-第25話 大逆転劇-
海で遊んでノトスの町に一泊した後、カイルたち一行は王都への帰路に就く。
旅慣れないクリスティーナの事を考え、ノンブリルの町に一泊、マジーアの町の一泊するゆっくりした道程。
途中で何度か魔物に襲われるが難なく撃退し、王都に着く。
先ずはクリスティーナを送り届けようとレイモンド侯爵の屋敷へ向かう。
レイモンド侯爵の屋敷の前に着くとカイルはクリスティーナに別れを告げて去ろうとする。
クリスティーナは
「お父様にも会っていってもらえませんか?」
と言う。
カイルは
(まぁ、挨拶くらいするのが礼儀か・・・・・・。)
と思って屋敷の中へ。
中ではチャールズ・バトラーが迎え入れてくれた。
同時にメイドの一人が急いで侯爵を呼びに行く。
奥からレイモンドが出て来て
「おおっ!クリスティーナ!よくぞ無事で・・・・・・。」
と安堵の表情を見せる。
クリスティーナは
「お父様、ご心配おかけしまして申し訳ありません。」
と謝罪する。
レイモンドは
「いやいや、無事に戻って来てくれればそれでいい。」
と笑顔で答える。
カイルは
「カイル・スタンフォードと申します。初にお目にかかります。」
と挨拶する。
レイモンドは
「君がカイル君か。娘を無事に届けてくれてありがとう。何か礼をさせてもらいたいんだが。」
と言う。
カイルは
「いえいえ。クリスティーナさんとは友人にならせて頂きましたので無事に届けるのは当たり前の事ですから。お礼など不要です。」
と返し
「では、我々は役目を果たしましたので、これで。」
と去ろうとする。
レイモンドは
「まあ、そう言わずに。侯爵ともあろうものが娘を助けてもらっ上に無事に連れ帰ってもらって何もしないでは世間の恥だ。何かないかね?」
と言うがカイルは
「うーん・・・・・・。」
と何も思い浮かばない。
するとグゥゥゥ~と腹の虫が聞こえる。皆一斉にレティシアを見る。
レティシアは顔を赤くして俯き
「これは・・・・・・その・・・・・・。」
と恥ずかしそうにモジモジしている。
レイモンドは
「では、カイル君。空腹の者もいるようだし、食事を振舞わせてもらえんかね?」
と提案する。
カイルは
「ありがとうございます。それでお願いします。」
と返す。
カイルがレティシアの肩に手を置いて
「お前のおかげで話が早くなった。ありがとう。」
と言うとレティシアは恥ずかしそうにしながら
「いや、その・・・・・・こちらこそ、ありがとう・・・・・・。」
とカイルがフォローしてくれたことに礼を言う。
レイモンドに案内された部屋に入ると縦長のテーブルの奥に席が一つ、両側に十数脚の椅子が並んでいる。カイルはそれを見て
(おそらく、あの一番奥の席が普段侯爵が座っている席なんだろうなぁ。)
などど思っていると、レイモンドが
「今、王都・・・・・・いや王国最高の料理人を呼びに行っている。その前に我が家の料理人が二、三品用意するが、その前に先ずこちらを楽しんでくれたまえ。」
と言うと、いつの間に指示を出していたのかメイドが数人、ワインとチーズを運んでくる。
皆が席につくとそれぞれの前にワインとチーズが並ぶ。
レイモンドが
「さあ、遠慮なく楽しんでくれ。」
と言うと、皆、ワインを飲んだりチーズを食べたりし始める。ちなみにクインには特別にオレンジジュースがちゃんと用意されている。
そうしているうちにチャールズが一人の男を連れて入ってくる。
「お連れ致しました。」
と言うチャールズの横を見ると、“日の丸食堂”の主人ジェフリー・ロジャーズがいる。
ジェフリーがカイルたちに気付き
「カイルさん!」
と声をかける。
カイルは
「どうしたんです?」
と聞くとレイモンドが
「顔見知りかね?彼が王国一の料理人だよ。」
とカイルに答える。
カイルは
「彼の食堂にはよく行くんですよ。確かに彼の腕は最高ですね。」
と言う。
レイモンドは
「あの食堂は私が資金を援助して出させたんだ。」
と言う。
カイルは
「貴族の方が資金援助されたっていうのは知ってましたが、レイモンド侯爵だったんですね。」
と驚く。
レイモンドは
