-第15話 巨竜討伐-
ドラゴン討伐の為にドラゴンの住む岩山を上るカイル、グスタフ、レティシア、プルム、エレオノーラ。
レティシアが口を開く。
「クレアたち、大丈夫かな?二人で残してきて。」
グスタフが言う。
「大丈夫だろ。この辺一帯はドラゴンの縄張りだ。人も魔物も近づかねぇよ。それより一緒に連れて行く方が危険だ。ドラゴンの攻撃で吹っ飛ばされただけで岩山から転落死だ。」
それを聞いてレティシアも
「そうだよな。」
と納得する。
それから少し上ったところで四つ足に翼の生えた魔物が飛んでくる。
カイルが
「あれは!?ドラゴン!?」
と言うとエレオノーラが
「いや、あれはグリフォンだな。」
と言う。
よく見ると鷲の後ろにライオンの胴体と後ろ足がついているような外見をしている。
グスタフが
「これだけドラゴンの巣に近くなると、ドラゴンの餌にはなり得ないだけの強い魔物しかいないってことだな。」
と言うとレティシアが
「雑魚なら、こんなところにいたらあっという間にドラゴンの餌だもんな。」
と言う。
プルムは
「とにかく、倒さない事には先に進めませんから倒してしまいましょう。」
と言う。
カイルは
「飛んでる間はどうにもできないな。攻撃してくる瞬間を狙ってカウンター攻撃するしかないな。」
と言うがグスタフは
「任せろ!」
「スキル:トマホークブーメラン!」
と巨大な戦斧を投げつける。
回転しながらグリフォンに向かって飛んでいくがグリフォンは素早く躱す。
「ありゃ?躱された。」
とグスタフが言うとレティシアが
「スキル:百歩神拳!」
と言って拳を突き出すと遠くにいる筈のグリフォンに攻撃が当たり、グリフォンが怯む。
「よし!当たった!今回は私の勝ちだな!」
とレティシアが言うとエレオノーラが
「競争じゃないぞ!雷攻撃!」
と呪文を唱える。
雷による攻撃がグリフォンを捉える。
カイルが
(俺も遠距離に対する攻撃方法が欲しいな・・・・・・。)
と思いながら
「俺も剣でも投げてみるかな。」
と言うとグスタフが
「止めとけよ、山のふもとまで剣を拾いに行く羽目になるぞ。」
と忠告する。カイルは
「そうだよな・・・・・・。」
と悔しそうにする。
そんな様子を遠巻きに岩陰から見守るクレアとクイン。
クレアはクインに
「あの魔物、強いの?」
と聞くとクインは鑑定する。
「あえはグリフォン。特殊攻撃こそ持っていませんが、攻撃力、防御力、敏捷性は高く、ランクで言うならAランクの強い魔物です。」
と鑑定結果を伝える。
クレアは
「そんな強い魔物を相手にあんなに余裕なんて・・・・・・やっぱりカイル遊撃隊って凄い。」
と感心する。
一方、グリフォンは攻撃に転じ、カイルに向かって突っ込んでいく。
カイルが
(よし!カウンター攻撃のチャンスだ!)
