-第11話 人喰森林-
ヴィエラ村で全員合流したカイル遊撃隊の一行は、村を出て西南西のノンブリルの町で、いつも通り食事をしながら打ち合わせをしていた。
「レティシアが得た情報を加えるとこうなる。」
と言ってエレオノーラがアイテムの一覧を出す。
・ドラゴンの牙
南の岩山にグレートドラゴン
・光の護符
・緋の宝珠
・黄金の実
サナトスフォレスト、別名“人喰いの森”の奥に一本だけ黄金の実をつけるリンゴの木があるらしい
・破魔の短剣
ノンブリルの町の北西にある地下迷宮の最奥にあるらしい
・賢者の石
大陸南部を中心に回っている行商人が持っていた
・銀の聖杯
・ユニコーンの角
・魔除けの指輪
・照魔鏡
以前、マジーアの町に住んでいた“モーリッツ”という魔導士が持っていたが、数年前に町を出て消息不明
それを見てカイルが問う。
「一番近いのはどこだ?」
それに対してプルムが答える。
「ドラゴンの牙、破魔の短剣、黄金の実はそれほど距離は変わらないですね。」
またカイルが問う。
「確実性が高いのは?」
エレオノーラが答える。
「ドラゴンの牙か黄金の実だな。」
更にカイルが問う。
「難易度が低いのは?」
グスタフが答える。
「何とも言えないが、ドラゴンよりは黄金の実の方が低そうだな。」
続いてレティシアが
「確かにドラゴンの牙より黄金の実の方が難易度は低そうだ。」
と同調する。
「じゃあ、黄金の実から行こう!」
とカイルが言うと、皆、了承する。
荷馬車を宿屋に預け、ノンブリルの町の南南西にあるサナトスフォレストに向かう。
森に入ると早速コボルトの群れに遭遇。犬のような頭をした小型の人型の魔物だ。
グスタフは
「八匹か・・・・・・この程度ならエレオノーラとプルムの出番は無いな。」
と言うとコボルトの群れに突進、戦斧で左から右へ一閃、二匹をなぎ倒し、すかさず斧を返し右から袈裟切りに一匹を倒す。
それと同時にレティシアが右のドラゴンクローをコボルトの胸へ突き刺し、それを抜くと同時に左のクローを別のコボルトに突き刺す。それを抜くとまた別のコボルトの前へ突っ込み左右のクローで切り裂く。
残りのコボルトはカイルとクレアが一匹ずつ、剣で倒す。
それを見てグスタフが
「だいぶ戦えるようになってきたじゃないか、カイル。」
と言うと、カイルは
「まぁ、何とかな。」
と答える。
更に奥へ進んでいると、大きな二足歩行のキノコの魔物が二体、木の陰から現れる。
「マイコニドか。」
とグスタフが言った途端、マイコニドは緑色の胞子を飛ばす。
レティシアが
「毒だ!!」
と叫び、グスタフとレティシアはそれぞれ左右に飛び、プルムとエレオノーラは後ろへ飛び退く。
反応の遅れたカイルとクレアが毒を喰らう。
カイルとクレアは片膝をつきまともに動けない。
マイコニドの後方へ素早く回ったグスタフとレティシアがそれぞれマイコニドを一撃で倒す。
グスタフがカイルの方へ歩きながら
「大丈夫か?」
と問うとカイルは
「すまん、やっぱりまだまだだな。情けない・・・・・・。」
と落ち込む。
そこへプルムが
「今、解毒しますね。」
と言いながら寄って来て、カイルに手をかざし
「解毒」
と呪文を唱えるとカイルの体内から毒素が消える。
プルムは同じ要領でクレアも解毒する。
「ありがとうございます、プルムさん。」
と言ってクレアが立ち上がる。
更に奥へ進んでいくと金色のリンゴの形をした実が生っている木が複数見える。
「あれが黄金の実か・・・・・・。結構な数があるな。念の為、一人一つずつ持っていくか。」
とカイルが言う。
それに対してエレオノーラが
「そうだな。余ったら売れば幾らかにはなるだろうし、これだけあれば五個や六個持って行っても影響ないだろう。」
と言うと、皆納得して一人一つずつ、金色の実をもぎ取った。
