-第20話 単独行動-
<未取得>
・賢者の石
大陸南部を中心に回っている行商人が持っていた
・照魔鏡
以前、マジーアの町に住んでいた“モーリッツ”という魔導士が持っていたが、数年前に町を出て消息不明
<取得済み>
・ドラゴンの牙
・光の護符
・緋の宝珠
・黄金の実
・破魔の短剣
・銀の聖杯
・ユニコーンの角
・魔除けの指輪
カイルが言う。
「残るアイテムは二つ。しかし現状これ以上の手がかりがない。そこで先ず、賢者の石を持っているという行商人を探そうと思う。」
レティシアが
「どうやって?」
と聞く。
カイルが
「先ず、このまま南部の町や村を回っても永遠に会えない可能性もある。」
と言うとグスタフが
「どういうことだ?」
と聞く。
カイルは
「例えばABCDの四か所を回るとしよう。」
遊撃隊 A→B→C→D
行商人 C→D→A→B
「と、この様に回っていたら永遠に会えない。どちらかがペースを早くしたり遅くしたりすればいずれは会えるだろうが時間がかかりすぎる可能性がある。」
そこまで聞いてエレオノーラが
「なるほど。言ってることは分かった。それでどうする?」
と聞くとカイルが
「同時にABCDにいれば会える可能性があるって事だ。」
と言う。
プルムは
「それぞれ分かれて同時にABCDにいる様にしようって事ですね。」
と言う。
遊撃隊1 A
遊撃隊2 B
遊撃隊3 C
遊撃隊4 D
行商人 C→D→A→B
「と、この様にすれば遊撃隊4が行商人がDに来た時にDで行商人と会えるわけだ。」
カイルは地図を出して
「先ず、最南端のゴルフォ村は除外だ。」
と言うとクレアが
「何でですか?」
と聞く。
カイルは
「ゴルフォ村は依頼者のいる村だ。行商人がそこへも定期的に通っているなら、依頼者本人が買っている可能性が高いからだ。法外な報酬を出せる依頼者だぞ。買えないわけがない。という事は行商人はゴルフォ村に行っている可能性はかなり低いってことだ。」
と言うとクインが
「確かにそうですね。」
と納得する。
カイルが
「移動の事も考えて、ノンブリルの町はクイン、カリッサ村はクレア、コスタ村はプルム、ノトスの町はエレオノーラ、ノンブリルとカリッサの間はレティシア、カリッサとコスタの間はグスタフ、コスタとノトスの間は俺が待機。今日出発して明日一日、朝から夕方まで持ち場で待機する。そうすれば行商人が何処にいても誰かしらが会えるだろう。」
と説明する。
クインを残して他のメンバーは馬車で出発。カリッサ村でレティシアとクレアを降ろし、コスタ村でグスタフとプルムを降ろし、カイルとエレオノーラはノトスの町まで行く。
それぞれそこで一泊し、翌日の朝にカイル、グスタフ、レティシアは持ち場へ移動、夕方日暮れ前迄そこで待機し日暮れまでにそれぞれ元の町や村に戻り一泊、さらに翌日、逆順で馬車でノンブリルの町に戻るという計画。
朝になり、クイン以外のメンバーは馬車で出発した。
クインはノンブリルの町に残り、町の中を見て回る。
歩いていると、ふと一件の魔道具屋に目が止まり、立ち寄ってみる。
(何か役に立ちそうなものは無いかな?)
と思い、鑑定スキルを使って見てみて
(値段の割に大した効果が無い物ばかりだな・・・・・・。)
と思っていた。
すると、みすぼらしい老人が近寄って来て店の主人に
「これを買い取ってほしんじゃが・・・・・・。」
と言って薄汚れた燭台を差し出す。
店主は
「それなら、銅貨三枚だね。」
とぶっきら棒に言う。
しかしクインが鑑定スキルを使って見ると銀無垢でアイテムとしての価値は金貨二枚。
老人が損をしそうになってるのを見かねたクインが
「それ、僕に売ってくれませんか?僕なら金貨一枚出しますよ。」
と言う。
老人が
「そうか?それなら・・・・・・。」
と言いかけると店主は
(何っ!?金貨だと?もしかして価値のあるものなのか?)
