第6話:イン・ラプト探索01(商店)
イン・ラプトという国は、一言でいうと19世紀の西洋である。
文化や人は現実世界と異なるが、見た目言うならそれが早い。
現実世界で言うならエストニアのタリンのような城下町のようなものである。
赤い屋根とレンガ作りの建造物は、中世を彷彿させる歴史的価値の有る光景だ。
商店街には、食料品や飲食店が立ち並ぶ。
「果物商店のお姉さん、こんにちは! この世界の通貨ってなんていうんですか!???」
「やあイケメンのお兄さん。この国ではダリーが使えるよ!
りんごは1個200ダリー! ビールは1杯500ダリー!」
「なるほどー! 日本円の1.5倍位の価格だね、わかりやすい!」
それとも、お祭りの屋台基準で言うなら等価値だろうか。
しばらくは価格相場を把握する必要があるだろう。
もちろんそれには理由がある。
「軽くお腹が空いてきたし、お肉でも食べたいな―!」
という、死活問題がゆる〜く出てきているわけで。
「ねえ、お肉屋台のお兄さん! この国でお金を稼ぐにはどうすればいいの!?」
「漠然としているなニイチャン。この国でお金を稼ぐなら、店を開くか、賞金首の荒くれ者共を退治するとかあるぞ!」
「へーそうなんだ! 例えば、今あそこで果物を盗んで追いかけられている人って誰ですか!?」
「あぁ、あの走ってる細いニイチャンは盗人ディールだ。そこそこ資産家のくせに、盗みの快楽を覚えたのか、ああやって窃盗を繰り返しては追いかけられる毎日だ」
「ふーん、変な趣味ですね」
「金持ちほどケチっていうやつなんだろうな」
「どけどけどけ―! 今日も窃盗チャレンジで大量の果物を盗んでやったぜー! 邪魔するやつはぶっ飛ばーす!」
「ああニイチャン、避けたほうが良いぞ。あいつは細いくせに腕っぷしはいっちょ前だからな。相手しないほうが無難さ」
「へーそうなんですね!」
「どけって言ってんだろうがー! ぶん殴ってやるぞ!」
「ちなみにあの人って捕まえたらいくら位ですか?」
「うーん、ケチなこそ泥だしな。5万ダリーってところだろうな。だが怪我をして捕まえるほどの賞金ともいいがた……」
バキッ!!!!!
「捕まえましたー!」
「はえー!????!?!???」
葉々見我 勲造の趣味はキックボクシングである。
素人くらいなら、大体の敵は蹴りでノックアウトさせることが出来る。
歯科医師は室内勤務のため、体は結構訛りやすい。
趣味にスポーツを取り入れることは大事だぞ!
というわけで、3秒位でノックアウトさせた盗人ディールを警備隊に引き渡し、勲造は5万ダリーを手に入れたわけで。
「お肉屋台のお兄さん! 骨付きお肉くださいな!」
という形で飯の在り処にたどり着いた勲造である。