期間労働者として2
面接後、ほどなくして1通の封書が届いた。
いわゆる採用通知というもの。採用通知には、何月何日の何時に名古屋駅に来てください、という旨の内容が記載されていた。併せて、片道分の新幹線の切符が同封されていた。
正直、大学を休学してまで働く意義があったのかどうかかなり迷っていたのも事実。でも、自分の決心はかたく、大学に休学届をだし、授業料の30%を納付した。
名古屋駅に到着すると、改札を出てすぐにT社の旗をもったおじさんが二人ほど待っていた。どうやら全国からおおよそこの時間に集まるように手配しているらしく、自分が到着したときには約10人ほどの怪しいおじさんが待っていた。どのおじさんも高額な期間労働者ゆえの期待と、今からどんな仕事をするんだろうかという不安の表情で複雑でどんよりした雰囲気をだしていた。多分、他のおじさんからみたら、自分のどんよりした雰囲気に見えたのかもしれないが。
20人程度集まったあと、どんよりおじさんたちはバスに乗せられた。T社のロゴが書いてあるバス。これが期待のバスになればいいのだけど。
名古屋からT市まで約1時間。バス車内にはラジオが流れてて、誰もしゃべることもなくラジオの音声に聞き入るようにバスに揺られていた。年齢は、おそらく40代から50代が多い感じで、どんよりした雰囲気とどことなく疲れた表情も見受けられた。
T市内にはいってほどなくして、我々がしばらく寝泊まりするであろう寮に到着。寮の名前は「SW寮」
驚いた事に、1部屋4人。新入生ばかり4人集められて同じ部屋に放り込まれる。
到着初日は特にすることもなく、自分の布団をセットして終了。翌日から研修があります、という事を聞かされて開放となる。どんよりおじさんたちは、とりあえず自分の寝床が確保できて落ち着いたのか、同じ部屋の人同士で食堂でビールを飲んで楽しそうに談笑していた。自分は特にお酒を飲むこともなく、食堂で普通に食事をしていただけだが、ふと気になった事があった。数組の新人おじさんたちが楽しくビールを飲んでいる雰囲気とは対照的に、かなり疲れた表情で食事をとっているおじさんがところどころにいた。本当に疲れた表情で一心不乱に食事をしている。この人達は実際に工場で労働して帰ったきた人達なんだと思うと、楽しそうに飲んでる新人おじさんとの乖離に何となく不安な気分になってしまった。
明日8時集合。1週間の研修の始まりのようだ。