なぜCreepy nutsは紅白歌合戦に出場できないのか?
私が彼を初めてみたのはパソコンの画面越しだった。ラップバトルの草創期と個人的には思っている2011年の暮れ、UMB<アルティメット・エムシー・バトル>で絶対王者と名高い晋平太を相手に濃厚な押韻のラップで応戦する青年、R指定。彼は大阪代表として後にこの全国大会で3連覇を達成する――
その3連覇を達成した夜、DJ松永と共に「Creepy Nuts」というユニットを発足するとユーチューブで1つの動画をあげる。これが彼らのまさに旗揚げ宣言であった。
そこから着々とR指定は活動の幅を広げていく。一世を風靡した高校生ラップ選手権では「丁寧な解説」と絶賛を受ける審査員を務めた。その後に地上波にてラップバトルのファンたちを熱狂させたフリースタイルダンジョンにモンスターとして登場。番組の終盤にはラスボスというポジションにまで上り詰めた。DJ松永も世界を舞台に日本代表としてDJの大会で優勝を果たした。
気がつけば彼らは全国放送のラジオ番組を持つようになり、NHKの番組にも堂々と出演しだした。彼らのキャラクターはとても面白く、大阪出身のR指定は真面目な性格ながらも軽快なトークで周囲を盛り上げ、ほかの草食系タレントと一味も二味も個性が違うDJ松永も茶の間で話題の人となった。
私の記憶が確かなら、あの旗揚げ宣言の再生数は4桁もいってなかったように思う。それがここまで滝登りのようにして人気を博したのは、きっと彼らの血と涙の滲むような努力があったからに他ならないだろう。それにしても私は純粋に彼らの快進撃に驚きを隠しえないし、讃えて他ならないのである。
しかし昨年の年末に彼らは妙な話題をトレンドにしてしまった。
Creepy Nuts、紅白出場ならず。
このニュース、受け手によっては「は?」となってしまっても可笑しくないが、事実紅白出場アーティストが発表された際にツイッター上でトレンドにもなった話題なのだ。それだけ時の音楽ユニットになったということか。セールス自体で売れているアイドルや売れているヴィジュアル系ロックバンドに負けつつも、これまでの日本のヒップホップユニットでは間違いなくトップの功績を残している彼らだ。紅白に出場できないのが不思議と言えば不思議なのも然りである。
ではここから本題に入る。テレビやラジオの引っ張りだこになった彼らが何故紅白歌合戦に出場できなかったのか? 筆者なりにいくつか考えてみた。
〇ヒップホップというジャンルが紅白にそぐわないから
確かにそう言われればパッと浮かばないかもしれないが、これまでにKICK THE CAN CREWが出場をすれば、ヒップホップとロックのミックス系アーティストで名高いオレンジ・レンジも出場しているのだ。当時のオレンジ・レンジまでのセールスは無いにしても……Creepy Nutsは少なくともKICK THE CAN CREW以上の知名度は得たように思える。そしてそうしたアーティストの出場を紅白運営側は別に嫌っている訳でない。
〇R指定の野性的な風貌が紅白歌合戦では受け入れられないから
確かにR指定の野性的な風貌は年末年始の茶の間にピッタシかどうかといえば、ちょっと不快な感じがしなくもない。特に高齢な世代からみればあそこまで髭をたくわえた若者というのも、目に余るであろう。しかし紅白に髭ボーボーで登場したアーティストというのは過去にいる。EXILEのメンバーにだってそんな人はいるし、平井堅でもしっかり生やしていた。そもそもそこまでR指定というタレントは不潔な男ではない。よくみたらきちっとしたファッションを身にしているのだ。そしてそういう努力をしているからこそ、テレビに出演し続けられる信頼を得ているのだと私は思ってしまうのである。
〇いま、Creepy Nutsが紅白に出場するキャラクターでないから
うん。これが本エッセイで示す結論である。これ以上の説明ができないのだ。こんな事を言ってしまったら、元も子もないぞと思われるかもしれない。しかしこれ以上の答えが私には見当たらないのだ。
ジャングルポケットというコントトリオがいるが、彼らはいつも優勝候補だと言われ続け、今なおもキング・オブ・コントの優勝を手にしてない。しかしこの大会の風物詩として彼らのコントが毎年のように登場し続けている。勿論とても面白いコントをやってのける超実力派の芸人トリオだ。しかしどこか何か“優勝まであと1歩”というフレーズが彼らの背後に貼りついているような気がする。例えばノーベル文学賞を「今年こそは」と期待される村上春樹だってそうでないだろうか。
しかしジャングルポケットは今では人気芸人で勿論あるし、テレビでわりかし見かけるぐらいに活躍もしている。村上春樹だって言わずと知れた大作家だ。
私達は頂点を獲れそうで獲れない銀メダリストや銅メダリストをときに無冠の帝王と呼ぶ事がある。でもこれは本人にとって果たしてどうなのだろうか?
勿論栄光や栄冠というものは頑張る以上は手にしたいのが当然。だが、それが果たして頑張る目的の全てなのか? 私は場合によってそれは違う気がするのだ。
Creepy Nutsは紅白に出場するために結成された音楽ユニットではない。少なくとも私はそう思っている。
私はこの先の未来、Creepy Nutsが紅白に出るのかどうかが重要と思ってない。大事だと思うのは彼らが彼ららしい音楽を奏で続けるかどうかだ。その努力を続けているうちに、もしかしたら紅白の舞台で活躍してみせる2人の姿が見られるのかもしれない。それまで彼らも彼らを応援する我々も「紅白出場」という言葉に囚われてはいけない気がする。それこそそのサマを笑われてしまう彼らや彼らのファンであって欲しくないと想う。
以上。駄文で結構。腐ったみかんで結構。Creepy Nutsのイケてる新曲をずっと聴きながら――
∀・)ちなみに紅白歌合戦の出場アーティストが発表されたときのラジオにてリスナーさんから「まさか紅白断るなんて思わなかったですよ!?」という御便りがとどき、それに対してR指定くんは「オファーきたら受けるにきまっとるやろ!! 悔しいわ!!」と大笑いしながら答えたそうです(笑)本当に強い人ですよ。彼は。皆様もよかったら是非Creepy nutsをチェックしてみてください☆彡