-第22話 商人発見-
カイルが持ち場に向かい、ノトスの町を一人で見て回るエレオノーラ。
(今回の作戦で賢者の石が見つかればいいが、これで見つからないともう本当に八方塞がりだな・・・・・・。)
とエレオノーラが考え事をしながら歩いていると通行人とぶつかってしまう。
エレオノーラは咄嗟に、
「すみません。考え事をしていたもので・・・・・・。」
と謝って、相手を見ると貴族のようだった。
(貴族か・・・・・・。同胞たちを性奴隷にしている輩の仲間か・・・・・・。厄介な奴にぶつかっちまった・・・・・・。)
とエレオノーラが思っていると貴族は
「こちらこそ申し訳ない。大丈夫ですかな?お嬢さん。いや、エルフの方の様だからお嬢さんと言う年齢ではないかな?」
と以外にも低姿勢に謝ってくる。
エレオノーラは罵声を浴びせられるもんだと思っていたので戸惑いながらも
「いえ、こちらは大丈夫です。そちらこそ大丈夫ですか?」
と聞く。
貴族は
「私は大丈夫。貴方に怪我が無くて良かった。」
と答える。
エレオノーラは
「貴方は貴族なのに私がエルフと分かっても蔑んだりされないのですね。」
と言う。
貴族は
「人の本質と言うのは種族などには表れないものだ。昨日出会った少年もまだ若いのに良い目をしていた。貴方にも同じものを感じる。」
と答える。
エレオノーラは
「目でそんなに分かるもんですか?」
と聞く。
貴族は
「目で色々なことが分かるが、もちろん目だけではない。貴女はぶつかった時に私の方が悪いのかもしれないのに先ず謝った。そして『そちらこそ大丈夫ですか?』と私への気遣いを見せた。これらを考えあわせれば貴女の人柄が分かるというもの。」
と言うと貴族は続けて話す。
「私はランドルフ・レイモンド。現レイモンド侯爵家の当主でしてな。私の趣味はアイテムの収集でな。色々なアイテムを目利きしてきた。それと同時に、今まで国王の傍で色々な人を見てきた。王に絶対の忠誠を誓う者、うわべではおべっかを使って王に取り入りながら反感を抱いている者、寝首を搔こうと虎視眈々と狙っている者、色々です。アイテムも人も同じ。その価値の本質は見た目では分からない部分にある。だから私はアイテムを見る時も人を見る時も見た目や年齢、種族など関係なしにその本質を見極めるように心掛けている。人の本質は上辺をどれだけ取り繕っても変わる事は無い。貴女の本質はエルフかどうかなどと言う些細なことではなくその精神性の高さにあると思う。」
それを聞いてエレオノーラは
「いや、私はその様な事は・・・・・・。買いかぶり過ぎですよ。」
と返す。
ランドルフは
「いやいや謙遜されずとも・・・・・・いや、違うな・・・・・・自分では気付いていないと言った方が正しいか。ま、精神性の高い人間ほどそういうものだ。逆に精神性の低い人間ほど自己正当化するものだ。」
と話す。
エレオノーラは
「ところで、どうして王都の侯爵様が、この様な王都から遠い町に?何かご公務ですか?」
と疑問を口にする。
ランドルフは
「実は、恥ずかしい話なんだが娘が行方不明で心配して探しに来たんだ。」
と答える。
エレオノーラは
「娘さんが!?」
と驚く。
ランドルフは
「昨日、ノンブリルの町にアイテムの買い付けに行ったんだが、それに娘が付いて来て、そのまま『南の海峡が見たい』と言うので数人の供を連れてこの町に来させたんだ。本来ならそのままゴルフォ村に行って海峡を見て昨日のうちにノンブリルの町に帰ってくるはずだったんだが、帰ってこなかったんでゴルフォ村に使いをやって調べたんだが、どうやらゴルフォ村に行く前に行方不明になってしまったようなんだ。それで心配になって探しに来て、考え事をして注意力散漫になっていて貴女とぶつかってしまったというわけだ。」
と答える。
エレオノーラは
「分かりました。そういう事でしたら、今、私の仲間がノンブリルの町、カリッサ村、コスタ村に散ってます。ゴルフォ村に行ってなくてここにもいないなら、そのどこかにいる可能性は十分にあると思うので何か情報が掴めたらお知らせします。」
と提案する。
ランドルフは
「ありがとう。やはり貴女は私の見立て通り優しい方の様だ。私は公務で今日中には王都に帰らなければならない。娘は心配だが侯爵ともあろうものが公務を疎かにはできないので、何か掴めたら私の屋敷まで知らせてくれると有難い。」
と答える。
エレオノーラは