と思って慌てて
「いやいや、こちらは“金貨一枚と”銅貨三枚だよ。」
と言う。
クインは
「それなら僕は金貨二枚出しますよ。」
と言うが店主は
「この人は俺の店に売りに来たんだ!ガキが横から口出すな!」
と怒鳴りつける。
すると老人は
「まあまあ、それじゃあんたにはこっちを売ってやろう。これなら幾らで買うね?」
と言って金の燭台を出す。
こちらは磨かれていて綺麗な状態。
それを見て店主は
「これなら金貨三枚出そう。」
と言うので老人は金貨三枚で金の燭台を魔道具屋に、金貨二枚で銀の燭台をクインに売って去って行った。
入れ替わる様に今度は貴族がやってくる。
「いらっしゃいませ!」
と店主が声をかける。
貴族は
「少し見せてもらうぞ。」
と言って商品のいくつかを手に取ってみてみる。
商品を棚に戻すと貴族は言う。
「値段の割にガラクタばかりだな。魔道具屋なんて名乗るの止めて、偽物屋かガラクタ屋にでも変えたらどうだ。」
それを聞いた店主は
「あんた!貴族だからって言って良いことと悪いことがあるだろ!」
と怒鳴りつける。
それを意に介さず、貴族の横に控えていた執事らしき男が
「旦那様。」
と貴族に声をかけクインの方を見る。
貴族は
「お嬢ちゃん。私は王都から来た、ランドルフ・レイモンドという者だ。」
と言う。
クインは、
「僕は男です。名前はクイン・ヒースフィールドと言います。」
と返す。
レイモンドが
「それじゃ、ヒースフィールド君。」
と言うとクインは
「クインで良いです。レイモンドさんって侯爵家の方ですよね?」
と聞く。
レイモンドは
「良く知っているね。ところで、その燭台を少し見せてもらえないかね?」
と言う。
クインが
「どうぞ。」
と言って差し出すとレイモンドは 執事らしき男の方を見て
「チャールズ。」
と言うと執事らしき男がクインに
「私はチャールズ・バトラーと申しまして旦那様の執事でございます。失礼いたしますね。」
と言って燭台を受け取り磨き始める。
磨きあがった燭台を見てチャールズが
「これは銀無垢ですな。」
と言うとレイモンドは
「どれどれ・・・・・・。」
と手に取って見ながら
「これは良い品だ。」
と言う。
店主は
(このガキ、価値を見抜いて値段を吹っ掛けてきたな?も少し出して強引に買い取れば良かったか?)
と思っていた。
レイモンドがクインに
「もし良かったら、これを譲ってくれないか?」
と聞くと店主が
「それならこちらにもっと良い品がありますよ!」
と言って金の燭台を差し出す。
レイモンドが手に取って
「これは幾らだ?」
と聞くと店主は
「金貨五・・・・・・いや六枚になります!」
と言う。
それを聞いたレイモンドは金の燭台を店主に突き返し
「バカにしてるのか?こんな金メッキのガラクタにそんなに出せるか。」
と言うとクインは
「侯爵様は目利きができるんですね。」
と言う。
レイモンドは
「まぁ趣味が高じてね。君も出来るようだが?」
と聞くとクインは
「僕は鑑定士なので。」
と返す。
レイモンドはクインに
「そうか。鑑定士か。それで、その燭台の価値が分かったわけだ。ところで、その燭台、幾らなら譲ってくれる?」
と聞く。
クインは
「僕が買ったのは金貨二枚ですから金貨二枚で良いですよ。」
と返す。
レイモンドは
「それじゃ君の儲けが無いじゃないか。」
と返す。
クインは
「これを売りに来たご老人が安く買いたたかれそうなってたんで気の毒になって僕が買っただけで別に欲しかった訳でもないですし、良いですよ。」
と言う。
レイモンドが
「クインは優しいんだな。それじゃ遠慮なく金貨二枚で譲ってもらうことにしよう。上乗せしても構わないんだが、それじゃクインが施しを受けてるみたいで見下してる感じになるからね。」
