第30話 服部ミヤビお披露目初配信を終えて
「『は、はわわ……!』うーん。酒井さん、もといミヤビ可愛いわね……」
「元々つぐみと同じようなギャルっぽいキャラ付けを想定してつぐみ配信へのコメントやヌイッターでのつぶやきをしてたから、そっちとキャラが違い過ぎて大丈夫かな? って不安だったけど……「この見た目でネット弁慶なのかよ、推せる!!」って紳士が続出してるみたいだし、受け入れ良好そうなのも安心したよ」
「は、恥ずかしい……!」
お披露目配信から三日。
勝次の家に酒井さんを招き、配信を振り返りながら色々と駄弁っていた。
「それにしても配信中常に1000人オーバーのアクティブ視聴者が居たとかすごいわね。つぐみの初配信の時以上かも?」
「つぐみとしてやっておいた宣伝はもちろんだけど、真田先生や交流のあるVライバーさんたちも服部ミヤビのお披露目配信に触れてくれたり宣伝してくれていたからなあ。ありがたいことだよ」
「……え、つぐみとミヤビのママって真田昌信先生だったんですか!?」
「あ、酒井さんも真田先生知ってたの?」
「はい。西洋剣乱舞でマインゴーシュくんってキャラクターの作画されてるんですけど、それが少年性と少女的な可愛さが融合した素晴らしいキャラクターなんですよ。少年でありながら少女的な魅力もほんのりと漂わせる、思春期のごく短い時期を体現したかのようなキャラクター。それがもう堪らなくてですね……」
「酒井さん、ステイステイ」
酒井さんのスイッチが入るタイミングがなんとなく分かってきた気がするわ。
「あ、すいません。私また……」
「いいわよ。勝次の方がアレなんだから、そのくらい可愛いものよ」
「え? 俺?」
「それより見て見て酒井さん。Yautubeの服部ミヤビチャンネルの登録者数が5000人を突破してるし、ヌイッターフォロワーも20000人を超えてるわよ」
「わ、本当だ。すごい!」
「康美、それ俺のセリフ……」
「それにしても、つぐみから流れてきた登録者が多いとはいえ配信を初めてすぐこんなに登録者が増えるのはすごいわねえ」
「『登録者を伸ばすならコラボが重要』とは昔から言われているけど、こうして改めて結果を目の当たりにすると効果を実感するな」
「Freak‘S MATEとのコラボ後のつぐみもすごかったしねえ。
とはいえ私たちにとっては『登録者が増える=やれることの幅が広がる』くらいの感覚でしかないし、気負わず色々やっていきたいわね」
「二人とも冷静過ぎません……?」
なんか酒井さんも良い感じに場に馴染んで来たわねえ。
「それで酒井さんはどうだった? 配信、楽しかった?」
「え? あ、はい。すっごく緊張したけど……楽しかったです」
「これからも続けて行きたい?」
「はい。お二人が良ければ、ですけど」
「そっか。良かった」
「え?」
「実はね私、酒井さんのこと好きになったみたいなの」
「え、ええ!?」
「あ、もちろんそっちの意味じゃないわよ?
……私ね、老若男女問わず『この人と一緒に居たくない』とか『近づきたくない』って思ったりすることはほとんどないのよ。相手が明確に私を害そうとしている場合は話は別だけど」
「……」
「でもその代わり『この人と一緒に居たい』とか『離れがたい』って思うこともほとんど無くてね。そう思えた……思っている人は、今までの人生でも数えるほどしか居ないわ」
「……うん」
「そんな私だけど、何でかな。酒井さんと話すのが楽しくて、酒井さんのこと何も知らないのに『離れたくないな』って思っちゃってるのよ」
「……」
「あはは。あんまり人に好意を伝えたことが無いから、なんだかすごく想いが重い女みたいになってるわね。ごめんね酒井さん。
何にせよこれで晴れて配信仲間になる訳だし、これからもよろしく———」
「美月」
「え?」
「私の名前。酒井美月って言うの」
「……そうだったんだ。それすら知らなかったのね、私」
「大丈夫。名前だって他のことだって、これから知ってくれればいいんだから。晴れて配信仲間になる訳だし」
「……うん。そうだね」
「あのね榊原さん、私も嬉しいよ。榊原さんが私のこと好きって言ってくれて。あ、もちろんそっちの意味じゃないからね? ふふ」
「あはは……うん」
「……私、榊原さんと友達になれて良かった。あの時勇気を出して良かった。
改めて。私こそこれからもよろしくね」
「うん!」
「うわああああああああああああああああ!!! 尊すぎるうううううううううううう!!!!!!!!!! ああああああああああああああああ!!!!!!」
「「うるさい!!!!!!」」
最後の最後で何故か勝次が発狂したけれど。
こうして私は酒井さん———酒井美月さんと配信仲間になったのだった。
……そしてきっと、本当の意味で友達にも、ね。




