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『オタクに優しいギャルにならないか?』と持ち掛けられてVTuberを始めた話  作者: oz
第五章 身バレの危機と服部ミヤビ誕生編
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第25話 勝次の秘策?

「榊原さんの協力者ってあの本多さんだったの……!?」



 勝次の家を前にして、呆気にとられたように酒井さんが呟いた。



「うん。実は小学校時代からの幼馴染でね」


「そうだったんだ……。しかし遠目にデカい建物だなあとは思っていたけど、近くで見ると本当に大きい家なのね。デカすぎんでしょ……」



 酒井さん、だいぶパニくってるみたいで口調が崩れまくっててウケる。

 さすがに可哀想だから助けてあげなきゃね。



「暑いしとりあえず中に入りましょうか」


「あ、うん」



 ————— リンゴーン —————



「すごい、お金持ちって感じのインターホンだ……」


「そこ?」



 勝手に入ってもいいんだけど、さすがに事情を知らない人の前でそれをやるのも憚られたから大人しく勝次を待つ。



「いらっしゃい康美。酒井さんだったかな? 急なお願いを聞いてくれてありがとう。

 暑いし二人ともとりあえず上がって上がって」


「うん」


「お、お邪魔します……!」



 酒井さんガッチガチでウケる。

 ちょっと小動物感のある酒井さんを見ていると、なんだか私の中のS的なものが目覚めそうになるわね……。


 居間へ通され、冷たい飲み物を出してもらって一息ついたところで勝次が話を切り出す。



「突然の誘いに応じてくれてありがとう酒井さん。

 それで酒井さん、酒井さんは俺たちの身近な所で『本原つぐみ』のことに気付いた最初の人なんだ。

 康美も言った通りガチガチに隠し通すつもりは無いけど、現状言いふらすメリットも無いからとりあえず口止めをお願いしようと思って。頼めるかな?」


「あ、はい。それはもちろん」


「ありがとう。

 ……それと実はもう一つお願い、というより提案かな? があるんだ」


「え……! そ、それってやっぱり私の体とか……!?」


「「落ち着いて」」



 私も人のこと言えないけど、なんでみんなそっち方向に持っていこうとするの?



「仮にそうだとしたら康美と一緒に呼ばないでしょ!」


「そこは三人同時にとか……」


「ずいぶん危ない所を攻めるね……」



 パニくってるにしろ酒井さん結構踏み込むわね。意外とやる時はやる娘かもしれないわ。



「とりあえず成人向けな諸々は頭から出してもらって大丈夫だから落ち着いて。

 それで提案の内容なんだけど、酒井さんVTuberとして配信してみるつもりない?」


「え……え!?」



 そうして勝次は私にしたのと同じように服部ミヤビの事情について説明し、酒井さんに中の人になって欲しいことを説明した。



「……という訳でお願いしたいんだけど、どうかな? 今のところ中の人としての条件を満たすのが酒井さんくらいしか居ないんだよね」


「え、えっと……急なことですぐには決められないって言うか……」


「まあそうだろうね」


「それに私全然ギャルじゃないし……」


「そこは大丈夫。康美を、というか本原つぐみ配信を見てもらえば分かる通り、それっぽい振る舞いだけ心掛けてもらえば大丈夫だから」


「で、でも私配信したことなんて一度も無いですし……」


「それも心配いらないよ。ウチの一部屋に配信環境準備するし設定も俺がやるからさ。酒井さんはPCの前で喋るだけで大丈夫」


「う、うーん……」


「(そろそろだな)……そうそう、お願いじゃなくて提案って言ったのはワケがあって、配信してもらうことで酒井さんに一つ大きなメリットがあるかもしれないんだ」


「え?」


「酒井さんはFreak‘S MATEのファンなんだよね?」


「!」


「本原つぐみがFreak‘S MATEとコラボしたのは知っていると思うんだけど、本原つぐみの友人という設定のVとして活動することで、今後Freak’S MATEのお二人と直接やり取り出来る機会が来るかもしれないんだ」


「……」


「もちろん確実なことじゃないけど、本原つぐみと一度でも繋がりが出来た以上、可能性としては悪くない話じゃないかと思うんだよね」


「……」


「……と、ずいぶん話し込んじゃったね。俺の方からの話はこれで全部だけど、酒井さんの方から何か質問とか言いたいこととかあるかな?」


「……いえ、特には」


「そっか。この場でいきなり決めてって言われても困るだろうから、一旦帰ってよく考えてから返事してもらって全然大丈夫だから」


「はい……」


「じゃあ改めて、今日はわざわざありがとうね。康美、酒井さんを送ってあげてくれる?」


「うん。じゃあ酒井さん行こっか」


「あ、うん」



 まだ現実を受け入れられて無さそうな酒井さんを促して玄関へ向かう。



「酒井さん、今日はありがとうね。私からもお礼を言わせてもらうわ」


「うん」


「それはそうとごめんね。勝次がびっくりさせちゃって」


「ううん、大丈夫。ちょっと……いや大分びっくりしたけど」



 それにしても勝次、断られる理由を端から潰していって最終的に相手にとって大きなメリットを提示。実質的な選択の余地を潰して応じさせようとするとはやるわね……。

 企みと言えば聞こえは悪いけど、これで酒井さんが提案に応じてくれれば私たちにとって色々都合が良いのは確か。

 ……でも勝次、せっかくだけど今回だけは私も我を通させてもらうわ。友達のために、ね。



「あはは……でも勝次は勝次で色々配慮した上でああいう提案をしたんだと思うけど、実際問題として嫌だったら断ってもらって全然構わないからね。

 友達が無理して辛い思いをしてる姿なんて見たくないからさ」


「榊原さん……うん。私、しっかり考えて答えを出すから。

 決まったらLINNEで榊原さんに伝えればいい?」


「うん。そしたら私から勝次に返答を伝えるから」


「分かった。……じゃあまた学校でね」


「うん。またね」



 そう言って酒井さんは帰っていった。


 急な申し出で困惑させたことを申し訳なく思いつつ、さすがに断られるだろうと思っていたのだけれども……なんと二日後、酒井さんから「ミヤビの中の人になる」との返答が来たのだった。

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