一行が帰ろうとすると大蛇・バジリスクと大蜘蛛・ヒュージスパイダーがそれぞれ数匹、道を塞いでいた。更に周りの木が女性の姿に変わる両腕の肘から先は枝、膝から下は木の幹と根になっていて、枝で攻撃すると同時に根で足を引っかけて体勢を崩そうとしてくる。
レティシアが
「これはまずい!」
と言うとグスタフが
「エレオノーラ!貫通力のある炎系魔法で地面を焼き払いながら逃走経路を確保してくれ!殿は俺がやる!」
と言う。
エレオノーラは
「分かった!」
と言って
「貫通焼夷弾!」
と呪文を唱える。
強大な火の玉が地面を焼き払いながら一直線に飛んでいく。
グスタフが
「これで足を取られないだろう!皆、走れ!」
と叫ぶと、エレオノーラを先頭に火の玉の後を全速力で追っていく。
森を出た所で、皆、息を切らしていた。
「何とか逃げ切れたな。」
とカイルが言うとレティシアが
「かなりの数だったからな。あのまま戦ってたらちょっとヤバかったかも。」
と言う。
グスタフが
「まぁ、お目当ての物は手に入れたし良いんじゃないか。」
と言うとエレオノーラが
「そうだな。」
と言い、プルムは
「何にしても皆、無事で良かったです。」
と安堵する。
しかし、皆が安堵する一方でクレアだけが恐怖とも驚愕とも言えない表情でいる。
レティシアが
「どうした、クレア?」
と聞くとクレアは
「これを見てください。」
と言って手を差し出す。その手の上には萎びた果実の様な物が乗っている。
皆、慌ててアイテムバッグから黄金の実を取り出してみる。
皆の表情が驚愕に変わる。
全員の黄金の実が全部萎びているのだ。
カイルが
「何だ、これ?どうしてこうなった?」
と途方に暮れているとエレオノーラが
「もしかしたら森から出たらダメなんじゃないのか?」
と言う。
それに対してグスタフが
「だとしたら、この状態でも森の外では“黄金の実”としての価値や効果があるんじゃないか?」
と言う。
プルムが
「一先ず町へ戻って道具屋に行ってみましょう。」
と言うと、皆納得してノンブリルの町の道具屋へ向かう。
道具屋へ着くとカイルが道具屋の主人に
「ご主人、ちょっとこれを見てもらえますか?」
と言って萎びた実を差し出す。
すると道具屋の主人は
「これは黄金の実の偽物ですね。」
と言う。
カイルは偽物を持ってきたと思われるのは心外だと言わんばかりに
「これは我々がサナトスフォレストから持ってきた正真正銘の本物ですよ!」
と言うと、道具屋の主人は
「あなた方が人喰いの森から取ってきたんですか。凄いですね。」
とちょっと驚きながら言うが、続けて残念そうに言う。
「でもこれは偽物なんですよ。」
カイルが
「どういう事ですか?」
と聞くと道具屋の主人が説明する。
「サナトスフォレストは人間を栄養分にして繁栄してるようなんです。最初は森に迷い込んだ人だけを襲っていたようなんですが、黄金の実の噂が広まると、それを手に入れようとする人が大勢、森に入り森の栄養分になっていったんです。森自体が意思を持っている様で、さらに多くの人間をおびき寄せようと、複数の黄金の実に似た実を付けるようになっていったんです。」
それを聞いてカイルは萎びた実を見つめながら
「そうだったのか・・・・・・。」
と落ち込むが、気を取り直して道具屋の主人に
「それで、本物と偽物を見分ける方法は無いんですか?」
と聞くと
「森から出ても変化がないのが本物、萎びてしまうのが偽物っていうくらいしか・・・・・・。鑑定士でも連れて行けば現地で判別できると思いますけど、偽物の数が多いらしいですし、複数の魔物と戦闘になるらしいですから、そんな状況で見極められるかどうか・・・・・・。」
との返答。
それを聞いた一同は冒険者ギルドへ相談しに行くことに。
ギルドへ入るとカイルはギルドの受付嬢に話しかける。
「黄金の実が欲しいんですけど本物と偽物を瞬時に見分ける方法とか無いですかね?このギルドならサナトスフォレストから近いし、色々と情報があるんじゃないですか?」
