屋根裏の、おふだ
第四回なろうラジオ大賞参加作品第二十弾!
頭の痛みに耐えかね、私は目を覚ます。
最初は目がかすんで何も見えなかった。けどすぐ焦点が合い始め……次にどこかから響く呻き声を聞いた。
それも一人分じゃない。
十人以上でしか奏でられないような呻き声だ。
それが、ずっと私の耳に届く。
「な、何なの……?」
そう言いながら、私は上半身を起こした。
頭がさらに痛くなるが、なんとか耐え周囲を見回すと……そこは私の家の屋根裏だった。
それも『悪鬼退散』と書かれた御札が大量に貼られた屋根裏だ。
私はそこの床の上でずっと倒れていたようだけど……一体どういう状況なの?
そこでまた、頭痛がした。
思わず右手で触れる……すると手にベットリと血が付いた。
ま、まさか頭をケガしてる!?
い、急いで治療をしなければ!
しかし、屋根裏の出入口には……さらに大量の御札が貼られてあって、これでは救急箱を取りに行けない!
「もう、いったい何なの!?」
私は急いで御札を剥がし始める。
一枚剥がす度に、さらに酷い頭痛がした。
それでもなんとか耐え、私は階下に降りようとした……まさにその時だった。
私は全ての記憶を思い出し。
そして同時に階下から……私が張った結界を突破し、たくさんのゾンビが屋根裏に入り込んできた。
※
数日前。
私と、私が所属する除霊師同盟の仲間は……私が住む町で発生した、ある事件に挑んでいた。
それは死者蘇生の法を手にする事を目的とする邪教が起こした事件。
とある死者を復活させんとして。
誤ってゾンビ化させ、ゾンビが大量に発生した事件だ。
私と仲間はそれに対処しようとした。
しかしそのゾンビは普通のゾンビではなかった。
中途半端に肉体が再生しているのに、一部の脳機能が麻痺してるのか苦痛などを感じておらず、それ故に超人的な動きが可能になったゾンビなのだ。
さらには人類に、食人した場合にのみ感染する可能性がある病気に対抗するための遺伝子が備わっている事実からして、かつて人類が持っていたとされる食人衝動が、連中の中で活性化したのか……生者を食うという普通のゾンビの要素付きで!
そしてこの数の暴力に我々は敗北し……そして私はこの屋根裏に追い詰められたのだ。でもって私は、戦いの最中でケガを負いつつも結界を張り、本部からの救助を待っていたのだが、どうやらここまでらしい。
全ては記憶を、頭を殴られ失ったせいだ。
まぁどっちにしろ、あのゾンビの数からして本部は……私を犠牲にして大量破壊兵器使用に踏み切るかもだけど。
実際、人間のジャンクDNA内には、食人しなければ罹らない病気に対する遺伝子が存在する。
果たして人類は、我々の先祖はかつて、食人の文化を持っていたのだろうか……今も謎のままである。