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-第2話 王都入城-

 王都に入ったカイル遊撃隊一行。

見慣れない街の中を歩きながらカイルは考えを巡らせる。

(中は意外とにぎわってるな。人通りも多いし、色々な店が並んでいる。看板には見たこともない文字が並んでいるが、カイルの中に残っていた言語の記憶のお陰で全部読める。)

(文化レベル的には中世ヨーロッパって感じか。詳しくは知らんけど・・・・・・)

(はっ!これなら現代知識無双ってやつができるかも!?)

(っといっても、料理もできないし、そもそも車の運転以外はこれと言って知識も技術も持ってないし・・・・・・車を作れれば凄いことになりそうだが、整備をしていたから構造はなんとなく分かってても、部品一つ一つを作ることなんて出来ないし、燃料の問題もあるしな・・・・・・。)

(この文明レベルで実現できて俺の持ってる知識を活かせそうなもの・・・・・・パチンコ・・・・・・台が作れない・・・・・・トランプ・・・・・・カードが作れなそうだな。裏から見たら全く同じものを52枚も作れるとは思えない・・・・・・麻雀・・・・・・もトランプと同じ理由で牌も作れないし点数計算分かんないし、そもそもお手軽に普及させるにはルールが複雑すぎる・・・・・・囲碁はルールが分からないし、あとは将棋やチェス・・・・・・)

(そうだ!オセロなら簡単だしいけるかも!一応聞いてみよう。)

カイルは、そう思うとグスタフに聞いてみる。

「なあ、この世界にゲームみたいなものはあるのか?」

グスタフは怪訝な表情で返す。

「この世界?何か元々別世界の人間みたいな表現だな」

(ヤバッ!)

「いや、言葉のあやだよ」

カイルは焦って取り繕って改めて聞く。

「で、ゲームみたいなものはあるのか?」

それに対してグスタフは

「あるぞ。“挟み返し”とかな」

「挟み返し?」

と聞き返すと詳しく説明してくれた。

結局のところ、オセロの駒が四角い木の札で片面が赤く塗ってるだけで、“まんまオセロ”だった。

他にも将棋やチェスに似た戦騎という物もあるらしい。

(俺の知識や技術じゃ現代知識無双は無理か・・・・・・)

カイルがそんなことを考えながら歩いていると眼前に巨大な城が。 

 王都の中心にある王城の前に着くと、王都の入口と同じように大きな門扉に小さな扉の通用口、両脇に衛兵が立っている。

王都に入る時と同じ様にグスタフが伝えると衛兵の一人が先ず中に入り、中の警備兵に事情を伝える。

すると中の警備兵の一人が玉座の間まで案内するという。

玉座の間の前に着くと、先ず警備兵が中に入る。

「報告いたします!カイル遊撃隊、魔王討伐を果たし帰還いたしました!」

王は表情を明るくし、

「そうか!中へ通せ!」

「はっ!」

警備兵はカイル遊撃隊を中へ招き入れる。

グスタフが

「カイル遊撃隊、魔王を討伐し帰還いたしました。」

と報告すると王は

「よくぞ戻った。」

と言い、更に近くの衛兵に

「フラロシアを呼んで参れ」

と指示を出す。

(フラロシア?まさか姫様?)

と期待していると王が

「魔王討伐ご苦労であった。褒美は後ほど用意しておくので後日取りに来るがよかろう」

と言い、それに対してグスタフが

「有りがたき幸せ。」

続けて

「ところで、もう一つ、ご報告したい儀があるのですが・・・・・・」

と言いかけたところで、後ろから呼びかけられる。

「カイル様!!」

(姫様!?)

と思って振り返ると、そこには豪華なドレスに身を包んだ女性が一人・・・・・・。

(何と言うか・・・・・・ブタゴリラ・・・・・・?)