と聞くと、受付嬢は
「黄金の実ですか・・・・・・。黄金の実が欲しいという方は大勢いらっしゃいますし、その為に他の町からいらっしゃる冒険者の方も多いんですが、そもそも、サナトスフォレストに入ったら生きて帰って来ることすら難しいので、黄金の実を手に入れるなんてほとんど不可能に近いですよ。諦めて帰られた方が良いと思いますよ。」
と呆れ顔。
それに対してカイルは
「いや、黄金の実は持ち帰ったんですけど、森から出たとたんに萎びてしまって・・・・・・。だから本物と偽物の見分けがつけば本物を持ち帰ることもできると思うんですよ。」
と言って萎びた実を見せる。
受付嬢は驚いて
「ええっ!?それを持ち帰ってきたんですか!?私も話で聞いただけで実物を見た事は無いんですが、ここ数十年、偽物すら持ち帰った人はいないんですよ!?」
と言う。
カイルは
「見分ける方法じゃなくても、何か本物を持ち帰るための情報無いですかね?」
と聞くが受付嬢は
「残念ながら役に立ちそうな情報はこちらのギルドでも無いんです。」
と申し訳なさそうに言う。
カイルは
「そうですか・・・・・・。」
と残念そうに言うと後ろの方から声が聞こえてくる。
「お前は追放だ!」
「そんな!?どうして急に・・・・・・。」
見ると短髪長身の男が小柄なショートカットの子をパーティーから追放しようとしている様だ。
長身の男が言う。
「どうしてだと?そんなのお前が役立たずだからにきまってるじゃねえか!そもそも鑑定士なんて内には必要ねえんだよ!」
それを聞いたかるが反応する。
(鑑定士・・・・・・。・・・・・・鑑定士!?)
「君!鑑定士なのか?」
とカイルが声をかけると長身の男が
「何だ、てめえ!」
とカイルに突っかかる。
カイルは
「あんたら、このお嬢ちゃんを追放するんだろ?だったらウチのパーティーに勧誘したって問題無いだろ?」
と言うが長身の男は
「まだ話の途中で、本人も納得していない以上、俺たちのパーティー、“フェンリルの牙”の一員だ。まぁ金貨百枚積むなら移籍を考えてやってもいいぜ。」
と言ってくる。
カイルは
「お嬢ちゃん、ウチのパーティーに来ないか?鑑定士としての君の力が必要なんだ!」
と言うと
「あの・・・・・・お言葉は嬉しいんですが・・・・・・僕、男なんです・・・・・・。」
との返答。
カイルは慌てて
「すまん、すまん。あんまり可愛い顔してるから女の子かと思った。で、了承してくれないかな?」
と言うとショートカットの少年は
「まぁ、役立たずと言われて追放されるパーティーより、必要としてくれるパーティーの方が良いですけど・・・・・・。」
と答える。
カイルはすかさず、
「ほら、了承したぞ!これで彼はウチのパーティーメンバーだ。」
と言うが長身の男は
「てめえ!勝手な事させねえぞ!こうなりゃ力ずくで止めてやるよ!」
と言う。
カイルが
「追放するんじゃなかったのか?」
と聞くと
「自分がいらないものでも他の奴に欲しいって言われると、ただでくれてやるのが嫌になるんだよ!」
と言ってくる。
カイルが
「それなら力ずくで良いぜ!」
と言うと長身の男が
「よし!言ったな!どんな目にあっても文句は言わせないぜ!俺たちはAランクパーティー
だからな!」
と臨戦態勢に入る。
それを聞いてカイルは
「Aランク?なんだそりゃ?グスタフ、ちょっとこっちに来てくれ!」
とグスタフを呼ぶ。
グスタフが
「どうした?」
と近寄ってくると長身の男の表情が恐怖に変わる。
それはそうだ。スキンヘッドの褐色肌で筋骨隆々の大柄な男が巨大な戦斧を担いでいるのだ。
グスタフは
「ここじゃ皆に迷惑がかかる。外へ出て広い場所で思いっきりやろうぜ!」
と余裕の笑みを浮かべる。
長身の男も恐怖を抑えて負けじと凄む。
「お、俺たちはAランクパーティーだぜ。並みの冒険者には負けねえぜ。」
