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12/22

お祭りデート 1

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父親は今、2~!

 アントネッラ伯爵はイライラしていた。

 イアナに出した手紙の返事が来ないのだ。


 手紙を出して三週間。

 季節はすっかり夏になり、空調の魔術具が壊れている邸はすっかり蒸し風呂状態だ。


 ド田舎なんて嫌だと我儘を言うジョルジアナを連れて何とか領地に戻ったが、同じく空調の魔術具が壊れている王都の邸よりは領地の方が北にあるので、これでもまだましな方だ。とはいえ、こう暑くてはやってられない。

 かといって、空調の魔術具を新調するのも修理するのも莫大な金がかかる。借金まみれのアントネッラ伯爵家にそんな金はなかった。


(イアナはいったい何をやっとるんだ!)


 イアナに送金させた金でドレスを買うつもりだったジョルジアナの機嫌もものすごく悪い。

 癇癪を起して喚き散らすだけならまだしも物を壊したりするので、邸の中は滅茶苦茶だ。

 イアナがいた頃は掃除や洗濯はイアナに任せていたが嫁いでしまったので、それをする人間を新たに雇わなくてはならないのだが、使用人を一人増やすとなるとその分給料が必要になる。

 執事や庭師、料理人の給料の支払いだって滞っているのに、これ以上メイドを増やすのは難しかった。


 領内の麦畑の収穫はあらかた終わったようなので、領民から税金が徴収できるかと言えばそうでもない。何故なら麦はあっても売れないからだ。支払う金がない領民は現物で税を納めるのだが、麦を納められてもアントネッラ伯爵家も困る。自分たちの食い扶持分だけならまだしも、余剰分を売りに出そうにも売れないからだ。


(くそう! なんで麦が売れないんだ!)


 ここにイアナがいたらこう言うだろう。「安い麦が他国から入って来るからですよ。だから対策が必要だって言ったでしょう?」と。


 しかしプライドの高いアントネッラ伯爵はイアナの過去の助言のことなんてすっかり忘れていた。小娘が偉そうにと腹を立てて真面目に聞いていなかったからだ。


 最近では、アントネッラ伯爵家の領民が他領に流出していると聞く。領民が一人減ればそれだけ税収も下がるので領民が流出するのを止めなければならないが、国の法律上、領民の移動を領主が制限することはできない。

 領主は国に領地を預かって運営しているにすぎず、領地経営の自由は認められるが、法を無視して好き勝手していいわけではない。


(このままではまずい)


 アントネッラ伯爵は借金をするために領地を抵当に入れていた。

 国からの預かりものである領地の売買は基本禁止されているが、国に申請し、領地を受け取る側が問題のない人物だと判断されれば許可が下りる。

 アントネッラ伯爵はそれを利用して、隣の領地を治める伯爵に金を借りる際に領地を抵当に入れたのだ。国に属する執政官が書類も作成しサインもしている。借金の返済期限は十年だが、利子の返済が半年滞った時点で領地が没収される契約になっていた。


 世の中には領地を持たない宮廷貴族もいるが、アントネッラ伯爵は城に出仕しているわけではない。領地が奪われれば名ばかりの伯爵として嘲笑われることだろう。それどころか、爵位の存続も怪しい。借金まみれで領地も持たない伯爵家に婿に来てくれる人間なんていないだろうからだ。

 アントネッラ伯爵には娘が二人しかおらず、イアナは嫁がせた。となると、ジョルジアナが婿を取るしかないのだが、当の本人は遊び惚けて伯爵家にふさわしい婿探しをしていない。


 ちなみにアントネッラ伯爵もジョルジアナの縁談を探しはしたが、めぼしい相手にはことごとく断られていた。

 結婚したと同時に借金を抱えるのがわかっているのだ、普通の感覚の人間なら婿になんてこないだろう。


(くそっ、借金だけでも何とかしなければ! イアナのやつ、まさか手紙を読んでいないんじゃないだろうな?)


 もしかして、運送トラブルか何かで手紙がイアナの手元に届いていないのではないだろうか。


「届いていないんだ、そうに違いない。イアナは可愛げのない娘だが私の言うことは聞く。金をよこせと言えば送金してくるはずだ」


 アントネッラ伯爵はもう一度イアナに手紙を書くことにした。


 書斎の机の上には、借金の督促状が山になっている。

 とにかく利子分は返済しないと、直接乗り込んで来られるかもしれない。


 アントネッラ伯爵は急いで便箋にペンを走らせた。




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