-第10話 事件解決-
殺人事件の容疑者となったグスタフとエレオノーラの無実を晴らすために聞き込みを始めるカイルとクレア。
先ずは一号室。
セドリック・バーンズ 二十五歳 男性 薬師
カイルが話す。
「実は昨晩から今日の未明に四号室のコールマンさんと言う方が殺されました。」
セドリックは
「何かあったとは思ってましたが、殺人事件ですか。怖いですね。犯人は宿泊客なんですか?」
と聞く。
カイルは
「恐らくそうだと思います。それでお話を聞かせて頂きたいんですが、被害者の方とは面識はありますか?」
と聞くとセドリックは
「いえ、到着後、直ぐに部屋に入りトイレ以外行ってませんので、他の宿泊客とは全く面識ないです。」
と答え、それに対しカイルは
「何か物音を聞いたとか、気付いたことはありませんか?」
と聞くがセドリックは
「いえ、特に何も・・・・・・。」
と答える。
「ご協力ありがとうございました。」
と一同は部屋を出る。
次は二号室。
シンディ・ラルストン 四十二歳 女性 食堂の給仕
カイルが話す。
「実は昨晩から今日の未明に四号室のコールマンさんと言う方が殺されました。」
シンディは
「ええっ!?そんな事があったんですか!?」
と驚く。
カイルは
「それでお話を聞かせて頂きたいんですが、被害者の方とは面識はありますか?」
と聞くとシンディは
「六号室のご夫婦とは夕飯の際にお会いしましたし、三号室の男性とはトイレに行くときに顔を合わせましたが、コールマンさんという男性とは全く面識ないです。」
と答える。続いてカイルが
「何か物音を聞いたとか、気付いたことはありませんか?」
と聞くがシンディは
「特に物音とかは聞いてないです。」
と答える。
「ご協力ありがとうございました。」
と一同は部屋を出る。
次は三号室。
アーノルド・カルローネ 三十七歳 男性 行商人
カイルが話す。
「実は昨晩から今日の未明に四号室のコールマンさんと言う方が殺されました。」
アーノルドは
「殺人事件ですか!?それで部屋にいる様に言われたんですね。」
と納得する。
カイルは
「それでお話を聞かせて頂きたいんですが、被害者の方とは面識はありますか?」
と聞くとアーノルドは
「ここで会ったのは七号室の方が道具屋で夕飯の時に商売がらみの話を少ししましたが他の方とは面識ないです。あっ、二号室の女性とは廊下ですれ違いましたけど話したりはしてないです。」
と答える。続いてカイルが
「何か物音を聞いたとか、気付いたことはありませんか?」
と聞くがアーノルドは
「特に変わった事は無かったと思います。」
と答える。
「ご協力ありがとうございました。」
と一同は部屋を出る。
次は五号室。
オスヴァルド・ラーゲルフェルド 六十八歳 男性 魔術師
カイルが話す。
「実は昨晩から今日の未明に四号室のコールマンさんと言う方が殺されました。」
オスヴァルドは
「殺人事件・・・・・・それで、あんたらが調べて回ってるって訳かい。」
と言う。
カイルは
「それでお話を聞かせて頂きたいんですが、被害者の方とは面識はありますか?」
と聞くとオスヴァルドは
「ここに着いてすぐに部屋に籠って寝るまでずっと本読んでたから誰にも会っとらんよ。トイレにも二回行ってるがその時も誰にも会わなかった。」
と答える。続いてカイルが
「何か物音を聞いたとか、気付いたことはありませんか?」
と聞くがオスヴァルドは
「年齢のせいか耳も遠くなってきてるし、何も気づかなかったな。」
と答える。
「ご協力ありがとうございました。」
と一同は部屋を出る。
次は六号室。
ヨーゼフ・ホーヘンボーム 六十三歳 男性 農業
アレッタ・ホーヘンボーム 六十一歳 女性 農業
カイルが話す。
「実は昨晩から今日の未明に四号室のコールマンさんと言う方が殺されました。」
アレッタは
「まぁ、恐ろしい。」
と怯え、ヨーゼフは
「それで、犯人は捕まったんですか?」
と聞いてくる。
カイルは
「今、調べているところです。それでお話を聞かせて頂きたいんですが、被害者の方とは面識はありますか?」
と聞くとヨーゼフは