それに対してグスタフが返す。
「Aランクパーティーってのがどのくらいすげえのか分からねえが、俺たちは世界で唯一、魔王を倒したパーティーだぜ。カイル遊撃隊って知ってるか?」
それを聞いて長身の男の表情が驚愕に変わり
「まさか、あんたがカイルか?」
と聞くとグスタフは
「俺はグスタフ。カイルはお前さんがけんか売ってた男の方だよ。カイルは俺より強いからな。カイルと戦いたいんなら先ずは俺を倒してからだ。」
と凄む。
長身の男は怯えながら
「い、いえ、結構です・・・・・・。そいつはそちらのパーティーに差し上げますからお好きなようにこき使てやってください。」
と言うとパーティーメンバー共々、そそくさと去って行った。
宿屋一階の食堂。
「クイン・ヒースフィールドと言います。十六歳です。職業は鑑定士。サポート系の魔法でしたら僧侶系も魔法使い系も多少は使えます。宜しくお願いします。」
と自己紹介をする。
カイルがクインをパーティーに誘った理由を話す。
それを聞いたクインが
「・・・・・・なるほど。サナトスフォレストの黄金の実の本物を見つけろって事ですね。」
と言うとカイルは
「そうだ。出来るか?」
と聞く。
クインは
「アイテムが本物か偽物かを鑑定するだけなら間違いなく。」
と答える。
その答えを聞き、カイルが
「よし!じゃあ明日の朝一でもう一度サナトスフォレストに行こう!」
と言うと皆納得する。
翌朝、カイル遊撃隊一行はサナトスフォレストに向かう。
森に入ると途中でコボルトやヒュージスパイダーと遭遇するが難なく撃破し、前回黄金の実を取った所まで来た。
低い声が聞こえる。
「性懲りもなくまた来たか。今度こそ我が森の養分になってもらう!」
周囲の木々がドリアードの正体を現し、ヒュージスパイダー、バジリスク、コボルト、マイコニドが複
数現れる。その数は前回を遥かに上回り、今度こそ逃がさないという意志が見て取れる。
カイルが
「クイン!頼むぞ!」
と叫ぶとクインは
「はい!」
と返答し、鑑定スキルを発動、本物を見極めようとする。
(これは・・・・・・違う!これは・・・・・・これも違う!こっちは・・・・・・違う!・・・・・・これも・・・・・・!)
カイルは続けて指示を出す。
「グスタフ、レティシア、エレオノーラは数を減らしてくれ!クレアは俺と一緒にクインを守れ!プルムは各員の攻撃力と防御力のアップを頼む!」
「分かったぜ!」
「分かった!」
「了解だ!」
「分かりました!」
「分かりました!」
グスタフはスキル:トルネードアックスで周囲の敵を一気に薙ぎ払う。
エレオノーラは広範囲の氷属性魔法を駆使して一気に複数の敵を倒す。
プルムはグスタフ、レティシア、カイル、クレアに攻撃力アップ、全員に防御力アップを施し、敵の攻撃に応じて魔法防壁を張る。
気力の貯まったレティシアはスキル:剛掌波で前方の敵を一気に吹き飛ばす。
カイルとクレアはクインに近づく敵を一体一体、確実に剣で倒す。
「クイン!どうだ!?」
カイルが聞くとクインは
「すみません!数が多くて・・・・・・!」
と答える。
カイルは
「引き続き頼む!」
と言って戦闘に集中する。
かなりの数を倒しているが、四方から次々と援軍が来てキリがない。
カイルは考える。
(次から次へと敵が出てきてキリがない。このままじゃジリ貧だ・・・・・・。・・・・・・よし!)
カイルが叫ぶ。
「エレオノーラ!最大の炎魔法でこの森丸ごと焼き払え!」
エレオノーラは
「何っ!?それじゃ黄金の実も・・・・・・。」
と戸惑う。
それに対してカイルは
「上手く焼け残るかもしれないし、このままじゃ本当に養分にされちまう!構わないから全部焼き払え!」
と叫ぶとエレオノーラは
「分かった!」
と答え、炎魔法の呪文を唱えようとする。
するとまた低い声が聞こえる。
「ま、待て!」
カイルは
(しめた!)