と思った瞬間、
「天罰!」
とプルムが呪文を唱え、光の玉がグリフォンに直撃する。
グリフォンは山肌へ落ちピクリとも動かない。
プルムは
「とどめは私ですよ!」
と自慢気に言うとエレオノーラは
「プルムまで・・・・・・。」
と呆れる。
グスタフが
「お前は回復のためにMP温存しとけよ!」
と言うがプルムは
「グスタフさんだってさっき言ってたじゃないですか。ドラゴンの餌になり得ない魔物しかいないって。そんなに数がいないなら大丈夫ですよ!」
と返す。
グスタフは
「まあ、そうだな・・・・・・。」
と反論できない。
レティシアは
「この調子でドラゴンも一気に倒そう!」
と一行は登山を再開する。
しばらく上ると少し開けた平地に出る。
そこには一つ目の巨人が座っていた。
巨人はカイルたちに気が付くと立ち上がる。
人の二倍くらいの身長に筋肉質な身体。
巨大な棍棒を持っている。
グスタフが
「サイクロプスか。こいつじゃ流石のドラゴンも餌にはできないな。」
と言うと、一行は臨戦態勢に入る。
それを遠巻きに見ているクレアはクインに鑑定を頼む。
鑑定結果を聞いてグリフォン以上の強敵だと分かると
「よし、今のうちに先回りするよ!」
とクインに言ってカイル達に気付かれない様に遠回りしながら岩山を上っていく。
サイクロプスはパーティーに向かって棍棒を振る。
すかさずグスタフが前に出て戦斧で受け止める。
「ぐっ!流石に強えな!みんな気をつけろよ!」
とグスタフが皆に注意を促す。
プルムはパーティー全体とメンバー各個に防御力アップの呪文を唱える。
カイルはエレオノーラに
「エレオノーラ!眠らせれるか?」
と聞くとエレオノーラは
「睡眠!」
と呪文を唱える。
するとサイクロプスは片膝をつき眠り始める。
カイルは
「同時に行くぞ!」
と声をかける。
グスタフとレティシアは
「おう!」
「分かった!」
と返事をし、グスタフは正面から、レティシアは左から、カイルは右後方から同時に攻撃を仕掛ける。
三人の攻撃が同時にサイクロプスを捉えるがそのダメージのせいか、サイクロプスは目を覚ます。
グスタフが
「もう目が覚めやがった!」
と言うと三人は少し距離をとる。
サイクロプスは頭上に棍棒を掲げ地面に振り下ろす。
衝撃波が前方の地面を一直線に砕いて行く。
プルムとエレオノーラは足元が崩れて転倒させられる。
更にサイクロプスは右手に握った棍棒を右後方に持っていき、左に薙ぎ払おうとする。
サイクロプスから見て右、パーティーから見て左にいるレティシアが先ず、ジャンプで攻撃をかわす。
正面でグスタフがその攻撃を戦斧で受け止める。
そこで攻撃が来なくなった右後方にいたカイルがサイクロプスをエクスカリバーで切りつける。
と、同時に動きが止まったサイクロプスの右腕をレティシアがドラゴンクローで切りつける。
サイクロプスは棍棒を落とし、膝をつく。
グスタフはその隙を見逃さず、ジャンプしてサイクロプスの頭を戦斧で真っ二つに。
サイクロプスは前のめりに倒れて息絶える。
カイルは
「グスタフ!大丈夫か!?」
と声をかける。
グスタフは
「ああ、大丈夫だ。」
と返す。
プルムとエレオノーラも怪我は無い様だ。
カイルは
「頂上まではもう少しだ。行こう。」
と言って一行は上り始める。
その頃、クレアとクインは頂上にたどり着いた。
ドラゴンが住みやすくするために均したであろう平らな頂上の中央にドラゴンが眠っていた。
クレアは
(あれがドラゴン・・・・・・思ったより強そう・・・・・・。でも眠ってる今なら・・・・・・。)
と思い、クインにサポート魔法をかける様に頼む。
クインはクレアに攻撃力アップ、防御力アップ、敏捷性アップの魔法をかける。
クレアは
「今のうちに一気に倒す!」
と言って駆け出す。
もう少しで剣の間合いに入るというところでドラゴンが目を覚ます。
ドラゴンはクレアの方に顔を向けると咆哮を上げる。
クレアは恐ろしさのあまり怯んでしまって動けなくなり先制攻撃の機会を逃す。
ドラゴンはゆっくりと立ち上がる。
気合を入れなおしてドラゴンに接近し必死に剣を振るがドラゴンには当たらない。
クレアは
「どうして当たらないの!?当たれば大ダメージなのに!!」
と叫びながら連続で攻撃を繰り出すが、ドラゴンは飛び退いて躱したり前肢で防いだりしして巧みにダメージを回避する。
そこへカイルたちが到着する。
カイルが
「あれがグレートドラゴンか・・・・・・。誰か先に戦ってるな。・・・・・・って、あれクレアとクインじゃないか!?」
と言うとグスタフが
「そうだな。クレアとクインだな。」
と返す。
カイル一行は援護しようと急いで近づいて行く。
ドラゴンはクレアとクインだけなら余裕で勝てると踏んで退屈しのぎに遊んでいたが、カイルたちが来た事で、遊んでる場合じゃなくなったと、真剣な目つきに変わる。
クレアは
「カイル様!い、今、私が倒しますから見ててくださいね!」
というが、本気になったドラゴンの前肢による反撃に合い吹き飛ばされる。
カイルは
「クレア!」
と叫び駆け寄ろうとする。
しかしドラゴンもとどめの追撃をしようとクレアに近づく。
カイルは
(ダメだ!間に合わない!)