「彼は異世界からの転移者だと言って今まで見た事もないような料理をたくさん作ってくれてね。異世界の話の真贋はともかく、私は彼の人柄と料理の腕と知識を信用した。それで資金援助を申し出たんだ。」
カイルは
「そうだったんですか。」
と納得する。
レイモンドは
「それじゃあ、ロジャーズ君、最高の逸品を頼むよ。」
と言ってメイドに厨房に案内させる。
レイモンドはカイルたちに
「私はこの後、公務で出かけなければならない。何かあれば遠慮なくチャールズに言ってくれ。では食事をゆっくり楽しんでいってくれ。」
と言って部屋を出て行く。
しばらくして、料理を充分に堪能したカイルたちは屋敷を出てきた。
グスタフが
「で?お姫様との結婚の件はどうするんだ?」
と聞く。
カイルは
「何も思い浮かばないし、もうハッキリと断ろうと思う。」
と言う。
グスタフが
「お前がそう決めたんなら誰も文句は無い。今から行くか?」
と言うとカイルは
「そうだな。どうせ断るなら早い方が良い。今から行こう。」
と言って皆で王城へ向かう。
王城へ入り、玉座の間へ行き、国王の前にでる。
国王は
「どうだ?カイルの記憶は戻ったか?」
と聞く。
カイルは
「それがまだ・・・・・・。それでお話があります。」
と言う。
国王が
「何だ?」
と聞くとカイルは
「姫様との結婚のお話でが、申し訳ありませんがお断りさせて頂きます。」
と話す。
国王は
「何っ!?理由は何だ!?」
と聞くとカイルは
「まだ冒険者としてやりたいこともありますし・・・・・・兎に角、お断りさせて頂きます。」
と答える。国王は激怒し
「フラロシアの気持ちはどうなる!?わしの立場もある!わしの顔に泥を塗る気か!?」
と怒鳴る。
国王は怒りに震えながら
「娘の結婚を断られたなど国民に対しての国王の面子が丸潰れだ・・・・・・。こうなれば無理にでも結婚してもらう・・・・・・。」
と呟くと
「警備兵!こやつらを捕らえろ!!」
と命令する。
カイルは
「ヤバい!逃げろ!」
と言って逃げ出す。
カイルがグスタフに
「殺すなよ!」
と言うとグスタフは
「分かってるよ!」
と言って退路を塞ぐ警備兵を殴り倒す。
グスタフが道を開き、それに皆が続く。
必死に走って王城を出て人目に付かない王都内の外れにある林に逃げ込む。
カイルが
「一先ず巻いた様だな。」
と言う。
皆が一息ついた時、一瞬にして辺りが真っ暗になったかに見えた。
しかし、それは何もない空間への転移だった。
皆が何事かと戸惑っていると一人の男が現れる。
「よう!久しぶりだな。」
と声をかけてくるが誰も知らない男である。一人を除いては・・・・・・。
(あれは・・・・・・!大分痩せているが元の世界の俺だ・・・・・・!)
とカイルが思う。
「まぁ他のやつには分かんねえよな。俺とこの体の元の持ち主、佐藤和夫は中身が入れ替わってんだよ。」
という言葉を聞いてエレオノーラだけが疑問が解けていち早く理解する。
(そうか!記憶を失っただけで人の本質がそこまで変わるわけないと思っていたが、中身と言うか精神と言うかが別人と入れ替わっていたんなら当然の結果だ。)
「話がややこしくなりそうだから、先ずは元の身体に戻らせてもらおう。」
と言うとカイルと佐藤和夫の身体が光に包まれ、お互いの身体を光が行き来する。
光が消えると和夫は自分の手を見て
「元に戻った・・・・・・。」
と呟く。
カイルの方も自分の手足を見ながら
「やっぱり自分の身体の方が良いわ。」
と言う。
プルムが
「じゃあ、魔王を倒した後のカイルさんが記憶を失ってたっていうのも・・・・・・。」
と言うと和夫が
「すまん・・・・・・。転移者だとバレると色々と面倒だったんで、記憶を失った振りをしてたんだ。」
エレオノーラが
「一体どういうことなのか説明してくれ。」
と言うとカイルは
「ああ。順番に話していってやるよ。魔王城に行く前にグスタフには言ったよな。『すげえアイテムを手に入れたって』。」
と言う。
グスタフは
「ああ、覚えてる。」
と返す。
カイルは
「あれがこれだ。」
と言って右手を見せる。その中指には赤い宝石の付いた指輪がはめられている。
