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14 ウィローとダラスのこと(1)

 きょうは、ウィローとダラスがはじめてあったときの話を書こう。


 ちゃんと書けるだろうか。途中、うまく思いだせないところがある。

 でも書いておこう。とてもだいじな出来事だったから。




 その日、ダラスはたのんでいたブドウの油をとどけてくれた。あの年はブドウがあまり取れなかった年で、ねだんが高いとダラスは言っていた。だいじに使おうと思ったのをおぼえている。


 ウィローはいつものように、ダラスが来るとわかっていたからどこかにかくれて姿は見えなかった。


 ちいさい魚を塩と油につけておこう。セージの葉といっしょにパンにはさむととてもうまい。おれはそんなことを考えていた。


 それからあたらしい本。さいきんでは、かなしい話がよくうけるんだそうだ。おれは、たのしい話がすき。そういうと、ダラスは「わかってるって」と、きれいな表紙の本をとり出した。


 この本は今でもお気に入りの一冊だ。すこしでこぼこしていて、光があたるとかがやくような赤い布でまかれた本。ドラゴンと王女と羊かいの物語。絵もたくさんあって、こまかいふちどりのもようが書きこまれ、なによりうつくしい草花の絵がたっぷりあったので、すごく気に入った。


 おれが本に見とれていると、ダラスはとくいそうだった。


「どうだい、オレの選本は?」

「うん、とてもいい。ありがとう」


 ゴブリンのくすりを、小びんで4本わたす。

 つぎは、5本ほしいと言われる。

 すこしは足しになるかい? と聞いたら、ダラスは「そりゃな」と言ってわらった。



 とつぜんウィローがすがたを見せたのは、その時だった。


「それ、なにに使うの」


 おれの肩にふわりとのって、ウィローがいかくするような声ではっきりとダラスに向かってそう言った。


 おれは、ウィローが出てきたことにびっくりして、それになんだかおこっているみたいだったから、おろおろしてた。


 ダラスも、びっくりしてたな。いや、おどろいたというか、あれはなんていう表情だろう。おそれや、怒りや、よろこびや、にくしみ、かなしみ。あれやこれやの感情が、ぜんぶやってきたみたいな顔。


 おれはあわてて、ウィローのことを紹介した。


「少し前から、おれといっしょにくらしてるフェアリーだ」


 名前を言っていいかわからなかったから、とりあえずフェアリーと言っておいた。ダラスは、しばらくことばにならないつぶやきをはいていたが、ようやくこう言った。


「町じゃフェアリーなんか、めったにお目にかからんからよ。それに、ゴブリンといっしょにいるフェアリーなんか、初めて見たぜ。あんた、名前は、」

「ウィローよ」


 こうふん気味のダラスに、ウィローはもう一度きびしい声でたずねる。


「答えて。そのくすり、なにに使うの」


 ダラスはきゅうに冷たい目をして、ウィローをじっと見た。おれには見せたことのない、ひんやりした目。そしてゾッとするような低い声。


「おじょうさん、あんた、分かって言ってるのかい。ここで答えていいのかよ」


 ダラスはちらりとおれの方を見た。

 ここって、おれ?

 ウィローがぎゅっと口をむすぶ。


 おれ一人だけ話がぜんぜんわからない。

 肩にのったウィローの手が、そっとほほにふれてくる。

 ふるえてる。おれはあわてて話にわって入った。


「なあ、なんの話かわからんけど、ウィローは人間がにがてなんだ。そんなこわい顔、しないでくれよ。な、3人でお茶にしよう。おれ、いつか3人でおしゃべりできたらなあって、ずっと思っていたんだ」


 そういうと、ふたりは困ったような顔でおれを見た。

 どうかんがえても、それじゃあお茶にしましょうってふんいきではなかったから。

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