と思い、ドラゴンの気を引くためにエクスカリバーをドラゴンに向かって投げるとドラゴンの胸部に突き刺さる。
ドラゴンは一瞬動きを止めてカイルの方を見るが直ぐにクレアの方に向かう。
グスタフは
「くそ!やっぱ、ドラゴンは頭良いな。確実に各個撃破していくつもりだ!」
と言う。
ドラゴンはクレアに向かって前肢を振り下ろす。
「クレアさん!」
クレアにドラゴンの攻撃が当たる前にクインがクレアに覆いかぶさってクレアを守る。
「ぐわっ!」
クインにドラゴンの攻撃が直撃する。
そこへ駆けつけたカイルたちが一斉に攻撃をしてドラゴンを下がらせる。
「クレア!クイン!」
とカイルが声をかける。
「カイル様・・・・・・。」
「カイルさん・・・・・・。」
と二人は弱々しく返す。
まだ息はある。
カイルはこれ以上被害を大きくしない為に
「プルム、こっちはまだ何とか大丈夫だ!先に皆にサポート魔法を!」
と言う。
プルムは
「分かりました!」
と言ってパーティー全体に防御力アップ、前衛各個に攻撃力アップと防御力アップ、敏捷性アップの魔法をかける。
グスタフとレティシアは連携してドラゴンのHPを削る。
エレオノーラは攻撃魔法をドラゴンの翼に攻撃を集中してくらわせて飛翔能力を失わせる。
しかし、攻撃力はもちろん、HPも防御力も最強クラスのドラゴンをなかなか倒しきれない。
そこへドラゴンの口からファイアーブレス。
皆、防御するが大ダメージを受けてしまう。
レティシアが
「やっぱり強いな・・・・・・。」
と言う。
グスタフは
「プルム、先ずはお前自身の治療をして、その後、皆の治療をしてくれ。」
と言う。
プルムは
「分かりました・・・・・・。」
と言って
「完全治癒」
と呪文を唱え、先ずは自分自身を治療して、それぞれに完全治癒をかける。
グスタフはレティシアに
「後ろ足を左右から攻撃するぞ!」
と言ってグスタフとレティシアはドラゴンの後肢を横から攻撃する。
確かにドラゴンの後肢は前肢ほど自由が利かないので攻撃を躱しづらい。
グスタフは
「これでブレスでまとめて攻撃することもできないだろう!」
と言って戦斧で切りつける。
しかし、その瞬間、
「ぐわっ!」
と言ってグスタフが吹っ飛ばされる。
ドラゴンテイル(尾)の一撃だ。
グスタフがレティシアに
「尻尾の攻撃に・・・・・・!」
と言ってる間にもうドラゴンテイルは逆側のレティシアを吹っ飛ばしていた。
グスタフ、レティシアをプルムとエレオノーラの近くに吹っ飛ばしたドラゴンは再び口からファイアーブレスを吐く。
すかさずプルムが魔法障壁で防ぐ。
グスタフが
「流石、グレートドラゴン。並みのドラゴンより全然強えな。」
と言うとレティシアが
「感心してる場合じゃないぞ。何か策は無いのか?」
と聞く。
グスタフは
「頭脳労働は俺の担当じゃねえよ。エレオノーラ、何かないか?」
とエレオノーラに振る。
エレオノーラも
「グレートドラゴンには弱点と言えるものもないし、策でどうにかなるとも思えないな。」
と弱気の発言。
プルムは
「とにかく回復しながら削っていくしか無いんじゃないでしょうか・・・・・・?」
と言う。
皆が苦戦する状況を見てカイルが
「くそっ!戦力が足りないか・・・・・・。しかし、さっき剣を投げちまったからなぁ・・・・・・。」
と言うとクレアがか細い声で
「カイル様・・・・・・。私の剣を・・・・・・ドラゴンキラー・・・・・・ドラゴンに大ダメージ・・・・・・。」
と語りかけてくる。
カイルは
「分かった。ありがとう。今ドラゴンを倒してくるからそれまで休んでろ。」
と言ってクレアの剣を取る。
カイルは
「グスタフ、レティシア!左右から援護してくれ!」
と叫んでドラゴンに突っ込む。