「分かりました。何か情報があったら必ずお知らせします。お嬢さんの無事を祈ってます。」
と言ってランドルフと別れた。
エレオノーラが賢者の石を持つ党言う行商人とランドルフの娘の情報を集めようと町中を歩いていると三十歳と十歳くらいの母娘が五人の男に因縁をつけられてるのを見つける。
エレオノーラが近づいて
「おい!大の男が大勢で何やってるんだ!?」
と言うと五人の男が一斉にエレオノーラを見る。
男のうちの一人が
「良い女だと思ったらエルフじゃねえか。エルフなら人権無えから手足の腱を切って散々凌辱した後殺しても問題ねえな!」
と言ってナイフで突いてくる。
エレオノーラは軽く躱すと腰のアイテムバッグから鞭を取り出し打ち付ける。
鞭が当たったところが切れて流血する。
男は
「くそっ!やりやがったな!てめえら、やっちまえ!」
と他の男たちをけしかける。
エレオノーラは男たちの攻撃を巧みに躱し鞭で反撃する。
男たちは手傷を負いながらも引こうとしない。
(子供の前でこいつらを殺すわけにはいかないな。トラウマになるかもしれん。)
と思い、エレオノーラは
「仕方ない。帯電!」
と呪文を唱えると鞭が電気を帯びる。
電気で威力を増した鞭を数発喰らわせると流石に男たちは逃げだした。
エレオノーラは
(こいつら放っておくとまたこの母娘に近づきかねないな・・・・・・。)
「位置追跡!」
と呪文を唱えるとエレオノーラの掌から発した魔方陣の光が男たちの内の一人の背中に張り付き消える。
(これであいつらの所在はいつでも確認できる。)
と思っていると母娘が声をかけてくる。
「助かりました。ありがとうございます。」
エレオノーラは
「何があったのか詳しく聞かせてもらえませんか?お力になれるかもしれない。」
と問う。
母親は
「五年前に夫に先立たれてから母娘二人で何とか生活してたんですが、そんな時、あいつらがやって来て投資話を持ってきたんです。ゴルフォ村に観光施設を造ると。会員制のプライベートビートと会員制の高級宿泊施設を造って一大リゾートにるんだと言ってました。用地は買収済みであとは宿泊施設を建てるだけの状態で、そこで投資すればリゾート施設利益の数パーセントを毎月受け取れると。それで少しでも生活が楽になればと思い夫が残してくれた全財産を投資してしまったんです。ところが蓋を開けてみると、用地の買収どころか、そんな計画自体無かったんです・・・・・・。途方に暮れているときにまたあいつらがやって来てお詫びに生活を立て直すためにお金を貸すと言ってきたんです。断っても無理矢理に不要なお金まで貸し付けて来て利息が膨らんで返せない金額に・・・・・・。それで私たち二人を娼館に売ろうとしてるんです・・・・・・。他にも被害にあった人が複数いて、自ら命を絶ってしまった人、娼館に売られてしまった人・・・・・・。私たちももうどうすればいいか・・・・・・。」
と言って泣き出してしまう。
娘の方も
「お母さん・・・・・・。」
と言って泣きそうな顔に。
エレオノーラは見ていられなくなり金貨を二枚差し出すと
「これを使って下さい。」
と言う。
母親は
「見ず知らずの方からそんな・・・・・・。」
と遠慮する。
エレオノーラが
「これは施しではありません。これは私の投資です。」
と言うと母親は
「どういうことです?」
と聞く。
エレオノーラは娘の方を見て
「お嬢ちゃんが大人になって立派になったら二倍にして返してくれ。」
と言って頭をなでる。
娘は
「はい!」
と元気のいい返事をする。
母親が
「でもこの子が大きくなるまでと言ってもまだ十年以上も先の事になるかと・・・・・・。」
と言うとエレオノーラは
「私はハーフエルフ。寿命は二百年で今は五十二歳。娘さんが六十歳になる頃、私はまだ百歳ちょっと。その後もう百年くらいは生きるんだからその頃返してもらっても全然遅くないから大丈夫ですよ。」
と言う。
「ありがとうございます。それでも借金には足りませんので、私は娼館に行こうと思いますので娘を預かってはもらえませんでしょうか?不躾なお願いなのは分かっています。でも他に方法が無くて・・・・・・。」
と言う母親。
エレオノーラは
「もうあいつらは来ませんから借金なんて返さなくていいですよ。そもそもあいつらが仕組んだ悪事によるものなんだし。」
と言いながら
(位置追跡を仕込んでおいて正解だった。夜になったら人目の付かないところであいつら全員殺す!)