「転移の指輪だ。これを使うと異世界の人間と入れ替わることができる。」
エレオノーラが
「それを使って、その佐藤和夫という男と入れ替わったって訳か。」
と言うとカイルは
「そうだ。こちらは指輪の持ち主である為、任意のタイミングで転移が可能だ。ただ相手を選ぶことはできない。そのタイミングで目を瞑っている事と、大きな絶望を抱えていることが条件らしい。転移の術式を見られない様にするためと、一方的な理由で転移させれるわけだから、せめて絶望から救ってやろうという事だそうだ。」
和夫は
(そうだ。あの時まさに人を轢きそうになって絶望していた。事故の加害者という立場から救われたんだ。その為に俺が選ばれたという事か・・・・・・。)
と思った。
レティシアが
「しかし何でわざわざそんな事を?」
と聞く。
カイルは
「魔王を倒したらやらなきゃならない事があったろ?」
と返す。
プルムが
「まさか、姫との結婚!?」
と言うとカイルは
「そうだ。どうしてもあいつとの結婚を避けたかった。しかし断れば王の反感を買うのを分かっていた。王に取り入って王の座を狙っていた俺は、それは避けたかった。だから指輪の力で転移し、身代わりを結婚させることにした。どうせ我が儘放題に育った娘だ、長続きせずに姫の方から離婚を申し出るだろうから、そうしたら戻って、王に上手い事言って養子にでもしてもらうつもりだった。もし結婚が長続きするようなら王が死ぬ頃に戻って実権を握る計画だった。まさか一番の愚策を取られるとは思わなかったがな。」
エレオノーラは
「そんなに都合よく戻ってこれるのか?」
と問う。
カイルは
「こちらは指輪の持ち主だからな。指輪の精霊に、身代わりと姫の関係に変化があったら知らせる様に言ってある。戻るタイミングもこちらの意思一つだ。姫との婚約が破棄されたという知らせが入ったんで戻ってくることにしたんだ。」
と答える。
そこで和夫が疑問を口にする。
「言語の記憶が残ってたのは何でだ!?」
カイルは
「何処までを入れ替えるかは指輪の持ち主であるこちらが決められる。精神だけを移すのか、記憶も持っていくのか、スキルは・・・・・・、魔法は・・・・・・、兎に角、身体とそれに付随するステータス・・・・・・すなわち、腕力や敏捷性、HP等は入れ替えられないが以外は全て入れ替えることができる。だから一応全部持っていく事にしたんだが、言語の記憶を持っていくと俺の方も転移先の言葉が分からず苦労しそうだと思ったから言語の記憶についてはそのままにしておいたんだ。こうやってコミュニケーションが取れているところも見ると、お前もこちらの世界の言葉は一通り覚えたようだな。」
と返す。
和夫は
「そうか・・・・・・。やっぱり言語の記憶が残っていたのは意図があっての事だったのか・・・・・・。」
と呟く。
カイルは
「お前の世界も楽しかったぜ!強姦、強盗、殺人・・・・・・何でもやり放題だったからな!」
とにやけた顔で言う。
和夫が
「何っ!?」
と叫ぶとカイルは
「死後のなんて面倒臭え事はやめて、強盗で生計を立てて、気に入った女がいればレイプして、抵抗するやつは殺してやった。抵抗せずに受け入れたやつは生かしておいた。通報されても困らなかったからな。警察とやらも優秀だったが、魔法やスキルが使える俺を捕まえることはできないし、万が一に捕まったとしても、指輪の力で戻ってくれば罪をかぶるのはお前だからな。」
と話す。
和夫は
「な・・・・・・。」
と言葉に詰まる。
カイルは
「今お前は世界中で指名手配になってるぜ!人類史上まれにみる凶悪犯としてな!俺だから逃げ切れてたが、お前ならあっという間に捕まって間違いなく死刑だな!」
と言う。
更にカイルは続けて
「巻き込まれた他の連中は別として、俺とお前、ここから元の世界に帰れるのは生きている方一人だけだ!だからお前にはここで死んでもらう!どうせ元の世界に戻ったところで死刑になるのを待つだけなんだから、ここで楽に死んだ方が良いだろ。」
と言って和夫に向かって剣を振る。
和夫はかろうじて避けるが腹が切られて血が流れる。