グスタフとレティシアは左右からドラゴンに猛攻を加えドラゴンの気を引く。
ドラゴンは左右の攻撃で手一杯になり中央のカイルに対応できない。
その隙にカイルがドラゴンスレイヤーをドラゴンに突き刺す。
すると剣が光ってドラゴンに大ダメージを与える。
更にカイルは突き刺した剣に体重をかけて下へ切り裂く。
それによってドラゴンにも更に大ダメージを与える。
かなりのダメージを追ったドラゴンが怯むと、カイルは剣を引き抜いて更に連続で切りつける。
ドラゴンは腹と頭を地面につけて動かなくなる。
カイルは
「やった・・・・・・倒した・・・・・・。」
と言ってクレアとクインの元へ。
クレアはカイルに
「カイル様・・・・・・。ごめんなさい・・・・・・。私たちも役に立つって思ってもらいたくて・・・・・・。」
と言う。
クインも
「僕も・・・・・・迷惑かけてすみません・・・・・・。」
と言う。
それを聞いたカイルは
「クイン・・・・・・身を挺してクレアを守ってくれてありがとうな。男らしいぞ。」
「クレア・・・・・・お前の剣、役に立ったよ。お前がいなきゃドラゴン倒せてなかったかもな。」
と声をかける。
それを聞いた二人の表情が笑顔に変わる。
プルムが治癒の魔法で二人を理療している間、グスタフ、レティシア、エレオノーラはドラゴンの身体から牙、角、爪、鱗等、素材を集める。
治療と素材集めの終わった一行は岩山を降りていく。
ふもとまで来たところで、グスタフが
「お前ら、今後はあんまり無茶するなよ。」
続けてレティシアが
「そうだぞ。私たちが着くのがもうちょっと遅かったら二人とも死んでたんだからな。」
と言うと二人は
「ごめんなさい。」
「すみませんでした。」
と素直に謝る。
カイルが
「まぁまぁ。二人とも生きて帰って来れたんだし、身を挺してクレアを守ったクインは男らしくてカッコ良かったぞ!クレアの持ってたドラゴンスレイヤーも役に立ったし。ありがとうな!」
と言うと二人は照れる。
エレオノーラが
「カイル、甘いな。命が掛かってるんだ。無暗に褒めない方が良いぞ。」
と言うとカイルは
「はは、そうだな・・・・・・。」
と苦笑い。
プルムが
「さ、荷物を馬車に積んで帰りましょ!」
と言うが、カイルが
「あれ?馬車は?」
グスタフが
「この木に繋いだよな?」
レティシアが
「ロープは結んであるぞ?」
プルムが
「でも途中で刃物で切られてますね。」
エレオノーラが
「と、いうことは・・・・・・。」
全員で
「盗まれた!!!!!?」
と声を合わせる。
慌てて全員で周りを見渡すが人っ子一人見当たらない。
カイルは怒りで震えながら
「クレア!クイン!」
と叫ぶと二人は気を付けの姿勢で
「はい!」
と返事をする。
カイルは
「俺はお前たちに『馬車を見張ってろ』って言ってここに残して行ったよな?」
と凄んで言うと二人は
「はい・・・・・・。」
と返す。
カイルは
「じゃあ、何で馬車が無いんだ?」
と聞く。
二人は
「さ、さあ・・・・・・?」
と答える。
カイルは大声で
「お前ら二人!ノンブリルの町で情報集めて来い!!」
と叫ぶと二人は
「はい!!」
と言ってノンブリルの町のある北北西の方向へ走って行く。
カイルは周りを見渡して
「この辺はドラゴンの縄張りでほとんど人通りは無いって言ってたよな。車輪の跡も残ってないってことは消しながら進んでったって事だ。たまたま見つけてって訳じゃなさそうだ。」
と言うと続けて
「俺とエレオノーラはこっちを探す。レティシアとプルムは向こうを頼む。グスタフはここにいてくれ。犯人が戻ってくるかもしれないし、クレアとクインが何か手掛かりを持ってくるかもしれない。ついでに荷物番も頼む。」
と言って、カイルとエレオノーラは北東へ、レティシアとプルムは西北西へ向かう。




