経験者は語る2
その消防おじさん、期間労働者の事に関していろいろ知っている。
自分もこの仕事が初めてだったので、やはりどんな仕事かは不安があった。なので、その消防おじさんからの情報は本当に貴重だった。
「配属が決まって、しばらくすると3割くらいの人が辞めるからね」
消防おじさんは淡々と話す。
割合から言えば、新入り同期10人いたら5人は経験者らしい。残り5人のうち、2,3人はあまりの工場の作業の辛さにやめるとのこと。つまるところ、新人で残るのは1,2人のみ。経験者は工場がどんな仕事かもわかっているから、やめる人は少ない。
「経験者は同じ工場の同じ部署に配属される事が多いから、結局残るんだよね。キツイ工場のキツイ作業はやはり新人で元気な奴が回される」
消防おじさんはビールを一気に飲み干しながら、
「だから配属がすべてだよね」
と豪語した。
同じ部屋4人のうち工場経験者はその消防おじさんのみ。他の3人は初めての経験。
自分以外の二人は、一人は関西の若いにーちゃん。車を買いたいとのことでこの仕事に入ってきたらしい
。もう一人のおじさんは、北海道からで、出稼ぎに来てた。半年ほど地元北海道で酪農をして、残りの半年をこの工場で稼ぎたいとのこと。
期間労働者はどう頑張っても11か月しか契約できない。なので、11か月働いたあと、必ず1か月はお休みする必要がある。その1か月経過後、再契約として再びこの工場に期間労働者として戻ってくる。
ちなみに、その消防おじさん、別に金を稼ぎたいわけでも、借金があるわけでもないので、自分の給料は自分で好きなだけ使える、
なので、その空白の1か月はホテル暮らしをして、さんざん遊んだのちに、再度期間労働者となるのだ。
もうすべてが達観した雰囲気を持っている。
健康診断後、研修は3日間安全やら歴史やら、なんでもない事ばかり行われる。我々は、5時きっかりに開放されて、食堂で無料でもらった食券で買ったビールで毎晩宴会となるのだ。
そんな日を4日ほどすごすと、いよいよ配属となる。消防おじさん曰く、運命の日とのこと。