――今日はしっとりとした夜になりそうだった。





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