と言って金貨二枚をクインに渡す。
レイモンドは
「それにしても君のような少年がどうしてそのような大金を持っているのかね?」
と聞く。
クインは
「僕は冒険者なんですが、ウチのパーティーは僕以外はみんな優秀なんでお金はあるんです。」
と答える。
レイモンドは
「クイン。鑑定士のスキルでは見極められない大事なものがあるのを知っているかな?」
とクインに聞く。
クインは
「人の本質・・・・・・ですか?」
と自信なさそうに答える。
レイモンドは
「そうだ。」
と答える。
クインは
「最初のパーティーのリーダーの本質は見極められませんでした。男らしくて格好いいって思ってましたけど、強引で自分勝手なだけでした・・・・・・。」
と答える。
レイモンドは
「今のパーティーはどうだ?」
と聞くとクインは
「今のパーティーは最高です!メンバー皆良い人ですし、特にリーダーは優しくて本当の意味で男らしくて格好いいです!」
と目を輝かせて自信満々に答える。
レイモンドは
「それは良かった。何か困ったことがあったら王都の私を訪ねてくるといい。君になら力を貸そう。」
と言って去って行く。
チャールズもクインに一礼して後に続く。
クインはその後ろ姿を見ながら思っていた。
(そう・・・・・・。人の本質・・・・・・。アシュトンの時は見極められなかった。あの強引さが男らしさに見えていた。でも違った。僕が男らしく見えていたのはアシュトンの強引で自分勝手な性格だった。でも今は違う!カイルさんの優しさ、仲間への信頼、自己犠牲の精神、あれこそが本当の男らしさだという事が分かったんだ!)
そしてクインは店主に向かって
「おじさん。目利きもできないんなら魔道具屋なんてやめた方が良いですよ。」
と言って去って行く。
カリッサ村ではレティシアが出発した後、クレアが一人で村の中を見て回っていた。
少し歩くと人だかりができていて、その中に見知った顔があった。
バンパイア・ロードの城へ行った際に城の事を詳しく話してくれたクレメント・ベナークだ。
クレアは駆け寄って行って
「クレメントさん!何かあったんですか?」
と聞いてみる。
クレメントは
「君は、カイル遊撃隊のとこの・・・・・・えーと・・・・・・?」
と言うとクレアは
「クレアです。」
と名乗る。
クレメントは
「そうそう、クレアさんだ!実は吸血鬼城からグール十数体がこちらに向かって接近しているらしいんだ。バンパイア・ロードがいなくなって抑える者が無くなって好き勝手に動き出してるんだと思う。」
と言う。
クレアは
「それじゃあ・・・・・・私たちのせいなんですね・・・・・・。」
と落ち込む。
クレメントは
「いや、そんな事は無いよ。あのまま放っておいたら益々力をつけて、バンパイア・ロード自身が統率の取れた軍勢を連れて攻めて来てた筈だ。一部の魔物が好き勝手に来てるだけなら随分ましだよ。」
と答える。
続けてクレメントは
「ところで、カイルさんたちは?」
と聞く。
クレアは
「今、別件があって個別で動いてるんです。」
と答える。
クレメントが
「そうか・・・・・・。それじゃあ一旦皆で逃げた方が良いかもな・・・・・・。村の住人だけじゃ撃退できるかどうか分からないし・・・・・・。」
と言うとクレアは
「大丈夫!私が戦います!」
と言う。
クレメントは
「しかし、クレアさん一人じゃ・・・・・・。」
と言うがクレアは
「私だってカイル遊撃隊の一員です!グールの十匹や二十匹、なんてことないですよ!」
と言うと村の北側へ歩いて行く。
(クレメントさんは私が気を使わない様にあんな事言ってくれたけど、これは私たちのせいなんだ。今ここにいるのは私だけ・・・・・・。私が責任を取らなきゃいけないんだ!)