和夫が
「お前の思い通りになんかさせるか・・・・・・。」
と言うとカイルは
「楽に死ぬのが嫌なら苦しんで死なせてやるよ!」
と言ってわざと浅く切り刻む。
和夫は体のあちこちから血を流しながら
「ぐあっ!」
と呻き声を上げて体勢を崩す。
カイルが
「とどめだ!」
と言って大きく剣を振りかぶるとレティシアがカイルを殴り飛ばす。
カイルは
「てめえ!何しやがる!」
と叫ぶとレティシアは和夫の方に歩いて行く。
和夫の傍まで行ったレティシアはカイルの方に振り返り
「お前の好きにはさせない・・・・・・。魔王を倒した後のお前の中身がこの男だって言うんなら、私が惹かれたのはこの和夫って男だ。お前がこの男を殺すって言うんなら私は全力で阻止するし、この男を守って死ねるなら本望だ!」
と言う。
それを聞いた和夫は
「レティシア・・・・・・ありがとう・・・・・・その気持ちだけで充分だ。」
と言う。
カイルが
「お前ら二人で俺を止められるでも思っているのか!?」
と言うとエレオノーラが
「二人じゃないぞ。」
と言いプルムが
「そうですよ。四人です。」
と言って和夫の方へ歩いて行く。
エレオノーラは
「そもそも私たち三人は、魔王を倒すという目的を果たしたらお前の寝首を搔いて殺すつもりだったんだ。」
と言う。
プルムも続けて
「そうです。普段は小間使い、戦闘中は魔法を使う道具かカイルさんの身を守る盾、夜は性欲処理のための慰み者・・・・・・。そんな生活はもう、うんざりなんです。」
と言う。
エレオノーラが
「私たちもレティシアと同じだ。この男と一緒に旅をして、この男の内面に惹かれていった。だから私たちもこの男に付く。」
と言うと和夫は
「エレオノーラ・・・・・・プルム・・・・・・ありがとう。」
と礼を言う。
「私も!」
と言ってドロシーが和夫の方へ歩き出す。
「私が会ったカイルがこの男だって言うんなら、私もこっちに付く。」
とドロシーが言うと続いてクインが
「僕も同じです!今の僕があるのは和夫さんのおかげですから!」
と言って和夫の方へ行く。
クレアも
「私も!最初に憧れたのは本物のカイル様だったけど、好きになったのは一緒に冒険するようになってからだから!」
と言って和夫の方へ行く。
カイルは
「雑魚が集まったところで何も出来やしねえよ!なぁ、グスタフ!」
と言うがグスタフも和夫の方へ歩き出す。
カイルが
「グスタ・・・・・・フ?」
と言うとグスタフは
「悪いな。俺もあっちに付くわ。」
と返す。
カイルは
「てめえ!幼馴染だろうが!?」
と言うがグスタフは
「確かにそうだ。だから気付かなかったんだ。お互いに信用し合い、頼り合う、これこそが信頼で、そういう関係を築ける友こそ親友だという事に。俺はこの男との旅でその事に気付き、この男こそ親友と呼べる存在だと思った。だから俺もこの男に付く!」
ときっぱり言う。
カイルは怒りに震えながら
「どいつもこいつも・・・・・・。」
と言うと剣を構え
「まとめて始末してやる!スキル:刃の衝撃波!」
とスキルを発動、カイルが剣を横に振ると横一文字に衝撃波が飛び和夫たちを切りつける。
「ぐわっ!」
「きゃあ!」
和夫たち全員が大ダメージを受ける。
和夫は
「確かにカイル一人でも充分俺たちに勝ちそうだ・・・・・・。」
と言う。
グスタフは
「何か策は無いのか!?」
と聞くが和夫は
「策でどうにかなるような相手じゃなさそうだ。」
と言う。
レティシアは
「それじゃあ・・・・・・。」
と不安な顔を見せる。
それに対して和夫は
「策は無いがスキルがある!」
と言う。
プルムは
「そのスキルって・・・・・・リッジウェイさんの?」
と聞く。
和夫が
「そうだ。」
と答えるとエレオノーラが
「あれは役に立たないって言ってなかったか?」
と聞く。
和夫は
「そう。あの時は役に立たなかった。でも状況が変わった。」
と言うとニヤリと笑って
「最高に威力を発揮できる状況に!」
と言う。
そして和夫が右手を前に出し、
「俺が必ず勝つ!皆の命を預けてくれ!」
と言うとグスタフが
「おう!」