「さぁ?知らない方だと思いますが。」
と答える。続いてカイルが
「他の宿泊者の方とはどうですか?」
と聞くとアレッタが
「二号室のシンディさんという方とは夕飯の時に少し話しましたが、それくらいですね。」
と答える。
カイルが
「何か物音を聞いたとか、気付いたことはありませんか?」
と聞くがヨーゼフは
「深夜にガタッという音とドサッという音と、何かが床に落ちるような音が聞こえましたがそれくらいですかね。」
と答える。
「ご協力ありがとうございました。」
と一同は部屋を出る。
次は七号室。
モーリス・ティレット 三十八歳 男性 道具屋
カイルが話す。
「実は昨晩から今日の未明に四号室のコールマンさんと言う方が殺されました。」
モーリスは
「コールマンって、もしかして道具屋のハワード・コールマン?」
と聞いてくる。
「知ってるんですか?」
とカイルが聞くとモーリスは
「同じ道具屋ギルドに所属しててね。まぁ評判の悪い男ですよ。殺されても不思議じゃないですね。」
と答える。
それに対してカイルは
「評判悪いっていうのは?詳しく聞かせてもらえませんか。」
とコールマンの評判を聞く。
モーリスは
「まがい物を本物と偽って高値で売りつけるなんて事は日常茶飯事。先日も呪術師に呪術で使う黒石を高値で売りつけたんだが、それが只の石を黒く塗っただけの偽物だったと揉めていたし、その前は行商人にベズワルの剣という伝説の剣を売ったんだが、それも偽物だったらしい。それどころか、ハワードのやつは自分の妻を娼館に売り飛ばしたんだが、その際も娼館の主の弱みを握り、通常の三倍の値で売ったらしい。とにかく悪評が多くてトラブルが絶えない男で、ギルドも追放したいんだが、道具の目利きは超一流でそれもあってギルドは追放できずにいるような状態なんです。まぁ、あいつなら、いつ誰に殺されてもおかしくないですよ。」
と話す。
カイルは
「随分、酷い人のようですね。あなた自身はどうですか?」
と聞くとモーリスは
「嫌味を言われたりはしょっちゅうですし、店の悪評を立てられたりした事もありますが、殺そうとまでは・・・・・・。」
と答える。続いてカイルが
「何か物音を聞いたとか、気付いたことはありませんか?」
と聞くがモーリスは
「いや。ここに泊まってるのも知らなかったし、特に物音とかも聞いてないですね。」
と答える。
「ご協力ありがとうございました。」
と一同は部屋を出る。
次は八号室。
マクシミリアン・ペシャーク 五十六歳 男性 娼館の主
カイルが話す。
「実は昨晩から今日の未明に四号室のコールマンさんと言う方が殺されました。」
マクシミリアンは
「なるほど。そういうことか。それで?わしが殺したとでも言いたいのかね?」
と問う。それに対してカイルは
「いえ、事件を調べていますのでお話を聞かせて頂きたいだけです。」
と答える。
カイルは
「それでお話を聞かせて頂きたいんですが、被害者の方とは面識はありますか?」
と聞くとマクシミリアンは
「さあな。」
と答える。続いてカイルが
「何でも被害者は自分の奥さんを娼館に売り払ったことがあるとか。しかもその際に娼館の主の弱みを握って法外な値段を付けたとか。」
「!」
マクシミリアンは一瞬、表情を強張らせたが、直ぐに平静を装い
「ああ。娼館仲間から聞いたことはあるよ。そんな奴は殺されて当然だな。」
と話す。
カイルが
「そうですか。ちなみに、その売られた奥さんの名前をご存じですか?」
と聞くとマクシミリアンは
「もう十年近くも前の事だからな・・・・・・。確か・・・・・・、そうだ!ナンシーだ!ナンシー・コールマンだ!」
と答える。
カイルは
「ナンシーですか。他に何か物音を聞いたとか、気付いたことはありませんか?」
と聞くがマクシミリアンは
「特にないね。」
とぶっきら棒に答える。
「ご協力ありがとうございました。」
と一同は部屋を出る。
次は十号室。
ピョートル・グーリエフ 五十二歳 男性 呪術師
カイルが話す。
「実は昨晩から今日の未明に四号室のコールマンさんと言う方が殺されました。」
ピョートルは