(別に熊田薫っぽい訳じゃないんだが、何と言うか、強いてあだ名をつけるならブタゴリラ以外思いつかない・・・・・・)

(元々メタボな非モテのおっさんの俺が他人の外見をどうこう言うのは憚られるが、これは流石に・・・・・・)

などと思っているとブタゴリラに強烈なタックルを喰らい転倒する。

「うわっ」

ブタゴリラはしがみつきながら

「カイル様!カイル様、ご無事でよかった!」

どうやらタックルではなく抱きついてきただけの様だ。

重さに耐えながら

「ブタゴリラ姫、落ち着いて下さい。」

と言うと

「ブタゴリラ・・・・・・?」

と姫が疑問の表情を浮かべる。

カイルは慌てて

「い、いえ、何でもありません、フラロシア姫。」

と取り繕う。

すると姫は

「姫だなんて他人行儀な。妻になるんですから名前で呼び捨てで呼んで下さいまし。」

と言って更に力強く抱き締めてくる。

(他人行儀って、まだ他人だし、何なら一生他人でいたい)

とカイルが思っていると、その状況を見かねた王が呆れたように

「これこれ、フラロシア、いい加減になさい」

とたしなめると

「ごめんなさい!私としたことが・・・・・・」

と言いながらカイルの上からどいて立ち上がる。

そこでグスタフがもう一度

「内密で王様に報告したい儀がございます。」

と言うと王は

「何と!」

と言いながら少し思案して、

「では、こちらへ。」

と応接室らしき場所へ案内された。

王が衛兵を下がらせると、室内はカイル遊撃隊と王と姫だけに。

そこでグスタフが口を開く。

「実は魔王を倒した際に、カイルが記憶喪失になってしまいました。」

「何と!?」

「何ですって!?」

王も姫も驚愕の表情に変わる。

グスタフが状況を説明する。

「魔王を倒した直後、カイルが倒れて目を覚ました時には我々の事はおろか、この世界のありとあらゆることを忘れてしまっているようでした。」

「魔王が今わの際に呪いでも残していったのかとも考えましたが・・・・・・」

と言ってエレオノーラの方を見ると

「呪いや魔法の類なら私が見れば分かりますが、そうではない様で、原因は分かりません。」

とエレオノーラが報告する。

王は

「原因が分からいという事は治す方法も分からないという事か?」

と聞くとプルムが答える。

「呪いや魔法でないとすると回復系の魔法では治せません。」

王は落胆し

「そうか・・・・・・」

カイルが

「そういうわけで結婚の儀は無かったことに・・・・・・」

と言うと姫は

「カイル様の面倒は私が見ますからご心配なさらないで下さい!」

と言ってくる。

(いやいやいやいやいや、勘弁してくれ)

拒絶したいが何も思い浮かばないカイルが焦っているとグスタフが

「そこで一つ提案なのですが、ギルドで一仕事請け負って参りますので、結婚の儀についてはその後で・・・・・・ということで如何でしょう?」

「何っ!?」

と王が言うとすかさずグスタフが

「何も覚えていない状態で結婚と言われてもカイルも心の準備ができていないでしょうし、魔物との戦闘をきっかけに記憶を取り戻す可能性もあります。」

と説明すると王は

「うーん、確かにな・・・・・・。分かった。結婚の儀は一先ず、ギルドでの仕事を終えてから改めて考えよう」

と言う。

それに対して姫は

「お父様がそう仰るのでしたら・・・・・・」

と渋々納得する。

(ホッ。良かった。グスタフ、ナイス時間稼ぎ!)

「では我々はこれから食事をして、ギルドに行ってまいります。」

とグスタフが言い、王城を後にした。


 王城を出たところでグスタフに礼を言う。

「助かったよ、グスタフ。ありがとう。」

するとグスタフが

「お前は前から姫様との結婚は嫌がってたもんな!」

(やっぱりカイルも嫌だったんだ)

グスタフは笑いながら

「記憶を無くしても嫌だって言うんだからよっぽど嫌なんだな」

と言うので、

「お前ならどうする?」

と聞いてみると、少し考えて

「俺も勘弁だな」

と言うので、美的感覚はコチラの世界も同じようだ。

 

 町中を歩きながらグスタフが聞いてくる。

「カイルは何が食べたい?」

(何が食べたいと言われても何があるのかも分からないし・・・・・・焼き鮭と納豆が食べたいんだが無いだろうな・・・・・・)

「どんな食べ物があるのか分からないから任せるよ。」

と言うとグスタフは

「どんな食べ物があるのか忘れちまったのか!?」

と言ってくるので

「そうなんだ。覚えてないんだよ。」

(とは言うものの、全く分からないし、下手なことを言って異世界から来たのがばれても面倒だ。皆で食べるんだから、食べられないような物が出てくるわけじゃないし任せておいた方が無難だろう。)