と思いながら、
「誰だ貴様は!?」
と問うと低い声は答える。
「我はキングトレント。この森の主である木の魔物だ。」
カイルが
「そうか。悪いがこの森は、森ごと全て焼き払わせてもらう!」
と言うとキングトレントは
「そんな横暴は許されない!」
と語気を強める。
カイルは
「許されようが許されまいが、貴様らに生きる権利があるというのなら、我々にも生きる権利はある。だから我々が生きて帰るために森ごと焼き払う。エレオノーラの最大魔法なら二、三回できれいさっぱり焦土に変えられるだろう。ほんの短い時間で。止められるものなら止めてみろ!」
と言う。
キングトレントはそれを聞いて
「待て待て!貴様らの目的は何だ?それによっては話し合いの余地もあるだろう。」
と持ちかける。
カイルが
「先ずは攻撃をやめさせろ。これじゃ話し合いにもならない。」
と言うとキングトレントが
「皆、攻撃を止めろ。」
と指示を出すと一斉に攻撃が止む。
そこでカイルが話す。
「我々の目的は、ギルドの依頼により黄金の実を頂戴しに来た。先ずはそれを差し出してもらいたい!それから、今後は不可抗力で森に迷い込んでしまった人間には手を出さず、森の外へ誘導して生かして返してもらいたい!我々の要求はそれだけだ!」
それを聞いたキングトレントは
「一方的な!我らには何の得も無いではなか!」
と、納得しないが、カイルは
「そうでもないさ。我々が黄金の実を持ち帰ってみろ。噂はたちまち広まり、“黄金の実の話は本当だった”“取りに行けば自分たちにも取れるかも”となって森への侵入者が増えるだろう。欲に目が眩んで、人喰いの森だと承知して入ってくる者は好きにすればいい。」
と説く。するとキングトレントは
「確かに、ここ十数年、ほとんど侵入者はいない。黄金の実を増やせば侵入者が増えるかもと思って実を増やしてみたが侵入者はほとんど増えなかった。お前の言う通り、お前たちが黄金の実を持って帰れば侵入者は増えそうだ。分かった。取引に応じよう。」
と言って納得した。
すると奥の大きな古木が一本の枝をカイルに向かって伸ばす。その先端には黄金の実がついている。それを見てカイルは
「クイン!鑑定してくれ!」
というとクインは近づいて鑑定スキルを発動して言う。
「カイルさん!これは間違いなく本物の黄金の実です!」
カイルは
「そうか、ありがとう。」
と言って黄金の実をもぎ取る。
カイルはキングトレントに
「これで取引は成立だ!我々は帰って噂を広めるから、魔物たちを下がらせてくれ!」
と言う。
キングトレントは
「分かった!」
と言って魔物たちを下がらせる。
カイル遊撃隊一行は悠々と森を出て町に帰る。
町に着くとカイルは道具屋へ行く。
「ご主人!」
と声をかけると道具屋の主人は
「おお、あんたは昨日の!今日はどうしたんです?」
と聞いてくる。
カイルが
「昨日の萎びた実を買い取って欲しいんです。」
と言うと道具屋の主人は
「良いんですか?本物じゃないとはいえ、手に入れること自体難しい希少価値の高い一品ですよ?」
と返す。
カイルがそれに対して
「全然、構いませんよ。何しろ本物を手に入れましたから。」
と言うと道具屋の主人は
「ええっ!?本当ですか!?」
と驚く。
カイルは本物を見せて言う。
「ご主人の助言通り、鑑定士をパーティーに入れて行ったら、まぁまぁ簡単に手に入れられましたよ。ご主人の助言のおかげなんで、萎びた実は言い値で良いですよ。」
道具屋の主人が萎びた実六個を銀貨六枚で買い取るとカイルは
「いやあ、そこそこの戦力と鑑定士がいれば、誰でも取れんじゃないかなぁ。鑑定士さまさまだ。」
と言いながら道具屋を後にする。
外へ出るとカイルがつぶやく。
「これで、道具屋が噂を広めてくれるだろうからキングトレントとの約束は果たせるな。まぁ、何人かが犠牲になったらまた森へ出向く者なんか居なくなりそうだけど。ただ鑑定士の人には申し訳なかったな・・・・・・。駆り出されて一緒に犠牲になる人が増えそうだし・・・・・・。」
