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ピンクローズのまぶたと真緑の芝
都会の片隅にある百貨店の屋上で
真新しい人工芝がその緑色を艶めかせている
私たちはいつも自身の役割に絡まりながら
雑務をひとつひとつこなしながら
本当はやってみたいことを
少しだけ我慢しながら生きている
そんな中で突然できた空白の時間
私はもう何も決定していない内から
早る気持ちを行動にのせるかのように
まぶたをピンクローズに指で染めて
「もしかしたら」という希望が
いつもの玄関を飛び出す頃にはもう
「会えるんだ」という
空を突き抜けるような喜びに変わっていた
そうして
都会の片隅にある百貨店の屋上で
真緑の人工芝にそっと足を踏み入れ
想いを止める術を知らない私に
彼は会ってくれたんだ
その日だけは
私だけの
彼だった




