7 魚のうた
少しずつ秋がすすんできた。
まだそんなにさむくはないけど、日がしずむのがとても早い。
秋の森はとてもいい。
もし行ったことがないなら、行ったほうがいい。
ホロウの夜がはじまる前に、冬が来る前に。
森の木に色がつく。ツタや、木の実にも色がつく。
あか、き、だいだい、みどりのままの木々。
たくさんの色が溶けることなく、まじりあう。
足もとにかれはがふえる。ガサガサという音があちこちからきこえる。すこしかわいた草のにおい。
リスにノネズミ、オオジカ、モモンガ。ほかのどうぶつたちも、冬じたくに大いそがし。食べものさがしにむちゅうで、すがたをかくすことをさぼるから、たくさん森にあらわれる。
ウィローは、リスがとくべつ好き。見つけて「あそこにいるよ」とおしえてやると、パッとうれしそうにじっと見てる。
あさやけの色、夕ぐれの色、川の水色。
秋の森には、色が多い。
魚たちも多くなる。
カマス、クネイル、テンチにローチ。
魚のなまえは、丸太ごやにのこっていたレシピのメモに書いてある。
まえのやぬしは、絵もうまい。
おれでも、見ればわかる。わかるとおもしろい。
カマス、クネイル、テンチにローチ。
ウィローがメロディーをつけて、すてきなうたにしてくれる。ふたりでうたいながら魚をつるのは、とてもたのしい。
つれない時には、ひるねする。
あつくもないし、さむくもなくて、秋のおひさまはちょうどいい。
たいりょうの日も、ちょびっとの日も、夕方までには家にかえる。秋の夜は早いから、うっかりするとやみにとじこめられてしまう。ゴブリンは夜でも目は見えるけど、わざわざ夜の森にいることもない。
きょうは、まあまあ。名前のわからない、小さな魚がたくさんとれた。あたまを切って、ないぞう出せば、このまますぐに食べられる。少しあぶれば、さいこうにうまい。
のこった分は、塩と油につけておく。すると半年以上もつ、べんりな食べものになる。
(これは、まえのやぬしがのこしたレシピ)
頭とないぞうは、おおなべに放り込む。やさいくずと煮こんで、塩で味をととのえて、あったかいスープにする。生ぐさくって、えいようたっぷり。
(これは、おれのゴブリンレシピ)
カマス、クネイル、テンチにローチ。
ウィローがやってきて、たのしそうに今日書いたところを読んでくれる。
魚のうたをいっしょにうたう。
そうだ、キノコを干すのをわすれていた。
きょうはおそいから明日やろう。しばらく天気もよさそうだ。