「お前たちはどうだ?」

とグスタフは女性3人に聞いてみる。

するとレティシアは

「別にどこでも構わない」

プルムは

「私も」

エレオノーラは

「いつものとこで良いんじゃないの?」

とのこと。

それを受けてグスタフは

「じゃあ、いつものとこに行くか」

と言って歩き出す。

とにかく付いて行くしかないカイルは後を追う。

しばらく歩くと一軒の飲食店に着く。

(何だか日本の定食屋みたいな造りだな・・・・・・店名は・・・・・・“日の丸食堂”!?・・・・・・まさか・・・・・・偶然だよな・・・・・・。)

中へ入ると店主らしき人物が

「いらっしゃい」

と声をかけてくる。

昼食には遅く、夕食には早い中途半端な時間にもかかわらず結構混んでいる。

少人数で来てる人が多いのか運よく6人掛けのテーブルに着くことができた。

カイルはグスタフに

「メニューは任せるよ」

というと、グスタフは

「ここは何でも旨いから心配するな」

と言ってメニューを選び始める。

注文してしばらく経つと割と可愛い給仕さんが料理が運んでくる。

続いて店主らしき50代くらいの男性が注文とは別の料理を持ってきて

「カイル遊撃隊の皆さん、聞きましたよ!魔王討伐おめでとうございます!これ、サービスですので、どうぞ」

と言って料理を置くとグスタフが

「店長、いつも、すまねぇな!」

レティシアとプルムとエレオノーラは

「ありがとうございます。」

「いつもすみません。」

「そんなに気を使わないで下さい。」

と言う。

(いつもサービスしてくれてるんだ)

カイルも

「ありがとうございます。」

とお礼を言うと、店主は 

「今後もごひいきに。」

と言って店の奥に帰っていく。

さて、料理の方だが、どうやらクリームシチューっぽい何かだ。

食べてみると、やはりクリームシチューの様だ。

(この塊りは・・・・・・ジャガイモ!?やはりここは中世ヨーロッパではなくナーロッパだ。)

(そもそも、魔物とか魔王がいる時点で、中世ヨーロッパな訳ないか・・・・・・。)

(しかし、これは完全にクリームシチューだな。そして凄く旨い。)

とカイルが思っているとグスタフが聞いてくる。

「どうだ、旨いだろう?」

「ああ、凄く旨い。」

と返しながら

(何か懐かしい味がするな・・・・・・)

と思っていると、グスタフがこう続ける。

「ここの店長、料理人なんだが、何でも異世界から転移してきたらしい。」

「何っ!?」

カイルは思わず口に含んだシチューを吐き出しそうになりながら聞く。

「どういう事だ?」

それに対してグスタフが答える。

「このクリームシチューという料理はもちろん、中に入っているジャガイモも2年前には無かった。」

「ジャガイモに関しては“無かった”という表現は言い過ぎだが、少なくとも一般的な食材ではなかったんだ。」

「ここの店長が2年ほど前のある日、聞いたこともない言葉を話し始めたらしい。」

「それから少しづつこの世界の言葉を覚えて話を聞いてみたら、異世界から転移してきたというんだ。」

「それで、異世界の料理を作れるという事で、面白がった貴族が資金を援助してこの店を出させたんだ。」

「最初こそ材料や機材が揃わなくて苦戦したが、その時にジャガイモを食用に栽培して料理に使ったらそれが受けて、他の料理も評判になって繁盛店になったんだ。」

「しかも、その技術を独占せずに他の店にも広めていったから、二年でこの世界の食文化を三百年進化させたと言われてるんだぜ。」

カイルが焦って

「そ、そんな事が本当にあるのか?」

聞くと、グスタフは

「転移の話自体は胡散臭いが、でも実際に今まで見た事ない料理をいくつも生み出して二年で繁盛店にしちまったのは本当だ。もしかしたら天啓みたいなもので料理のアイディアを閃いてるのかもな。」

(異世界転移か・・・・・・。まさか!?俺が引いた彼が!?)