と思っていた。
母親がそれでも不安そうなのでエレオノーラは
「あいつらは私が懲らしめておくから大丈夫ですよ。」
と言う。
母親は
「でも、あいつらは、ゲルハルトとかいう大魔導士の手下なんですよ。そんなことして大丈夫ですか?」
と聞いてくる。
エレオノーラは
「ゲルハルト?」
と聞き返す。
母親は
「何でもこの町の東に砦を気付いて王国を造ろうとしているとか・・・・・・。照魔鏡とかいうのを使って魔物を使役できる能力を得たとかで、砦にも多数の魔物がいるらしいんです。そんな人と敵対したら・・・・・・。」
と心配そうに言う。
エレオノーラはそれを聞いて
「照魔鏡!?そのゲルハルトとかいう魔導士のフルネーム分かりますか!?」
と聞く。
母親は
「確か、元はこの町の住人で・・・・・・そう、モーリッツ!モーリッツ・ゲルハルトです!」
と答える。
エレオノーラは
(こんなとこにいやがったか、モーリッツ・・・・・・!)
と思い、母親に礼を言うとモーリッツ・ゲルハルトの情報を集めに行く。
そんな一方、朝ノトスの町を出たカイルは夕方近くまで暇を持て余していた。
ふと見るとノトスの町からコスタ村に向かって馬車が走っている。
カイルは声をかけながら近くへ行く。
カイルが
「もしかして行商人の方ですか?」
と聞く。すると
「そうだよ。あんたは?」
と聞き返す。
「私はカイル・スタンフォードという者で冒険者です。実はアイテムを探してまして、賢者の石とかお持ちじゃないですか?」
と聞くと行商人は
「ああ、持ってるよ。」
と答える。
カイルは
(やったぁ!)
と思いながら
「譲ってほしんですけどお幾らですか?」
と聞く。
行商人は
「金貨十枚だよ。」
と答える。
カイルは
(この辺はクインの見立て通りだな。)
と思いながら、
「分かりました。ではそれで。」
と言って金貨十枚渡して賢者の石を譲ってもらう。
行商人はそのまま去って行き、カイルも目的を果たしたのでノトスの町に戻る。
カイルは町に戻るとエレオノーラと合流する。
カイルは賢者の石を手に入れた事を伝え、エレオノーラも今日の出来事をカイルに伝える。
エレオノーラは
「カイルがその時間にここからコスタ村に向かう行商人にあったって事は、その前にここいたってことだよな・・・・・・。私がいながら本当に済まない。」
とノトスの町にいたはずの行商人を見つけられなかったことを謝る。
カイルは
「何を言ってるんだ!?目的の物は手に入ったし、お前は人助けしてたんだろ?だったら何よりじゃないか!これこそ役割分担だ。」
と言うと続けて
「俺たちの目的は俺たちにとっては大事なことだが世間には関係ないことだ。でもお前のした人助けは間違いなく世の中の為だ。俺はそんなお前が誇らしいよ!」
と言う。
エレオノーラが
「お前に付いて来て本当に良かったよ。私はこれからもお前に付いて行くからな!」
と言うとカイルは
「頼むぞ!頼りにしてるからな!」
と返す。
エレオノーラが
「よし!じゃあちょっと行ってくるから、お前は先に宿屋に戻っててくれ。」
と言うとカイルは
「何処に行くんだ?」
と聞く。
エレオノーラは
「言ったろ。善良な母娘を地獄に落とそうとした悪人を始末しに行くんだよ。」
と返す。
カイルは
「じゃあ俺も行く。」
と言う。
エレオノーラは
「これは私の仕事だ。」
と言うがカイルは
「お前の仕事は俺の仕事だ。」
と返す。
エレオノーラは
「私は一人で大丈夫だ。」
と言うがカイルは
「お前が一人で大丈夫でも、俺はお前と一緒が良いんだ!」
と言ってエレオノーラの手を引いて
「行こうぜ!一緒に!」
と言ってエレオノーラを引っ張る。
エレオノーラは顔緒赤らめながら引っ張られるまま少し付いて行くが
「カイル!カイル!」
とカイルに声をかけ止める。
カイルが
「どうした?まだ納得いかないのか?」
と聞くとエレオノーラは小声で
「そっちじゃない・・・・・・。」
と返す。
カイルは
「・・・・・・分かった。俺が付いて行くからお前が先導してくれ・・・・・・。」