と言って右手を和夫の手に重ねる。
するとレティシアも
「分かった!私の命、預けよう!」
と言って右手を重ねる。
プルムとエレオノーラも
「分かりました!」
「分かった!頼むぞ!」
と言って右手を重ねる。
クレア、クイン、ドロシーも後に続く。
和夫は
「よし!スキル発動!逆転!」
と叫ぶ。
和夫たち全員を光が包む。
カイルは
「何だ?何が起きた!?」
と疑問を口にする。
和夫は
「俺のスキル、逆転が発動したんだ。」
と答える。
カイルは
「お前ごときがスキルだと!?」
と言う。
和夫が
「そう、これは俺が身に付けたわけではなく、ある錬金術師から授かったものだ。」
と言うとカイルは
「それが俺を倒せるほど強力なスキルだとでもいうのか?」
と聞く。
和夫は
「条件次第だ。そして今、最高の条件が揃ったんだ。」
と言う。
カイルが
「何ぃ?」
と言うと和夫は
「このスキルは相手との力の差を埋めるスキルだ。分かりやすくお前のレベルを百だと仮定しよう。すると俺のレベルは体感で精々三十くらいだ。どうだ?俺の見立ては間違ってるか?」
と聞く。
カイルは
「確かにそのくらいだろう。」
と答える。
和夫は
「だとすると、そこに七十の差があることになる。その七十を埋めるスキルだ。」
と言う。
カイルは
「じゃあ、今のお前は俺と同じくレベルが百になったという事か?しかしそれじゃ、戦闘経験、戦闘スキル、魔法など全ての戦力を考えればお前に勝ち目はないぞ!」
と言うが和夫は
「このスキルにはもう一つ、効果がある。それは“自分に命を預けてくれる仲間”一人につき、埋めた差の二十パーセント加算されるという効果だ!」
と言う。
カイルは
「俺のレベルを百とした時、あいつのレベルが三十、その差が七十、その差を埋めてあいつのレベルも百に・・・・・・。その上で、差の七十の二十パーセントは十四、それが七人で九十八、それが百に上乗せされるという事は・・・・・・あいつのレベルは百九十八!?約二百で俺のほぼ倍・・・・・・!?まさか・・・・・・そんな事が・・・・・・。ありえない!!」
と驚愕する。
和夫が
「クレア、剣を貸してくれ。」
と言うとクレアは
「分かりました。」
と言ってドラゴンキラーを和夫に渡す。
和夫はカイルに突進、剣で切りかかる。
カイルはそれを剣で受ける。
「なんて思い攻撃だ!?」
と驚くカイル。
和夫は連続で攻撃を繰り出す。
キンッ!キンッ!キンッ!と剣同士がぶつかる音が響く。
カイルは和夫の攻撃を全て剣で防いでいるが
「なんて早くて重い攻撃だ!」
と防戦一方で反撃できない上に押されていく。
和夫は
「戦力差も仲間も立場も全て逆転したんだ。もうお前に勝ち目はない、諦めろ。」
と言う。
カイルは
(このままじゃマズい・・・・・・。)
と後ろに大きく飛んで距離を取ると
「こいつで決めてやる!スキル:神の斬撃!」
と、カイルがスキルを発動する。
しかし、和夫はそれを剣で掻き消す。
カイルが
「ば、バカな・・・・・・。」
と驚いていると和夫は
「これだけレベル差があると相手のスキルを見極めて同じことができるようになるんだな。」
と言って
「スキル:神の斬撃!」
と剣を振るとスキルが発動、斬撃がカイルを襲う。
カイルは
剣で受け止めるが剣が折れ、斬撃が直撃する。
「そんな・・・・・・バカな・・・・・・。」
と言って息絶える。
和夫は
「終わった・・・・・・。」
と言うと全身から力が抜ける。
すると何処からともなく声が聞こえる。
「佐藤和夫・・・・・・。カイル・スタンフォードの死により、カイル・スタンフォードとしてこの地に残るか、佐藤和夫として元の世界に帰るかの選択権が貴方に移りました。」
それを聞いて和夫は
「もう心は決まっている。」
と言う。
「では、貴方の望み通りにしましょう。」
と声が聞こえる。
グスタフが
「和夫!」
と声をかけると続いてレティシアも
「和夫!こっちへ来るんだろ?」
と声をかける。他のメンバーたちも和夫に声をかける。
和夫が
「すまない・・・・・・みんな・・・・・・。」
と言うと周囲全体が光に包まれる。




