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紙一重

マーティンが一体の護衛種を後方の眷属の群れに投げつけ、周囲を一時的に掃討したことで、城門前は一時的に静寂を取り戻した。城壁の上からは、その奇策に歓声が上がるが、俺たちは一瞬たりとも気を緩めない。彼らの前には、なお鉄壁の守りを誇る護衛種が四体、そしてその背後には数百の眷属が、次の突撃の機会を窺っている。

「リロード急げ!予備の矢を!」

ガイエルの焦りの声が響く。城壁上の兵士たちは、効果の薄い弓矢を使い続けることに、すでに限界を感じていた。彼らが頼れるのは、城壁下の俺たち二人だけだ。

俺たちは、残る四体の護衛種と、背後に控える大群を前に、再び呼吸を合わせた。

「ジーンズ、お前の槍で甲殻を破るには、一点集中じゃダメだ。一箇所を狙って、何度も叩き込め。俺が奴らの注意をひく!速度で、同じ場所を打ち続けろ!」

マーティンが指示を出す。彼の言葉は、長年の相棒だからこそ辿り着いた、俺の戦い方の弱点を突いた的確な助言だ。俺の槍の穂先がいくら鋭くても、護衛種の分厚い甲殻には、純粋な質量で負けてしまう。必要なのは、俺の精度の高さを極限まで活かす連続攻撃だ。

「わかった!」

俺は、一撃必殺という長年の信条を捨てた。今必要なのは、相棒の盾を信じ、確実に敵を無力化する連携だ。

マーティンは、残った護衛種の中で最も動きの速い二体めがけて、正面から突っ込んだ。彼は戦斧を両手で持ち、巨大な盾のように構える。その巨体は、正面からの突撃を受け止め、敵の注意を釘付けにする。

ガキッ!ガキィン!

二体の護衛種の鎌脚が、同時にマーティンの戦斧とぶつかり合った。凄まじい金属音が響き、火花が散る。マーティンは吹き飛ばされる寸前で地面を深く踏み締め、その重い衝撃を全身の筋肉で受け止めた。彼の巨体が、まるで岩のように微動だにしない。

「くそっ、体が持たねえぞ!」

マーティンが苦悶の声を上げる。彼の防御は、すでに限界を超えようとしていた。だが、彼の狙いは達成された。護衛種たちの全意識は、目の前のマーティンという巨大な壁に向けられている。

その瞬間、俺が動いた。

俺は、マーティンと護衛種が激突する真横から、槍を繰り出した。俺が狙うのは、一体目の護衛種の、左前脚の関節のわずかな隙間だ。

シュッ、シュッ、シュッ!

一度で貫けないならば、速度で貫く。俺の槍は、獲物の甲殻に触れるか触れないかの位置で、何度も何度も、驚異的な速度で同じ箇所を突いた。まるで雨粒が一箇所に集中するかのように、槍の穂先が甲殻を穿つ。

四度目の突きで、ついに甲殻が砕ける感触が伝わった。

「もらった!」

俺は渾身の力を込め、槍の穂先を甲殻の奥深くまで突き刺した。護衛種は激しい痙攣を起こし、マーティンへの攻撃を停止した。

「ナイス、ジーンズ!」

マーティンは叫び、そのまま倒れこむ護衛種を、戦斧で大きく薙ぎ払い、残りの二体から距離を取った。彼の体は、無数の衝撃波を浴びたことで、すでに悲鳴を上げている。脇腹の鎧には、深い亀裂が入っていた。

しかし、その間に、護衛種の隊長が、悠然と俺たちに近づいてきていた。その巨体は、一歩一歩、城門の前の地面を揺らす。他の護衛種の二体も、その隊長を護衛するかのように、俺たちに狙いを定めた。

隊長は、仲間の犠牲を意に介さず、その四つの赤い目で俺たちをじっと見つめていた。まるで、今までの戦いはお遊びだったとでも言うように、不気味なほどの静寂を保っている。

「ジーンズ!あれはヤバい!防御力も、攻撃力も、さっきのとはレベルが違う!あの斧じゃ、まともに受け止められねえ!」

マーティンの声に、焦りの色が混じる。彼の戦斧は、激しい衝撃で刃こぼれを起こし始めていた。

「わかってる!だが、やるしかない!残りの二体は俺が何とかする。隊長は、二人で仕留めるぞ!」

俺たちは、最後の力を振り絞り、護衛種の隊長に立ち向かった。隊長は、まるで嘲笑うかのように、巨大な鎌脚をゆっくりと振り上げ、俺たち二人まとめて叩き潰そうと振り下ろす。その一撃は、大地を割るほどの破壊力を持っていた。

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