(・・・・・・いや、そんなわけないか。時系列的にも合わないし、そもそも彼はどう見ても学生で料理人ではなかったからな。)

(料理人か・・・・・・。そういや昔一時期、毎日の様に通ってた定食屋の大将、どうしてるかな・・・・・・?三年前に荷物の配送ルートが変わってから全然行けなくなってしまったが、あそこの料理も何食べても旨かったな。あまりにも通ってたもんだから、よくサービスで一品付けてくれてたな。懐かしいな・・・・・・でも、元の世界に戻れる当てもないし、もう食べれないのかな・・・・・・)

カイルがそんなことを考えてるとグスタフが

「どうだ?いつもの場所で食事して何か思い出したりしないか?」

と聞いてくるが思い出すも何も、知らないわけで

「いやぁ、何も・・・・・・。」

と言うとエレオノーラが

「あんたは、思い出して元に戻りたいと思う?」

と聞いてくる。

(これは、何か試されてるのか?思い出したいって言った方がいいのか?それとも他の答えを求めてるのか・・・・・・?)

(実際、戦闘になったら足手まといなるんだし、元に戻りたいって言った方が良いか)

と思い

「そりゃ、元に戻りたいさ」

とカイルが言うとエレオノーラが

「そりゃ、あんたはそうだろうね」

と冷たい表情になる。

レティシアとプルムも暗い表情になる。

(俺、また何かやっちゃいました・・・・・・?)

重苦しい雰囲気の中、食事が終わるとギルドへ向かう。

しばらく歩くとグスタフが

「お前はこの辺で待ってた方がいいかもな。」

と言う。

カイルが

「どうしてだ?」

と聞くと

「ギルドには受付嬢や冒険者の知り合いも多い。記憶が無い状態でギルドに行くと色々とややこしい事になるし、お前が今、戦えない事を知れば、恨みを買っている冒険者たちから何をされるか分からないぞ。」

とグスタフが言う。

(そんなに恨みを買ってるのか?)

と思いながらカイルは

「わ、分かった。」

と返すとグスタフは布を取り出して、

「これでも頭にかぶっておけ。」

と言ってカイルに渡し、ギルドの場所を指さして

「ギルドはあそこだから、何かあったら来てくれ。何もなければ、俺たちが戻ってくるまでこの辺で目立たない様にしててくれ」

と言って、他のメンバーと共にギルド向かう。

カイルは路地に置いてある大きな樽の陰に隠れるように立つ。

(夕暮れ時になって人通りは減ってきているがなるべく人に見つからない様にしておこう)

(それにしても、魔王を倒したのに恨みを買ってるってどういうことだ?魔王討伐を先に越されたって事で恨まれてるのか?)

などどカイルが考えながらしばらく経つと一人の通行人に見つかってしまう。

見ると、もみあげから顎までひげを生やした中年の偉丈夫が

「怪しいやつだな、こんなところで何をしている?」

と言いながらカイルに近づいていく。

カイルは

(ヤバい!)

と思いながら何もできないでいると、路地から引っ張り出される。

(どうしよう、逃げた方がいいか?)

とカイルが考えていると、ひげの男の後ろの方から声が聞こえる。

「お父さん、何してんの!?」

10代半ばか後半くらいの若い女の子が駆け寄ってくる。

「クレア、下がっていろ!怪しいやつがいたんだ!顔を見せろ!」

と言ってひげの男がカイルの頭の布を奪う。

すると、クレアと呼ばれた少女が

「カイル様?カイル様でしょ!?」

と言うとひげの男は

「何!?」

と驚く。

そこへタイミングよくグスタフたちが戻ってくる。

グスタフが

「何かあったのか?」

と聞くと、ひげの男が

「怪しい男がいたんで何をしてるのか、問い詰めようとしているところだ。」

と答えるとグスタフが

「俺たちはカイル遊撃隊。冒険者だ。そいつは俺たちの仲間のカイルだ。」

と言うと、クレアがカイルに抱き着いて、

「やっぱりカイル様だ!」

と言うと、振り向いて、ひげの男を睨みながら

「お父さん、カイル様に失礼なことしないで!」

と言う。

レティシアがクレアに

「お嬢ちゃん、カイルのこと知ってるの?」

と言うと、クレアは

「一年位前に皆さんが、私の住んでる村を襲った魔物を退治しに来てくれた時にカイル様が剣で魔物と戦ってるところを見て、かっこいいと思って憧れてたの!」

と言うと、ひげの男が続けて

「その時、私は村を離れてたんで、いなかったんですが、娘がカイル様の雄姿をずっと讃えていて、カイル様に憧れて自分も剣士になると言って、今、冒険者ギルドに登録に行くところなんです。知らずとは言え失礼しました。」

