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  作者: 暁柚那
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2

蝉の合奏が聞こえ始める頃の話。






梅雨が明けてジメジメっとした蒸し暑さから、カラッとした暑さが広がる。

あぁ、嗚呼。暑い、暑すぎる。

店内はクーラーをまわしてはいるが、外に出ると汗が溢れてくる。

更には、夏場のキッチンなんて本当に地獄だ。誰か変わってくれないかーなんて、思ってしまうほど。


だから、今は快適空間。

カウンターの中、つまりキッチンには立ってはいるが、あまり暑くはない。火を使った料理はまだしていない。

こんな日々の飲み物は、やはりホットよりもアイスが売れる。「ふふ、良き良き」と呟いてしまう。


さて、今日はどんなおきゃ「みっちゃーーん!」

と扉を開く音とともに、店主を呼ぶ声が聞こえた。

「は?」キョトンと顔をしながら、「いらっしゃいませ」の挨拶を忘れて素っ頓狂な言葉を発してしまった。

お客様が1人もいない時でよかった、と心底思った。



入店してカウンターに座ったのは、2人組の女子高生。

1人は地毛がブラウン色のツインテールをしている、入店早々店主の名を呼んだ、常連さんの子。もう1人は始めてみる顔だ。黒い髪を高い位置でポニーテールにしている子だ。

ツインテールの女子高生は活発でしっかりしている。元気ではいるが、友人と思わしき女子高生は、逆に大人しくおどおどしている印象だ。


「注文は何がいいかしら?」スマイルゼロ円全開の笑顔で、女子高生達に話しかける。

ツインテールの子は「みっちゃんブレンド、2つ!アイスで!」と答える。その答えを聞いた友人と思われる少女は、「えっ」と顔をしていた。

「ここのみっちゃんブレンドは美味しいよ。1口目はブラックで飲んでみて」と店主より先に説明をするツインテールの子に、内心感謝を述べる。


「今日は平日だけど学校は?」と質問をすると、友人と思われる少女は「…創立記念日で学校がお休みなんです。羽月(はづき)に誘われてきました」と答えてくれた。ありがとう。

「なにか相談があってきたの?」と質問をすると、ツインテールの子、羽月が「友達の優里(ゆり)に、ここのコーヒーが美味しいから宣伝したら、今日行ってみたいって言うから連れてきたの」と答えてくれた。それはどうもありがとう。

優里と呼ばれた友達と思われる少女はやはり友達だった。

「そっか、ではごゆっくりしてください」とにこり、とまた笑う。


女子高生2人以外にはお客様がいないため、女子高生特有の学校の話で盛り上がっている。

趣味の話。この小説は楽しかったから読んでみて、と小説の貸し借りに始まり、アニメや音楽の話。そうしたら、また学校の話かと思いきや、恋の話。気付くと愚痴の話。

やはり10代でも女だ。話がどんどん出てくるし、お砂糖のように甘い話や苦い話など宝石みたいにポロポロと出てくる。


カラン、と氷とグラスが当たる音を出して、2人の会話が途切れた。

「喉が渇いたでしょう?お待ちどうさま」とタイミングよくアイスのブレンドコーヒーを出すことが出来た。ついでにミルクとシロップも。

感謝の言葉を言われ、優里が「…まずは、ブラックから飲む」と呟く。1口飲むと「美味しい。さっぱりしてて。でも、少し酸味があります。ミルクとシロップはいらないかも」と感想を頂く。羽月は1口飲んで、「やっぱりみっちゃんのコーヒーは美味しい!私はミルクとシロップはいれる」と用意してあった、ミルクとシロップをいれる。

「ありがとうございます。当店自慢のコーヒーがお口にあって何よりです。もし、苦味が出てきたらミルクとシロップで調整してくださいね」と話すと、「はい!」と元気よく言われた。


ここに入ってきた時はきっと、初めての場所で緊張をしたのだろう。今はいい笑顔だ。

「さてと、味見をお願いします」

と、白いお皿の上に乗せたのは、パンケーキ。

1人1枚ずつ乗っており、その上にはバターとハチミツをかけたシンプルなものだ。

少女達の他愛のない話の最中、珈琲を見ながら焼いていた。甘い香りをさせてたけれど、他愛のない話でかき消されてしまったのが、ちょっと悲しい。

羽月と優里の2人は顔を見合わせてから、羽月が「いいの?!みっちゃん?」と聞いた。

「特別サービス。他のお客様には内緒ですよ?そして、出来たら、感想を聞かせて欲しいです。メニューに加えたくて」と、人差し指を口に当ててから、2人に向かってウィンクをした。


「はいっ!」

「りょーかいっ!」

と太陽のように眩しい笑顔で返事をする、女子高生達でした。


2人の笑顔が見れて何よりでした。








こんなに可愛い笑顔が見れるなら、メニューに追加すべきかしら。

いや待てよ。メニューに追加するならば……何かをカットした方がいいのかしら?

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