「それが何か?」
と言う。
カイルは
「それでお話を聞かせて頂きたいんですが、被害者の方とは面識はありますか?」
と聞くとピョートルは
「さあね。」
と答える。続いてカイルが
「先日、黒石の件で、被害者と揉めましたよね?」
とカマをかける。
するとピョートルは
「あの道具屋が被害者か!?」
と聞いてくる。
カイルが
「そうです。何か知ってることはありませんか?」
と聞くとピョートルは
「あの男にはいつか仕返ししてやろうと色々調べたんだが、悪い評判は幾つも出てくるが特に弱みになるような事は無かった。九年前に妻を娼館に売った事があったそうなんで、その件についても調べたが、その妻は既に娼館を上がって、何処かの食堂で給仕をしているという噂があるが、それ以上は調べられなかった。」
と答える。
カイルが
「他に、何か物音を聞いたとか、気付いたことはありませんか?」
と聞くがピョートルは
「後は特にないな。」
と答える。
「ご協力ありがとうございました。」
と一同は部屋を出る。
カイルはそのまま一階に降りて警備兵の一人を呼び止め
「大至急調べてほしいことがあるんですが・・・・・・。」
と言って詳細を話す。
警備兵は
「分かりました!大至急調べてきます!」
と言って急いで出て行く。
二階へ上がり一同は現場の四号室へ。
部屋に入ると警備兵の一人が口を開く。
「六号室の道具屋の話とダイイングメッセージを考えると全員怪しい感じがしますね。」
他の警備兵が
「三号室の行商人も被害者に騙された張本人かも知れないし、八号室の娼館の主はおそらく被害者に奥さんを高値で売りつけれた張本人でしょう。そうすると、三号室の行商人、七号室の道具屋、八号室の娼館の主、十号室の呪術師には動機があることになりますね。」
と言うと宿屋の主人が
「握りしめていた魔女の軟膏から考えれば、一号室の薬師、三号室の行商人、五号室の魔術師、七号室の道具屋、八号室の娼館の主辺りは関係ありそうですね。」
と言う。それに続いてクレアが
「数字の“6”を考えれば六号室の老夫婦も怪しくなりますね。」
と言う。
警備兵は
「言ってることも皆、辻褄が合ってるように感じましたし、殺害の機会は誰にも有ったことになりますし。カイルさん、この事件、難しそうですし、お連れの方が犯人である可能性はかなり低いと思われますので解放しますよ。」
と言うが、カイルは
「いや。犯人の目星はついてますよ。後は下の警備兵の方に頼んで調べて貰ってるとこで裏付けが取れれば、おそらく解決しますよ。」
と言う。
しばらくして調べものに行っていた警備兵が帰って来て、四号室に入る。
「カイルさん!カイルさんの言ってた通りです!」
と警備兵が言うとカイルは
「行きましょう。」
と言って部屋を出る。
他の警備兵が
「どちらへ?」
と聞くとカイルは
「二号室です。」
と言う。
二号室へ入るとカイルが言う。
「度々、すみません。ナンシー・コールマンさん。」
すると、シンディは驚いて
「何でそれを!?」
と聞く。
カイルが
「八号室に泊っている娼館の主が覚えてましてね。 マクシミリアン・ペシャーク、ご存じですよね?」
と聞くとシンディは
「はい。私が元夫に売られた娼館の主です。」
と答える。
カイルが
「シンディ・ラルストンを名乗る貴女が九年前に被害者であるハワード・コールマンに娼館に売られたナンシー・コールマンであることは先ほど警備兵の方に調べて頂いたんで裏付けが取れています。」
続けてカイルが話す。
「ダイイングメッセージについてですが、被害者は左手に魔女の軟膏を握ってました。そして右手で“6”と血で書いてありました。これは魔女の軟膏の正式名称“大いなる魔女の淫靡な膏薬”の六文字目、すなわち“女”を示しています。十年近く会っていなかったし、いきなりだったので犯人は女だという事しか分からなかったんでしょう。女性の宿泊客は三人。その内、単独の女性は貴女だけです。」
更に続けて