と言ってカイルに頭を下げる。

クレアは

「カイル様、あの時は村を救ってくれてありがとうございました!」

と言ってクレアもカイルに頭を下げる。

「いやあ、冒険者として当然のことをしただけなんで・・・・・・」

と、事情がよく分からないため当たり障りのない返答をするカイル。

グスタフは当時を思い出しながら

「一年位前っていうと・・・・・・ここから一番近くの“バロン村”か?」

と言うとひげの男は

「そうです!バロン村です!」

「私はバロン村で狩人をしてます、ブライアン・エリオット、こちらは娘のクレアです。」

と自己紹介をする。

するとグスタフが

「俺はグスタフ、こっちの黒髪がレティシア、小柄なのがプルム、ハーフエルフがエレオノーラだ。」

と自己紹介し、

「俺たちはこれから宿屋へ行くところなんだ。バロン村なら近いしまた合うこともあるだろう。」

と言うと、ブライアンたちは再度、お礼を言って、ギルドの方へ去っていった。

グスタフが

「俺たちも行こうぜ。」

と言って宿屋へ向かう。


 宿屋へ入ると主が

「カイル様、聞きましたよ!魔王討伐、おめでとうございます!」

と言って歓迎してくれる。

グスタフが

「2人部屋と3人部屋。」

と言うと主が鍵を出し、グスタフとレティシアがそれぞれ受け取る。

宿屋の造りも分からないカイルはグスタフに付いて2階へ上がると、いくつかの部屋が並んでおりカイルとグスタフは手前の部屋に、レティシア、プルム、エレオノーラの3人は奥の部屋へと入っていく。

カイルがグスタフにギルドで受けた内容を聞く。

「依頼の内容は、南方の老人に届け物をするだけだ。」

と言うグスタフに対しカイルは

「何か簡単そうな仕事だな」

と言うとグスタフは

「いや、そうでもないぜ。その老人が住む村というのが、ゴルフォ村と言って大陸南岸の村で徒歩なら2週間はかかる場所だ。しかもその届け物ってのが結構厄介で、手に入りにくいものばかりなんだ。」

それに対してカイルが

「結構大変そうだな。」

と言うとグスタフは

「その方が姫様の婚儀までの時間が稼げるだろ。その間に結婚を回避する対策を練れるってわけだ。」

と言う。

(確かに、時間がかかった方が色々対策できるか・・・・・・しかし、俺が足手まといになりそうだな・・・・・・)

とカイルは考える。

そしてカイルはもう一つ疑問に思ってたことをグスタフに聞いてみる。

「なあ、グスタフ。俺ってもしかしてレティシアたちに嫌われてないか?」

するとグスタフは

「まぁ、嫌ってるというか怒ってるというか・・・・・・」

と言葉を濁す。

(そうか、やっぱりな。あの三人、俺に対してあまり話しかけたり絡んで来ないし、時々微妙な表情を見せるし・・・・・・。)

(まぁ、最強の魔法剣聖が急に足手まといのお荷物になったんだから仕方ないか・・・・・・)

そこでカイルは

「なぁ、グスタフ。依頼の出発を遅らせて、俺に戦い方を教えてくれないか?」

「にわか仕込みじゃ意味ないのは分かってるが、少しでも戦えるようになりたいし、せめて自分の身くらいは自分で守れて、足手まといにならない様にしたいんだ!」

と提案する。

グスタフは一思案すると

「分かった。あまり時間は取れないが2日ほど遅らせよう。」

「ここじゃ目立つから、北に半日ほどのところにあるサントールの町へ行こう。明日の朝、出発すれば昼くらいには着くから、明日の午後と明後日の午前に訓練して明後日の夕方に帰ってくることにしよう。レティシアたちには、俺たちの故郷のミスト村へ行ってくるって言っておこう。それでどうだ?」