と情けなさそうに言う。
エレオノーラが
「足手まといになるなよ。」
と言うとカイルが
「もうそんなに足手まといになってないだろ。」
と返す。
エレオノーラは
「そうだな。」
と返しながら
(私もレティシアのことは言えないな。私は自分の気持ちに正直でいられるレティシアに嫉妬してたのかもしれない。私もこの男に・・・・・・。)
と思っていた。
目的のアジトに着くとカイルがドアを蹴破って入る。
中には二十人ほどの男たちがいて酒盛りをしている。
「なんだてめえら!?」
「げっ!?昼間のエルフ!」
「やっちまえ!」
と襲い掛かってくる男たちをカイルは剣で倒していく。
エレオノーラも鞭で応戦。
男の一人が鞭で打たれながらも何とか鞭を掴んで言う。
「これでもう手も足も出まい!」
エレオノーラは
「私はこっちが本業なんだよ。」
「雷光電撃!」
男は雷に打たれ
「ぐあっ!」
と声を上げ絶命する。
あらかた片づけたところでカイルがエレオノーラの後ろに忍び寄る影を見つける。
「エレオノーラ!危ない!」
昼間の男がエレオノーラを後ろから刺そうとしていたのをカイルが身を挺して庇う。
カイルは刺されながらも剣を男に突き立て倒す。
残りを魔法で一掃したエレオノーラがカイルに肩を貸す。
「カイル!大丈夫か!?」
と聞くエレオノーラに対してカイルは
「大丈夫だ・・・・・・。」
と答える。
エレオノーラは
「あんまり大丈夫そうには見えないぞ。」
と言うと、カイルは
「死にはしないから大丈夫だ。」
と返す。
エレオノーラが
「また無茶しやがって・・・・・・。私だってあの程度じゃ死なないのに何で無理して庇うんだよ・・・・・・。」
と言うと、カイルは
「お前が刺されるところを見るくらいなら俺が刺された方がましだからだ。」
と答える。
エレオノーラは
「バカな男だ。」
と呆れながら言うが続けて
「お前のそういう生き方、嫌いじゃないぞ。」
と優しく微笑む。
(そう、これがカイルという男の本質・・・・・・。じゃあ以前のカイルの本質は・・・・・・?記憶を失ったってだけで人の本質がそんなに変わるのか?あの貴族の言葉『人の本質は上辺をどれだけ取り繕っても変わる事は無い。』あれは確かにその通りだと思う。だとしたら・・・・・・?)
と考えながらカイルに肩を貸して宿に戻るエレオノーラ。
夜が明けて、カイルとエレオノーラは馬車でノトスの町を出てコスタ村に向かう。
コスタ村でグスタフとプルムと合流。カイルはプルムに昨晩の傷を治療してもらう。
グスタフはカイルにレティシアとクレアは一足先にノンブリルの町に戻ってることを伝え、コスタ村から最短ルートでノンブリルの町に戻る。
ノンブリルの町に着くと、宿屋の主人に頼んで広い部屋を貸してもらい、そこに全員集まる。
カイルが
「行商人を見つけて賢者の石を手に入れた!これで残るアイテムは一つだ。これについてはエレオノーラから報告してもらう。」
と言う。
エレオノーラは
「私がノトスの町で手に入れた情報によると、モーリッツなる人物は、モーリッツ・ゲルハルト。ミスから大魔導士を名乗り、ノトスの町の東に砦を築いて王国を造ろうとしている。照魔鏡に自らが編み出した魔法をかけて、“照魔鏡に映った者が自分自身を見るとモーリッツ・ゲルハルトの下僕になってしまうとのことだ。それで多数の魔物を従えて砦を拡大するとともに防衛しているらしい。」
と伝える。
グスタフは
「モーリッツ・ゲルハルト・・・・・・。とんでもないやつみたいだな。」
と言う。
レティシアは
「どちらにしてもそんな暴挙を許すわけにはいかない。倒すしかないな。」
と言う。
プルムは
「そうですね。そうしなければ照魔鏡も手に入らないでしょうし。」
と言う。
カイルは
「じゃあ今後のの行動としては“モーリッツ・ゲルハルトを倒して照魔鏡を手に入れる”でいいな?」
と聞くと皆、了承する。
カイルは
「他に何か報告とかあるか?」
と聞くと待ってましたとばかりにクレアが
「はい!はい!」
と手を上げる。
カイルは
