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28 その日

 その日、春がはじまって、森はきゅうに目をさました。

 ついさっきまでねてたのに、いきなり起きてきて元気いっぱいのリスの子みたいに。


 風がつめたくなくなって、地面がみどりに変わっていく。


 おれはセドリックとふたりで雪とりに出かけた。

 ウィローは起きていたけど、まだ外には出てこない。でも、もうすぐいっしょにさんぽできるな、なんて、おれとセドリックはおしゃべりしながら、森のなかを歩いていった。

 

 雪がとけはじめた森には、たくさんステキなものがおちている。


 たとえばそれは、ツユクサドリのかがやく青い羽、ツヤツヤふたごのドングリに、タチカンボクのまっかな実。シロギツネのふさふさ毛玉や、リュウノヒゲのはねる青い実なんかもとてもいい。森のたからものを見つけたら、ポケットに入れてもってかえってウィローにあげるんだ。


「もうすぐダラスも来るかなあ。あたらしい本を持ってきてくれるといいんだが」

「フロッグは、ほんとうに本が好きだね」

「ああ、あんなにおもしろいものはない。レシピもいいぞ。のこってるのは紙にかかれた文字だけなのに、それでおいしいものが作れるなんて、すごいじゃないか」


 セドリックは、ほう、と感心したように声を立てた。


「フロッグに王立としょかんを見せてあげたいな。ものすごくたくさんの本があるんだ」

「へえ、王さまのとしょかんってことかい? そりゃすごそうだ」

「王さまのってわけじゃないよ。みんなのものだ。すべての本を、ずっとそこにしまっておくんだ。だからあたらしい本も、すごく古い本もたくさんある」


 それはすごい。ぜひ行ってみたい。そこでおれたちは、どうやったらゴブリンがバレずにお城へしのびこめるか、あれこれかんがえてたのしんだ。


 セドリックは、秋のころより少し背がたかくなっていた。でもジャンプするのはおれの方がうまい。ふたりで背くらべしながらエイッとジャンプして、どっちが高い木の枝にさわれるか、きょうそうをした。


 日かげには、まだ雪がたくさんのこってる。


 セドリックとふたりで冷たくてキレイな雪をスコップですくい、バケツに入れて家にはこぶ。



 雪の下の小さなきみどり バタバーのつぼみ

 魚スープにピッタリ にがみのあるラムゥの若い芽

 ライオンの花 つぼみがゆれる

 森の中で 春のけはいが いっせいにさわぎだす

 


 冬のおわりと春のはじまりは、いつもこんな感じ。

 セドリックは初めてみた春のやってきた日に、きらきらと目をかがやかせてた。


 丸太ごやにかえると、ウィローが「おかえり」と言って、むかえてくれる。中はホワリとあたたかい。おれたちは、それぞれ見つけた森のたからものをウィローにあげる。ウィローはうれしそうにうけとって、ていねいにながめてから、たからばこにしまいに行く。


 とってきた雪をナベに入れ、ぽこぽことわかす。

 3人そろってだんろの前で、お湯がわくのをじっと待つ。

 お茶をいれる。冬のさいごの味がする。


 とだなから出したクルミのさとうづけのビンがなかなか開かなかった。こういうときは、ナイフのうしろで、フタのはしっこを叩くといい(この技はダラスに教えてもらった)。


 甘いクルミをかじりながら、3人でカードをならべてあそんでいた。


 カードもこの丸太ごやにおいてあったもの。


 ぜんぶで4つの絵に、それぞれ10までの数字がかいてある。他にもいろいろしゅるいがあって、王さまの絵もあった。どのカードにもこまかな植物もようが書き込まれていて、とてもうつくしい。


 おれはカードをながめるだけだったけど、セドリックがいろんなあそびをおしえてくれた。ゲームをするのは、おもしろい。おれでも、勝ったり負けたりがたのしくできた。


 ウィローは、”フクロウめくり”がつよい。

 セドリックは、”しゅうごうゴースト”がつよい。

 おれはどんなカードがきてもいい。

 かいてある絵が、どれも本当にうつくしいから。


 とてもいい春のはじまり。冬のおわり。

 トントン、と小さくドアをたたく音がした。


「ダラスかな?」


 っておれが言いおわらないうちに、


「こんなところにかくれてたのか」


 そう言って、ぬうっと入ってきたのは知らない大男だった。


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