と思いながらクレアはグールの方に歩いて行く。
グールはゆっくり歩きながら村に近づいてる。
クレアは
(グールはアンデッドだし、昼間は本領を発揮できないはず!私でもやれる!やってみせる!)
と決意を固める。
グールが村に入る前に片付けるつもりでグールに近づていくクレア。
先手を取る為に走って近づきグール一体の首を切り落とす。
「よし!先ず一体!」
直ぐに他のグールに向き直り心臓を剣で突き刺す。
剣を抜くとグールは倒れる。
「よし!二体目!」
その後続けて二体の首を落とすが後ろに回っていたグールに身体を掴まれる。
クレアは
(こんな時、カイル様なら・・・・・・そうだ!)
と閃き、皮鎧の留め具を外し、下から抜けると皮鎧を掴んだままのグールの首を切り落とす。
しかし別のグールに服を掴まれ破られて転んでしまう。
そこを更に別のグールがズボンを掴む。
クレアは必死でベルトを外しズボンを脱いで抜け出す。
下着姿になったクレアは一旦間合いを空けるために走って距離をとる。
クレアは
(この剣がもっと長かったらグールに掴まれない間合いで戦えるのに・・・・・・!)
と思いながら大きく剣を振りかぶって
「もーう!!」
と叫んで、やけくそに剣を振り下ろす。
すると少し離れた位置にいるグールが縦に真っ二つになる。
クレアは
「え?」
と驚いて剣を見ると刀身が光に包まれていてその光が刀身の三倍くらいの長さまで伸びている。
「これって、まさか・・・・・・!?」
とクレアが刀身から伸びている光をグールに当てるとグールが切断された。
「これって、刀身が伸びてるのと同じって事?」
と再び剣を振り光の部分を当てるとグールの首が落ちる。
(ひと切りする度にHPが減るのが分かる。これってスキルだ!)
(しかも刀身その物が伸びてるわけじゃないからいつも通りに振れる!)
と思ったクレアはグールの攻撃が届かない位置から切りまくる。
(HP、結構減ってるけど、このペースならHPが尽きる前にグール全部倒せる!)
と思いながら剣を振り続けるクレア。
しばらくして、クレアは息を切らせながら
「やった・・・・・・全部倒した・・・・・・。」
と言って、地面にへたり込む。
そこへ遠巻きに見ていたクレメントたちが駆け寄る。
クレアは情けないところを見せられないと立ち上がる。
クレメントが
「いやあ、流石ですよクレアさん!大人の男でも尻込みする敵を一人で全部倒してしまうんですから!本当にありがとうございます!」
と言うとクレアは足を開いて右手で剣を肩に担ぎ、左手を腰に当てて
「でしょ!私もカイル遊撃隊の一員ですからね!」
と自慢げに言う。
クレメントが
「とても十八歳の娘さんとは思えませんよ!」
と言うとクレアは
「でしょ!でしょ!もっと言って!」
と更に自慢げに賞賛を要求。
それに対しクレメントは
「・・・・・・その発育具合とか、下着姿でも堂々としている貫禄とか、十八歳の娘さんとは思えませんよ・・・・・・。」
と言う。
クレアは
「え?」
と自分が下着姿のままであることに気付き
「きゃああああああああ!」
と叫びながら走っていく。
ランドルフ・レイモンド
46歳 身長172cm
如何にも貴族という出で立ちと威厳。
ミストラル王国のレイモンド侯爵家の現当主。
妻と長男、長女、次男の三人の子供がいる。
アイテム収集が趣味でノンブリルの町にもアイテムの買い付けに来ている。
アイテムと人物の目利きが得意。
チャールズ・バトラー
52歳 身長176cm
レイモンド家の執事。
アイテムの目利きもできる。
執事としても有能。
魔道具屋の主人
43歳 身長166cm
魔道具屋の主人なのに目利きもできない無能な人物。
ランドルフには「魔道具屋なんて名乗るの止めて、偽物屋かガラクタ屋にでも変えたらどうだ。」と言われ、クインには「目利きもできないんなら魔道具屋なんてやめた方が良いですよ。」と言われる。




