夏の花火と、康美と勝次
——— ドーン…… ———
——— パーン…… ———
——— ドン……ドン…… ———
「綺麗……」
「ああ……」
デッキチェアに寝そべり、花火を眺めながらつぶやく。
最初はたまやーとかかぎやーとか言おうかと思っていたけど何故かそんな気分にはなれず、VTuberとして配信を始めてからの諸々やこの夏の出来事を思い出しつつ、ただ静かに花火を眺めていた。
そうして十分ほど経った頃———勝次が口を開いた。
「……なあ、康美」
「……何?」
「俺、康美のことが好きだ」
「……」
「俺……本多勝次は、榊原康美さんのことが好きです。付き合って下さい」
……そっか。ついに言ったわね。
じゃあ———
「勝次、立って」
「え?」
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———今だな。
花火が上がり始めてから十分ほど経った頃。
隣でじっと花火を眺め続ける康美を横目で見つつ、俺は決意を固め口を開いた。
「俺……本多勝次は、榊原康美さんのことが好きです。付き合って下さい」
……言っちまった。
あれだけ緊張してたけど、言ってしまうと案外落ち着いていられるものなんだな。
ふとした思い付きで康美に配信させたり、その結果長年の自分の想いを自覚してその決着をつける羽目になったり。思い起こせば波乱万丈な夏だったなあ。
俺に出来ることはこれで終わった。さあ康美はどんな反応を———
「勝次、立って」
「え?」
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勝次の告白を聞いて立ち上がった私は勝次の前まで行き———未だデッキチェアで寝そべっている勝次の手を掴んで引っ張り上げた。
「はい、もう一回」
「え?」
「『キマった……』みたいな顔してるけど、寝そべったまま相手の顔も見ずに告白するとかナメてるの?」
「え? ……え?」
「どうしたの? 私のことが好きなんじゃないの?」
「いや、す、好き、だけど……」
「でしょ? だったらもう一回くらい勇気出しなさい」
「……はは」
そんな風に喝を入れると、いつぞやの初配信後のようにポカンとした表情から徐々に安心したような表情に変わっていき———
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ああ、本当に情けないな俺は。告白相手にここまで言わせちまって。
お前は本当に強い奴だよ。また惚れ直しちまったよ。
惚れるのも惚れ直すのも、これで何度目だったかな。
「……もう大丈夫。ごめんな康美」
「いいわよ。いつものことだし」
「はは……じゃあ改めて。俺は康美のことが好きだ」
「うん」
「初めて意識したのは小学生の頃だった。康美が一人で過ごすのが好きなことに気づいてから、徐々に康美のことが気になり始めてた」
「うん……うん?」
「康美が何かに集中していたり楽しんでいる姿を見ているのが好きだったけど、今思えばそんな姿を見ている内に徐々に惹かれて行ったんだと思う」
「ちょ、ちょっと」
「配信を通して今まで見られなかった康美の魅力を知ったのが決定的だったな。このままじゃ康美が遠くに行ってしまうような気がして———」
「落ち着きなさい!」
ていっ、とばかりに康美が俺の頭に手刀を落とす。
「痛っ。なんだよ話の途中で」
「なんだよはこっちのセリフよ。そんなこっぱずかしいこと長々と言ってないで、さっさとキメちゃいなさい」
ふと気づくと花火に照らされた康美の顔は真っ赤だった。
そうか。康美も勇気を出してたんだな。
「はは、ごめんごめん。じゃあ改めて———」
一呼吸置いて、真っ直ぐ康美の目を見る。
「———康美さん。好きです。俺と付き合って下さい」
「はい。喜んで」
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こうして俺たちは
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こうして私たちは
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夜空に咲き乱れるスターマインの下。
その関係性を幼馴染から恋人へと変えたのだった。