「どうした?クレア。」
と聞く。
クレアは、カリッサ村がグールの襲撃にあった事、それを一人で立ち向かった事、その際にスキルが使えるようになった事を嬉しそうに語る。
初耳だったカイルとエレオノーラは感心する。
グスタフとレティシアは、もう何度も聞いたとあきれ顔。
カイルが他にはないか聞くとレティシアが
「私はサナトスフォレストに向かうパーティーを止めてた。」
と言い詳細を話す。
カイルとグスタフが「Sランクパーティー?」
と言ってお互いに指を差すとその指をクインに向ける。
クインは
「多分、僕が前にいたパーティーです・・・・・・。リーダーのアシュトンはやたらパーティーのランクに拘ってましたから・・・・・・。」
と呆れる。
レティシアは
「しかもその内の一人が『師匠になって下さい!それがダメなら結婚して下さい!』だってよ。どんな究極の選択だよ!まったく・・・・・・。」
と言うと皆大笑い。
カイルが他にないか聞くとグスタフが
「プルム、報告しとけよ。」
と言うがプルムは
「いいですよ、特に重要なことじゃないし・・・・・・。」
と言うがグスタフがプルムの体験を面白おかしく語る。
皆は大笑いだがプルムは顔を赤くしてグスタフの腕をつねる。
カイルが他にないか聞くとグスタフが
「実はな・・・・・・。」
と言った後、ドアの方に向かって
「入っていいぞ!」
と言うとドアを開けて一人の女性が入ってくる。
カイルが
「こちらは?」
と聞くと女性本人が答える。
「私はクリスティーナ・レイモンド。現レイモンド侯爵家当主の娘です。」
と答える。
エレオノーラとクインの表情が変わる。
クインは、
「僕、一昨日、お父様のレイモンド侯爵にお会いしましたよ!」
と言い、詳細を話す。
クリスティーナは
「そうですか・・・・・・。父は『何か困ったことがあったら訪ねてこい』と言ったんですか・・・・・・。人に興味を示さない父がそんな事言うなんて、余ほどあなたに見どころがあったんでしょう。」
と言う。
エレオノーラそれに対し
「私は昨日お会いしたが、人に興味を示してない訳ではないと思う。」
と言って、詳細を話す。
そして最後に
「お父上は人に興味がないのではなく、人の言動から瞬時に人の本質を見抜いていて、達観して見ているのだろ思う。貴女に対してもそうだ。娘が心配でノトスの町まで探しに来て私にぶつかるくらい動揺していたんだ。貴女の事を大事に思ってる証拠だと思う。」
とエレオノーラ言うとクリスティーナは
「そうでしたか・・・・・・。」
と答える。
カイルがエレオノーラに
「レイモンド侯爵にクリスティーナがここにいるって伝えるんだろ?」
と聞く。
エレオノーラが
「ああ、明日の朝にでも伝達人に頼むつもりだ。」
と答えるとカイルは
「じゃあ、依頼完了後、俺たちが責任をもって送り届けるって伝えてくれ。」
と言う。
エレオノーラは
「ああ、分かった。」
と答える。
クリスティーナは
「それじゃあ皆さんにご迷惑が・・・・・・。」
と遠慮する。
カイルは
「何を言ってるんだ?クリスティーナはもうグスタフとクレアは友達なんだろ?じゃあもうここにいる皆、友達だよ!友達同士で迷惑とか遠慮とか無いから!」
と言う。
クリスティーナは目に涙を浮かべながら
「グスタフさんの言ってた通り、皆さん本当に優しくて温かい人なんですね。それじゃあ皆さん、私の事はクリスって呼んで下さいね!」
と笑顔で言う。
カイルは
「よし!今日は賢者の石を手に入れた事と新しい仲間が出来たお祝いだ!クレア!クイン!宿のご主人の所へ行って、金に糸目はつけないから飲み物も食べ物もじゃんじゃん持ってきてくれって頼んで来い!クリスはグスタフの隣に座って!」
その後、食べ物や飲み物が次々運ばれ深夜までの大宴会になった。
絡まれてた母娘
母 32歳 身長159cm 84-57-85 Cカップ
娘 11歳 身長146cm
モーリッツ・ゲルハルトの資金集めの為に手下の架空の投資話に騙された上に借金を負わされる不幸な母娘。
母親の夫は5年前に死去。