と提案し、それに対しカイルは

「すまない、ありがとう。」

と了承の旨を返す。

グスタフは

「早速、レティシアたちに知らせてくる。」

と言って部屋を出ていく。

(元のカイルの記憶と言うか精神と言うか魂みたいなものはどうなったんだろう?俺が上書きしたのか、それとも他の世界に行ってるのか?轢いた方の少年はどうなったんだろう?無事だといいな。)

(元居た世界の佐藤和夫はどうなってるんだろう?轢かれた側じゃなくて轢いた側だから死んだってことはないだろうけど・・・・・・。)

(だとすると、すぐにでも元の世界に戻るかもしれないし、場合によってはまた違う世界に転移することも考えられるから、戦い方を教えてもらって特訓したところで無駄になるかもしれない。それでもこれ以上足手まといにはなりたくないし、できることはやっておくか。)

(佐藤和夫としての人生に未練はないが、カイルとしてやっていく自身もない。)

(分からないことだらけだが、俺が考えても何も分からないし、とにかく今はカイルとしてやっていくしかない。)

カイルがそんなことを考えてると、しばらくしてグスタフが戻ってくる。

グスタフが言うには

「カイルが戦い方を忘れて特訓するっていうのを他人に知られないようにするのに念の為、俺とカイルの故郷の村に魔王討伐の報告ついでに記憶が戻るきっかけになるかもしれないから、ちょっと顔出しに行ってくると伝えたんだがやつらが難色を示してな。説得するのに時間がかかっちまった。」

とのことだった。

カイルが

「手間かけてすまない」

と言うとグスタフは

「気にすんなよ。幼馴染じゃないか。それより、明日に備えて今日はもう寝ようぜ。」

と言うので二人は明かりを消してそのまま眠りについた。

挿絵(By みてみん)

カイル・スタンフォード

26歳 175cm

銀髪にクール系なイケメン。細マッチョな体つきながら力もある。しかし性格は一言で言うなら「自己中な鬼畜」。

非常に自己中心的な考えで、自分以外はパーティーメンバーでさえ「利用できる駒」とか思っていない。

職業は魔法剣聖。魔法も使える剣士の魔法剣士系の最上級職。

現在の武器は聖剣エクスカリバー。

パーティー名に自分の名前を入れるほど自己顕示欲が強い。

佐藤和夫が転移してからはカイルの意識は何処へ行ったのか不明。

所持スキル:神の斬撃ディバインスラッシュ


アーノルド2世・ハイランド

56歳 176cm

ミストラル王国の現国王。建国の王、ミストラード1世から数えて9代目。妻である王妃には15年前に病気で先立たれいる。

娘のフラロシアを溺愛している。


フラロシア・ハイランド

20歳 160cm 98-89-102 Dカップ

ミストラル王国の現国王の一人娘。ブタとゴリラを掛け合わせた様な容姿をしている。

助走をつけての抱き着きがタックルかと思うほどの攻撃力。本気で食らわせればゴブリンくらいなら一撃で倒せるかも。

父である国王の言う事は一応聞くが、国王の溺愛により非常に我が儘に育っている。

カイルの事を見初めて一途に思っている。


ジェフリー・ロジャーズ

52歳 食堂の店主。

日の丸食堂を営んでいるが実は二年前に異世界から転移してきた転移者らしい。

中世ヨーロッパと同じくジャガイモが食用として一般的ではなかった作中世界にジャガイモを広めてナーロッパにした立役者。ジャガイモを流通させる際に国毎に数字が違って取引しづらいという事でジャガイモの流通に乗せてアラビア数字も世界中に広めている。

元の世界の知識を生かして色々な料理を作るが独り占めすることなくレシピを広く伝えて二年の間に食文化を三百年進化させたと言われている。

ただの食堂の店主でありながら世界に多大な影響をもたらした人物。


ブライアン・エリオット

48歳 176cm

王都の隣りにあるバロン村の住人。職業は狩人。冒険者ではない。獲ってきた獲物の肉や毛皮をバロン村や王都で売って生計を立てている。

もみあげから顎までひげを生やしている。

奥さんは病で自宅で臥せっている。

奥さんと娘のクレアと三人で暮らしている。

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