クインがカイルに言う。
「役に立てずにすみません・・・・・・。カイルさんの機転が無ければきっと全滅してました・・・・・・。」
落ち込んだ様子を見てカイルが言う。
「何を言ってるんだ!全てクインのお陰じゃないか!だって、あそこでキングトレントが本物を渡してくる確証なんか無かったんだ。クインが本物だと鑑定してくれたお陰で取引が成立したんだ!本当にありがとう!」
以前のカイルだったら、こんな風に人を励ますことなんか無かった事を知っているレティシア、プルム、エレオノーラの表情が明るくなる。
しかし、当のクインは暗い表情のまま、
「お役に立てたなら良かったです。それでは、僕はこれで・・・・・・。」
と立ち去ろうとする。
カイルは
「何処へ行くんだ?これから宿屋の食堂で打ち上げして次の目的地を決める相談をするんだ。クインの意見も聞きたいから一緒にいなきゃ困る。何か用事があるなら付き合ってやるからその後にしてくれないか?」
と言う。
クインが戸惑いながら
「え?でも僕は黄金の実の鑑定の為に雇われただけで、もう役目は終わったのでは・・・・・・?」
と言うとカイルは
「何を言ってるんだ?お前はもう俺たちのパーティーの一員なんだ。これからも鑑定士としての力を貸してくれ。」
と言ってクインの両肩を掴む。
クインは泣きながら言う。
「ありがとうございます!これからもお力になれる様に頑張ります!」
クイン・ヒースフィールド
16歳 161cm
鑑定士。
ノンブリルの町の冒険者パーティー“フェンリルの牙”の元一員。
カイルたちが黄金の実の本物の見分け方を相談するために冒険者ギルドで話を聞いていた時にパーティーから追放宣告を受けていたところをカイルが勧誘した。
鑑定スキルとサポート系の魔法が使える。
武器はショートソード。
ショートカットの女の子と見紛うほど可愛い顔をした男で度々女性に間違われる。
アシュトン・アシュトン
24歳 身長176cm
クインの元のパーティー“フェンリルの牙”のリーダー。
名前もアシュトン、苗字もアシュトン。現代日本で言うなら里見聡美とか油井唯とか?男性だから広田博太とかかな?
名前と苗字が同じになった経緯は不明。両親がふざけて付けたのか、両親の離婚再婚なのか、自分で改名したのか・・・・・・?
冒険者ギルドでクインを追放しようとしていたところ、居合わせたカイルがクインを勧誘したとみるや追放を撤回。理由は「自分がいらないものでも他の奴に欲しいって言われると、ただでくれてやるのが嫌になる」という身勝手なもの。
事ある毎に自分たちのパーティーを“Aランクパーティー”と称しているが、作中世界において冒険者パーティーの格付けなど存在しないので自分で言ってるだけ。
少々戦闘力が高いのを鼻にかけ、パーティーメンバーをこき使っている。ある意味、本物のカイルに通ずる部分はあるが、戦闘力においても鬼畜度においても数段格下の小物。
コボルト
犬の顔をした人型の魔物。
平均身長は150cm。
装備は剣と縦。
オークほどの力は無いが剣と縦を使いこなすだけの知能はある。
ゴブリンやオークの様な繁殖の特徴は無い。
マイコニド
平均身長は100cm。
二足歩行のキノコの魔物。
毒のある緑色の胞子を撒き散らす。
バジリスク、ヒュージスパイダー
バジリスクは全長5mの巨大な蛇の魔物。
ヒュージスパイダーは全長2mの巨大な蜘蛛の魔物。
どちらも毒を持っている。
ドリアード
木の精霊。
普段は木の姿をしているが正体は木と女性の中間のような姿をしている。
腕が枝、脚が根になっていて、枝で攻撃したり、根で足を取って動きを封じる。
キングトレント
木の精霊の王。
サナトスフォレストの主。
人間の言葉を理解し意思の疎通が可能。
黄金の実で森に人間をおびき寄せて人間を森の動植物の養分にしている。
当然のことながら重要アイテム「黄金の実」の持ち主。




