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18 あたらしいとりひき

 次に来た時、ダラスはイキイキとした顔で、おれに言ったんだ。


(ちなみにウィローは、おれの肩にのっていた。前のときのことがあるから、今日はかくれているかなと思ったけど。「あの人が本当に約束をまもるか、まだ分からない」って言って出てきた)


「ゴブリンにいさん、人形の家具とか小物をつくれるかい?」


 人形の? なんだって?


 おれがポカンとしていると、「あれだよ、ああいうの」と言って指さしたのは、ベッドの近くにおいてある、ウィローがねむる時に使っている小さな羽ぶとんだった。


「ゴブリンにいさんが作ったんだろ。前に来たとき、気になってたんだ」

「よく見てるなあ。うん、ウィローのためにおれが作ったんだ」

「あれ、売れるぜ」


 そう言ってダラスは目をかがやかせる。でも、おれはぜんぜんピンとこなかったので、「まあ、すわりなよ」と言って、お茶とクッキーをよういした。もちろん、やきたて。


 すわってクッキーを食べながら、ダラスはまだいきおいよく話してた。


「今、町じゃウデのいい人形師があらわれてよ、人形の家がちょっとしたはやりになっててな。人形の小物やら小さな家具みたいなもんが大人気なのさ。あの羽ぶとんなら、人形の家にピッタリだ。それにこのおじょうさんのお茶セット!」


 ダラスは、ウィローがすわっているところを指さした。きゅうに指をさされたものだから、ウィローがちょっとびっくりしてイヤな顔をしてる。


 そこにはウィローのサイズに合わせて作った、テーブルといすがあった。


 テーブルの上にはカップと小皿。森のオークの木を切って、こまかくけずり出して作ったお茶セットだ。もちろんテーブルクロスもかけてある。テーブルクロスは、麻のせんいを草花でいろんな色にそめて、クモの糸でおりあげた。これもなかなかいい出来なんだ。


「これ、にいさんの手作りだろ。あいかわらず、ていねいな仕事だよ。さいこうだ。セットで売れば、きぞくが高く買いそうだ。なあ、他にももっと作れるかい?」

「ああ。作れると思うよ」

「ついでに、このおじょうさんが着るくらいの大きさの服とかはどうだい?」

「うーん、どうかなあ。ウィローは服を着ないから。作ったことがないけれど……うん、やってみようか」


(誤解のないように書いておくと、ウィローははだかじゃない。みどり色のヤナギの葉をつなぎ合わせたような、すてきなワンピースを着ている。でも、それは服というより、体の一部にちかい)


「小さなたからばこも作ったなあ。それにバスケットや、ひざかけもある」

「見せてもいいよ。でも、たからばこは開けちゃダメ」


 ウィローがそう言って、とだなから自分の小物をとりだした。ダラスはいちいち大げさにほめてくれて、そして、おれたちはセンゾクケイヤクってやつをむすんだ。


 おれの作るものを売っていいのはダラスだけ、っていうケイヤク。かわりに、ダラスは町でおれのたのんだものを買ってきてくれる。今までと同じなのに、なんでわざわざこんなことするのかと思ったけど、これは大きな商売になるかもしれんとダラスはえらく本気だった。




 というわけで、ダラスとおれはこのあとも取引をつづけている。


 ダラスは町での買いものをしてくれているし、時々あそびにやってくる。


 そうしておれは、人形用の小さな服や小物を作っている。そんなに器用じゃないから、たくさんは作れない。でも、もちろんていねいに作っているからぜんぶ自信作だ。何より、ウィローの意見もとり入れているから、きっと人形たちも気にいるだろう。


 そしていいねだんで売れるらしい。とおい国の皇帝に、けんじょうしたという話も言っていたけど、本当だろうか。ダラスは話を大げさに言う時があるからな。


 でも、評判がいいのは本当みたいで、おれの作った品をマネした商品もすぐに出てきたらしい。人間がゴブリンのマネするなんてなんだかおかしな話だな、とおれはわらったけど、ダラスはまじめな顔で「モノがいいからマネされんのは仕方ねえけど、商売にはジャマなんだよな」とボヤいていた。



「なんか目印つけてくれよ、ゴブリンにいさんが作った本物だって印。ゴブリンじるしみたいなさ」


 とダラスが言うので、3人のなまえを書くことにした。

 さすがにゴブリンじるしはないだろう。フェアリーじるしなら、よかったかな。


 目印は、おれたち3人のかしら文字。


 ダラス、ウィロー、フロッグ。

 DWFの3文字。

 きれいなかざり文字で書いてみた。

 

 DWFなんて「まるでドワーフみたい」ってウィローはわらってた。

 でも、おれは気に入っている。

 3つならんだ文字を見ると、3人でお茶した時のことをすぐに思い出せるから。


 そして、つつみ紙や箱にも同じしるしをつけていって、さいごにダラスが絵をつけくわえてくれた。


 ニッコリわらったゴブリンの顔と、小さなフェアリーがちょこんと書いてある。


 やっぱりゴブリンじるしは必要だろって、ダラスは言ってたけど、絵がへたすぎて、町の人にはドワーフとトンボだと思われているらしい。ダラスはナットクいかねえなあって、ふまんそうだけど、おれはとてもまんぞくだ。別にドワーフとトンボだっていいんだよ。



 むずかしいな、こういうきもちをどう書いていけばいいんだろう。


 ダラスがゆがんだ線で、でも、一生けんめい描いてくれたおれたちふたりの絵。ああでもない、こうでもないと、なんどもおれとウィローを見ながら描いてくれた。


 ダラスの描いた絵を見るたびにおもうんだ。


 おれとウィローがちゃんといるって、証明してもらえたような、とてもたしかな気持ちになる。

 おれは今こうやって文字をのこしているけれど、多分それと同じようなことを、ずっと前にダラスはやってくれていた。


 ダラス、ほんとうにありがとう。

 これで伝わるといいんだけど。


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