表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/35

13 てがみ

 ところで、おれはダラスのことを出会う前から知っていた。

 せいかくに言えば、名前だけ知っていた。


 丸太ごやにたくさんのこされた本やレシピ。他にもいろんなものがあった。おれは文字がよめるようになって、時間もあるから、しまってあった紙の束をひっぱりだして時々少しずつよんでいた。あたらしいレシピがあるといいな、なんて思いながら。


 レシピ、レシピ、毒の作り方。

 レシピ、くすり草の育てかた、レシピ、毒やくすりの注文書。

 そして手紙が1通。ダラスという人にあてた、手紙。




 ずいぶんたってから、おれはこの手紙のことを思いだした。わすれてたわけじゃないんだが、手紙の中の人と、じっさいの人がむすびつくのに時間がかかったんだ。それで、おれはダラスにこの手紙をわたしてやった。


 これは、君のだろうって。


 ダラスは少しおどろいた顔をして、へえ、と言ってうけとると、すぐに手紙の封を開けた。


 そして手紙をパッとひとよみすると、そのまま目の前のたき火にぽんと投げいれた。ダラスのうごきはとても自然で、手紙はあるべきところへしまわれたように見えた。


 ほのおは、あたらしい紙にとびついて、パッと大きくなる。ダラスはいつもの顔で、大きくなったほのおを見ていた。それからとてもしずかな声でおれにたずねた。


「にいさん、中身、よんだかい?」

「うん、よんだ」

「そうかい、忘れてくれよ」


 だから、おれは忘れることにした。おれもほのおを見てた。

 火はあっという間に手紙をくらいつくして、すぐにもとの大きさにもどった。

 おれは、ざんねんな気がしてつぶやいた。


「もえてしまったことばは、きえてしまうんだな」

「おれがよんだから、もういいんだよ。あれはそういうたぐいのことばだ」


 そう言ったダラスは、少し目をとじた。


(ダラスは畑しごとのあいまに目をとじて、畑のまん中でじっとしてる時がある。その時と似たような顔だった)



 あの時、ダラスの声はずっとしずかで、おだやかだった。いつもはふざけたように話すから、あんなふうなのはめずらしくて、たまに時々おもいだす。


 おれにはまだ、知らないことばがたくさんある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