19 つぎはセドリックのはなし
しばらくふぶきが続いている。
風の音がつよくて、森はとてもうるさい。
時々、オオカミがなく。
もうすぐいちばん長い夜がくる。
さいきんウィローは3日に1回くらいしか起きてこない。起きてきても、少しお茶をのんだら、またウトウトする。でも、いつもきもちよさそうに羽ぶとんにくるまっているのが見えるから、そんなにさみしい感じじゃない。
だれかと、それもとくべつな仲よしといっしょに同じ場所にいるのは、それだけでとても心地いい。
だんろでパチパチと木がはじけるおと。火の粉がまっていて、すごくきれいだ。ほのおはうつくしくて、少しこわい。いつもすがたを変えている。にどと見られない形が、ずっとずっと続いていく。まるで、時間そのものを見てるみたいな気持ちになる。
たきぎが少なくなってきた。
天気がよくなったら、ひろいに行こう。
ダラスにたのまれている人形の服や家具は、だいぶできてきた。あとは少しずつ、しあげていけば春までには十分まにあう。
つぎは、セドリックの話を書こう。
◇
ダラスの商売はあっという間に大きくあたって、ざっか取扱の商会をつくったと言っていた。とても忙しそうだった。注文もおおくなっていたらしい。でも、ダラスはおれへの注文をふやしはしなかった。
「キショウカチってやつよ」とニヤニヤわらって言っていたけど、きっとおれへの気づかいだっただろう。おれとウィローが、今までどおりゆっくりくらしていくための。
そんなダラスのことを、ウィローもきっとわかっていた。
それでもどこか線を引いているところはあって、ダラスがやってくるとき、ウィローはすがたを見せたり見せなかったり、気まぐれだった。気分がいいときだけ、あらわれてたような気がするな。ふたりは仲よしではなかったけど、ちょうどいい関係をおたがいさがしていた。
時々、3人でお茶をのんだ。それで十分だった。
ゴブリンとフェアリーと人間が、おなじテーブルにすわって、おなじものを食べる。
それだけで十分だ。
それまでとおなじ、森のきせつに合わせたくらしが続いていた。
そんなある日。
夏のあつさがようやくおわって、秋のけはいがし始めたころ。
とつぜん、ダラスがやってきた。
ダラスはやってくる前に必ずれんらくをよこすのに、この日、ダラスはとつぜんやってきた。それは、はじめて会った日いらいだったからおどろいた。おれは、つったばかりの魚をさばいていて、ちょうど両手がふさがっていた。
ゴンゴンと木のとびらがノックされて、「にいさん!」とあせったダラスの声がする。
「いそぎだ、あけてくれ!」
「わるい、今、手がはなせないんだ。かってに入ってくれ」
そういうとダラスはとびらをあけて、ころがるように入ってきた。一人じゃなかった。ぐったりした男の子をかついでいる。人間の、血のにおい。ただ事じゃないと、すぐにわかった。
おれはナイフをおいて、手についた魚のウロコや油をいそいでぬぐい、ダラスの方へかけよった。
床によこたえられた男の子をのぞきこんで、おれはダラスにたずねた。
「この子、生きてるのかい?」
「ああ、気をうしなってるだけだ。けど、左うでをやられてる。くすりと布をもらえるかい」
「いいけど」
くすり、って言ったって例のゴブリンのくすりしかない。
「それだよ、ゴブリンのくすり。にいさんの作るのが、どんな効果があるか、知ってるからよ」
「この子、たすけるんだよな?」
「あたりまえだろ」
そこでおれは、いそいで手当てのじゅんびをした。