「四号室の両隣はこの二号室と六号室。六号室の老夫婦は音を聞いているのに貴女は聞いていない。すなわち、部屋にいる時に聞こえる筈の音が分からなかったんです。それは音がした時に、貴女は部屋にいなくて犯行現場にいたという事。どうです?犯行を認める気になりましたか?」
シンディは認めようとはしない。
カイルが
「それなら、警備兵の皆さん、この部屋を隅々まで捜索して下さい。凶器のナイフの鞘がある筈です。現場には無かった。外には捨てられない。トイレに捨てれば他の宿泊客に気付かれる可能性がある。とすれば、まだこの部屋の中にある筈です。」
と言うと警備兵は家捜しをする。
しかし隅々まで探すが見つからない。
シンディは
「ほら!無いじゃない!私は犯人じゃないもの!」
と勝ち誇った様に言う。
警備兵たちは戸惑うがカイルは
「あとは服の中だけですね。」
と言う。
警備兵たちは
「相手は女性だし、これで何も出なかったら・・・・・・。」
と及び腰。
その時。クレアが剣に手をかけ、抜くと瞬時にシンディの服を切る。
服の前面が真ん中から縦に裂け、シンディの胸が露わに・・・・・・。
と同時にコトッと音を立て、鞘が床に落ちる。
シンディはそれを見て膝から崩れ落ちる。
警備兵の一人が
「出ましたね、確たる証拠。」
と言うと、シンディは泣きながら
「信じた夫に娼館に売り飛ばされる気持ちが分かりますか!?」
と叫ぶと今度は静かに
「どうしても許せなかったんです・・・・・・。」
と呟く。
そしてシンディが言う。
「娼館の主が名前を覚えていたのが誤算でした・・・・・・。」
しかしカイルは
「いや、最初にお会いした時から分かってましたよ。」
と言う。
警備兵が
「そういえばシンディがナンシーだったのを調べたのは裏付けだって言ってましたよね。その前から確証があったって事ですか?」
と聞くとカイルは
「ナンシーさん。貴女は最初にお会いした時に被害者と面識があるか聞いたらこう答えました。『六号室のご夫婦とは夕飯の際にお会いしましたし、三号室の男性とはトイレに行くときに顔を合わせましたが、コールマンさんという男性とは全く面識ないです。』と。私はコールマンという名字だけを伝えて性別は伝えてないんです。にもかかわらず、貴女は“コールマンさんという男性”と言っていたんです。会ってもいないのに性別が分かるわけないんですよ。廊下ですれ違っただけの三号室の男性は面識があるとしているのに面識がないという事は見かけてもいない。でも性別が分かるという事は本当は会っている。それを隠しているという事は会ったことが知られるとまずい。それは会った時に殺しているからですよ。」
と答える。
カイルは警備兵に
「動機を考慮して、情状酌量お願いしますよ。」
と伝えると部屋を出る。
宿屋の主人は各部屋に事件が解決したら部屋から出ても良いと伝えて回る。
警備兵はシンディこと、ナンシーを拘束して連行する。
一階に降りるとグスタフとエレオノーラの拘束が解かれていた。
「カイル!お前が事件を解決して俺たちの潔白を晴らしてくれたんだってな!ありがとう!」
とグスタフがカイルに抱き着く。
エレオノーラも
「見直したよ!こんな頭脳プレイも出来るんだな!助かったよ!」
とカイルに抱き着く。
カイルは照れながら
「いやいや、たまたまだよ。」
と言いつつ
(刑事ドラマのおかげだな。)
と思っていた。
その時、クレアが
「そうだ!カイル様!事件の関係者に道具屋や行商人がいましたから、アイテムの事、聞いてみませんか?」
と言ってきた。
カイルは
「さすが、クレア!名案だ!」
と言って宿泊者全員にアイテムについて聞いてみると、三号室の行商人・アーノルドがユニコーンの角を持っていた。
カイルは代金を払って譲ってもらった。
「これで二つ目だ。」
と言って、カイルはユニコーンの角を握りしめた。
ナンシー・コールマン
42歳 身長162cm 84-58-86 Cカップ
食堂の給仕。
殺人事件の被害者ハワード・コールマンの元妻。
シンディ・ラルストンと名乗ってハワード・コールマンの隣りの部屋に宿泊。
9年前に夫のハワードからマクシミリアン・ペシャークの経営する娼館に売り飛ばされる。
その事を恨み復讐のためにハワードを殺す。




